11ー6
「華鈴? 大丈夫か?」
「――――ハッ。だ、大丈夫です。神様が長で人間だったとは思っておらず、少々驚いてしまいました」
「待て待て待て。言葉がおかしくなっておるぞ、深呼吸をするのだ」
旦那様に優しく背中を撫でられ、やっと落ち着くことが出来ました。
今、私達の目の前にいますのは、神様。そう、神様なのです。
これは、私が変な事をしてしまえば、この世界が終わってしまうかもしれないです。
旦那様の立場も危うくなってしまう、絶対に失敗は許されません。気を緩めてはいけませんよ、華鈴。
気を引き締め直すと、なぜか神空様が肩を落とし困ったように眉を下げてしまいました。
ど、どうしたのでしょうか。私、もう何かをやってしまったのでしょうか!? どどどどど、どうしましょう!!
謝らなければならないでしょうか!? ですが、何をやらかしてしまったのかわからないので、謝罪が出来ません! もう! なんで私はこんなにも駄目な人なのでしょうか!
一人で慌てていると、神空様が私の前まで移動し、何故か顎を固定され、顔を上げさせられました。
深緑色の瞳に、私の顔が映ります。
これは、なんでしょうか。
「貴方は似ていますね、七氏に」
「え、旦那様に……?」
ど、どこが似ているのでしょうか……?
ものすごく嬉しいお言葉なのですが、私は旦那様のように凛々しくも、美しくもありません。
なんでも出来る訳でも、頭が良いわけでもないのです。
似ているところの検討がつきません……。
不思議に思い神空様を見つめていますと、隣から強い視線と共に、神空様の肩を掴む手が伸びてきました。
「神空さん、そのくらいにして頂けると嬉しいのですが?」
……………………今まで見た事がないような笑み、です。
いえ、笑みではありません。口角は上がっていますが、目が笑っておりません。
私は旦那様から視線を受けているわけではありませんが、体が震えます。
――――旦那様、本気で、怒っています。
ちらっと横目で神空様を見てみますと、聞こえてきたのは何故か賛称のお声、怖くはないのでしょうか……?
「素晴らしいですね、七氏。貴方がそこまで怒るとは思ってもいませんでした。素敵です」
「何にそのような言葉をかけてくださっているのかわかりませんが、今回は包み隠さずに言います。華鈴は我の妻です、あまり近づかないでいただきたい」
旦那様が私の前に立ち、神空様との距離を離します。
睨んでいる旦那様とクスクスと笑っています神空様。
これは、どういう状況なのでしょうか。こ、怖いです……。
お二人を交互に見ていると、神空様が笑うのをやめて旦那様に声をかけました。
「そういえばなのですが、こんな所で時間を使ってもよろしいのでしょうか? これから楽しい楽しい相瀬ではなかったのですか?」
「むっ!」
旦那様は空を見上げ、時間を確認しています。
今は太陽が頭の上、おそらく昼頃かなと。
「確かに、これ以上は楽しむ時間が無くなってしまうな」
「ふふっ。七氏に用事がありましたが、急ぎではありません。今日は相瀬を楽しんでください」
道を開け、神空様は横にずれます。
「え、用事ですか? 一体、なんでしょう」
「今は気にしなくても良いですよ。先程も言いましたが急ぎではありません。今日は私の事は忘れ、楽しんでください。さぁ、さぁ!」
――――わっ、わっ!!
旦那様と共に背中を押されてしまい、これ以上質問できなくなってしまいました。
「いってらっしゃいませ、良い一日を」
私達に手を振ると次の瞬間、森の中に響いたのは指を弾く音。
――――――――パチン
「――――っ、わ。あ、あれ? アスファルト?」
今まで地面の上に居たはずなのですが、次の瞬間にはアスファルトの上。隣には、周りを見回している旦那様。
「ここって――――へっ?」
同じく周りを見ますと、驚きすぎて下品な声を出してしまいました!
ですが、ですが! これに対しては仕方がないです!! だって! 私達が居るのは──……
「ショッピングモール!!」
周りには楽しそうに歩く人達。
子供の手を掴み、親子で楽しんでいる方達や、友達と笑い合いながら歩いている方達。他には、恋人同士でしょうか? 素敵な手のつなぎ方をして、楽しそうにショッピングモールの中へと入って行きます。
ショッピングモールと呼ばれるだけあって、ものすごく大きな建物。屋上には、開店を祝うために風船が括り付けられ、風で揺れております。
「旦那様!! ここって、私達が行こうとしておりましたショッピングモールですか!?」
「そうだ。神空さんがここまで送ってくれたらしいな」
旦那様の服を掴み聞くと、笑顔で答えてくださいました。
やはり、やはりやはり!!
華やかなここが、私達の目的地であるショッピングモール!!
沢山の人が行き来し、スタッフの方が声を張り上げ活気が良く、テンションが上がります!
「旦那様! はやく、早く行きましょう!!」
「わかったわかった、そう焦るでない。焦っても意味はないぞ」
あ、旦那様が首元に下げていたサングラスをかけました。
なるほど、黒い布ではお洋服だと変に目立ってしまいます。そこでサングラスを代用したのですね。
完全に隠せないにしろ、目立ちはしません。
完璧です、旦那様!!
「では、行こうぞ」
「はい!!!」
旦那様と手を繋ぎ、楽しみにしておりましたショッピングモールの中へと入ります。
ここまで読んで下さりありがとうございます!
出来れば次回も読んでいただけると嬉しいです!
出来れば☆やブクマなどを頂けるとモチベにつながります。もし、少しでも面白いと思ってくださったらぜひ、御気軽にポチッとして頂けると嬉しいです!
よろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ




