12-2
「父上、我は行きたくないです」
「しかし、行かなければ何をされるかわからんぞ?」
むむむ、そうだ。
本当に、何をされるかわからない。
猫花家は、自分の思い通りに事が進まなければ力尽くで何とかしようとする。
それも、予想外な方向から。
こちらが頷くまで何度でも訪ね、何度でも説得しようと手紙を出したり、ストーカーまがいな事なども平然としていた。
我が被害にあってしまった時は、父上に助けてくれたのだが……。
「今回の宴は、猫花家の娘、静稀の誕生を祝う会。さすがに行った方が良かろう」
「はぁぁぁぁぁあ……」
「七氏がそこまで嫌がるのも珍しいな」
ケラケラと笑わないでください、父上。
心の底から嫌なので仕方がないでしょう。
だって、静稀とやら。
周りの目など気にせず我の腕に抱き着いてきたリ、顔を近づかせてきたりするのだ。
それだけなら我慢すればよいのだが、完全に我を誘惑してきているのがわかる。
普通に胸を押し付けて来るしな。
我は、あのような女性は苦手なのだ。
グイグイと、男性を誘惑する女性。仮に誘惑に負け、男性に襲われてしまったらどうするのだ。
もっと自分を大事にしてほしい。
我はそれだけで嫌っているわけではないのだが……。
普通に、受け付けん。無理、本当に、無理なのだ。
「ひとまず、今回の宴の話は、嫁に話しておけよ?」
「え、華鈴にですか? 話してしまうと余計な心配をかけてしまいます。宴には、華鈴は連れていきません。話しても意味はないかと」
「それだけではない」
それだけではない?
父上は一体、何を懸念しているのだろう。
「静稀はどこでもかしこでもぬしを落そうとしてくるだろう」
「む、むむ……」
「仮にそれが嫁の前でやられたらどうする? 目の前じゃなかったとしても、偶然見られてしまったら? ぬしはどうなると思う?」
…………我が誘惑されているところを華鈴が見てしまったら?
想像してみると……したくないな、気分が悪くなる。
だが、仕方がない。
えぇっと、想像、想像……我が誘惑されている姿を華鈴が見てしまった場合。
…………おそらく、華鈴はまた我慢してしまうかもしれんな。
我にその時のことを聞きたいが聞けず、我慢をし続けてしまうだろう。
思い悩み、もしかしたら家出をされて……。
「顔面蒼白となっておるが、大丈夫か、七氏よ」
「華鈴が家出……」
「駄目らしい。いかん、さすがに七氏にはまだ早かった」
父上が我の背中を撫でくれたおかげで、最悪な未来を頭からかき消せた。
「た、確かに話さない方がリスクが多い。話した方が良さそうですね」
「そうだろう? 女性という者を怒らせないための知恵だ、忘れぬでないぞ」
「…………ちなみに、父上は今まで何度母上を怒らせてきたのですか?」
「人の身体にある指だけでは足りんということだけは言っておこう」
…………二十回以上か。
どれだけ怒らせておるのだ、父上よ。
まぁ、今は父上のことはどうでも良いな。
今は華鈴に静稀の家柄について話そう。
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洗濯物を干し終わり、二口女さんとは分かれ今は部屋で一人、本を読んで時間を過ごしております。
これは、現代から持ってきた物。ものすごく面白く、続きが気になります。
「はぁ、読み終わってしまいました」
続きは、いつ発売なのでしょうか。
発売日は――……
『華鈴よ、七氏だ』
「っ!? だ、旦那様!? どどどど、どうぞ!!」
お、驚きました。
なんの前触れなく、旦那様が来てくださるなど思ってもいませんでした。
思わず声が上ずってしまい、恥ずかしいです……。
髪と姿勢を整えていると、旦那様が襖を静かに開き、中へと入ってきます。
あ、あれ? 旦那様が白い布を付けて、目元を隠してしまっています。
屋敷内にいる時は、白い布を外して生活していたはずなのに、なぜ急につけてしまったのでしょうか。
疑問に思いながらも質問できずにいると、旦那様が私の前に座りました。
空気が、少し固い。緊張しているみたいです。
わ、私も、緊張してきました。
な、何を言われてしまうのでしょうか……。
「華鈴よ」
「は、はい、旦那様…………」
「これから話すことは、心して聞いてほしい」
「わ、わかりました」
そ、そんな入り方をされてしまうと、身構えてしまいます。
いや、身構えていいのでしょう。旦那様が心して聞いてほしいと言っていました。
私は、しっかり聞かなければなりません。
「華鈴よ、我はこれから、猫花家へと出向くこととなった」
「は、はい。わかりました…………?」
と、しか言えませんでした。
え、どういうことですか?
ここまで読んで下さりありがとうございます!
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