11-1
あれから私は、二日間しっかりと寝て風邪を治しました。
今はもう体の怠さや眩暈、頭痛などはありません。なので、後は熱が下がれば完璧!
水銀体温計で熱を測り、二口女さんがチェック中。
き、緊張が走ります。
大丈夫でしょうか、動いてもよろしいでしょうか。
「――――ふふっ、はい。熱は下がりましたね。これで一安心です」
「ほ、本当ですか!?」
「はい」
や、やりました! やりましたよ!!
やっと私は、寝たきりの生活からおさらばできます!!
とても、とても長かったです。寝ることしか出来ない二日間、暇でした。
体が弱っていたため気持ちまで沈み、不甲斐なくて心苦しく、辛かったです。
女中さんにも迷惑をかけてしまい、旦那様のお仕事の手も止めてしまいました。
本当に、自分が情けなかったです……。
ですが! 今日からは私もまた、皆様のお手伝いができます!! お料理の練習もしなければなりません。
やることは沢山あります、気合を入れて頑張りますよ!
拳を握り気合を入れていると、二口女さんが眉を下げ困った様に私を見てきます。
何か言いたげです、どうしたのでしょうか。
「気合を入れているところ申し訳ありません、奥様。七氏様からの伝言で、『熱が下がったとしても、三日間は絶対安静でいるように』だそうです」
…………え、そ、それって。
熱が下がったと確認できた今日から三日間、またしても一人で過ごさなければならないのでしょうか?
そ、それは、とてもじゃないですが、悲しいです。
いえ、旦那様は私の身体を心配して、無理をさせないように伝言をしてくださったとわかっております。
わかっていますが、せっかく今日からいつものようにお料理の練習やお掃除のお手伝いなど。
色々出来ると思っていたのに………。
「七氏様の言う通り、熱が下がったからといって油断すると、またぶり返してしまいます。そうなると、今以上に長い間寝込む可能性があるかと。なので、安静にしていましょう」
「…………はい」
うっ、うっ……。
今日もお部屋で待機命令が出されました。
「では、また何かあればお声がけください。襖の前には交代で私かろくろっ首が待機しておりますので」
二口女さんは私に一礼しますと、襖を静かに開け行ってしまわれました。
むむむっ、安静にと言われましても……。
体に痛みはありませんし意識もしっかりしており、睡魔もないです。
布団に横になりますがちっとも眠くなりません。
――――ゴロゴロ、ゴロゴロ
何度か寝返りを打ちましたが、ちっとも寝れません。
今日から三日間、どのように過ごしましょうか。普通に、暇です。
……………………旦那様、今日はお部屋にいるのでしょうか。お仕事中……ですよね。
行ってしまったら邪魔をしてしまうでしょう。我慢しなければなりません。
『――――華鈴』
「はい!! 起きております旦那様!」
そんな事を考えていますと、襖の外から旦那様のお声が聞こえました!!
思わず体を勢いよく起こし、反射的に返事をしますと、襖がゆっくりと開かれました。
そこには、優しい笑みを浮かべている旦那様。
「元気そうだな、華鈴よ」
「はい!! もう、ものすごく元気です! 二日間寝ていたので、元気いっぱいです!!」
私の隣に旦那様が座り、頬に手を添えます。その後、おでこや首筋を撫でます。
おそらく、熱が本当に下がったのかを確認しているのでしょう。
二口女さんがもう大丈夫だと言っていたので、大丈夫ですよ。
体の方も、もう痛くはないので安心してください。
旦那様も熱がないとわかったらしく、安心したように息を吐き、手を下ろしました。
「もう熱はないようだな、本当に良かった。心配したぞ」
「ご心配をおかけしてしまい申し訳ありません。まさか、熱を出すなど思ってもいませんでした」
「今まで色々頑張ってくれていたからな。疲労が体に蓄積されていたのかもしれん。無理をさせてすまなかった」
――あ、だ、旦那様が悲しそうです。
顔を黒い布で隠してしまっているので表情は確認出来ませんが、声色が下がってしまいました。
旦那様はちっとも悪く無いのです。私が自分の体調管理が出来ていなかっただけなのです!
なので、旦那様、落ち込まないでください。
…………あれ、そういえばなのですが、旦那様。お仕事は……?
「あの、旦那様」
「ん? どうした?」
「お仕事の方は大丈夫なのでしょうか。私、旦那様のお仕事の手を止めてしまっていましたので、心配です」
私、旦那様のお仕事を邪魔してしまった記憶があるのです。
寂しくて、つい旦那様に手を伸ばしてしまった記憶。
煩わしいと、手を振り払っても良かったのに。旦那様は私を安心させるため、一緒に寝てくれた。
ものすごく嬉しくて、安心しました。でも、でも!
旦那様のお仕事を邪魔してしまった罪悪感が私の胸を占めます。
うっうっ、旦那様、わがままを言ってしまい、すいませんでした……。
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