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生贄巫女はあやかし旦那様を溺愛します  作者: 桜桃
旦那様とお料理 修行編
47/95

9ー3

 気を取り直しまして、三人で唐揚げを揚げることとなりました。

 最初はお手本に、二口女さんが揚げてくださいます。


 私と旦那様は両側に立ち、二口女さんの手腕を見ます。

 見落とさないように、集中します。


「油が跳ねておる……」


「跳ねてしまうのは仕方がないことですよ、七氏様。ですが、安心してください。こうすることによって、少しは抑えることができますので」


 旦那様が不安げなお言葉を零すと、二口女さんがニコッと笑い、菜箸を乾いたキッチンタオルで拭き始めます。


 あと、キッチンペーパー……でしょうか。

 白い紙にタレを染み込ませたお肉を置き、包んでおります。


 これでは、せっかくの味付けが薄れてしまわないのでしょうか。

 何も言わずに旦那様と見ておりますと二口女さんは、白い紙で包んでいたお肉を菜箸で掴みます。


「入れる時は怖がらず、ゆっくりと入れてください」


 言うと、ゆっくりとお肉を油に入れます。

 じゅわぁという揚げる音が聞こえ身構えますが、油の跳ねは最低限に抑えられておりました。


「すごい! 跳ねません!」


「おぉ! 油が跳ねんかったぞ! だが、何故だ?」


 旦那様が油が跳ねなかったことに疑問を抱き、私も同じく首を傾げます。

 二口女さんが行ったのは、菜箸を拭いたりお肉を白い紙で包んだだけのはず。それだけで油はねが収まりました。


 …………なぜなのでしょうか。


「できる限り水を拭き取ることにより油は跳ねず、今のように安心して揚げられるのですよ」


「なんと、そうだったのか……」


 まさか、こんな方法があるなんて思ってもいませんでした。


 今のは唐揚げだけでなく、他の揚げ物でも使えそうです。

 これからは怖がらずに油物を作れそうで安心しました!


「我もやってみても良いか?」


「大丈夫ですよ」


 旦那様が二口女さんから菜箸を受け取り、気合を入れ鍋の前に立ちます。


「頑張ってください、旦那様!」


「あぁ、失敗しないように気をつけんとならんな」


 あ、旦那様が緊張しておられます。

 難しい顔を浮かべてしまいました。


 だ、大丈夫でしょうか、怪我をしてしまわれないかとても不安です。


「旦那様、頑張ってください」


 私が祈っておりますと、旦那様が覚悟を決め菜箸でお肉を摘み取ります。

 少し震えてはおりますが、二口女さんと同じ動きで優しく油にお肉を入れました!!


「やりましたよ旦那様!! 油が跳ねておりません!!」


「お見事です、七氏様」


 二口女さんと喜んでいると、旦那様が息を吐き私達へと振り向き笑います。

 やり切ったというような笑みを向けられ、私も嬉しくなりました!!


「上手く出来れば、料理というものは楽しいな」


「お料理は、慣れると楽しいですよ。次は奥様ですね。やってみますか?」


「はい、やってみます!」


 旦那様から菜箸を受け取り、今度は私の番です。


 ……うぅ、手が震えます。

 ここまで成功しています、失敗は許されません。

 私が失敗してしまったら、お二人の努力が水の泡となってしまいます。


 絶対に失敗してはいけません、頑張るのですよ華鈴。


 菜箸を握り直し、お肉を摘み取ります。

 油へと近づかせると、パチパチと音が聞こえてきました。


 息を飲み、負けては駄目だと奮い立たせますが、油はブクブクと泡立ち、今以上に近付けても大丈夫なのか不安に……。


 ――――いえ、駄目です、駄目ですよ華鈴。早く、早く入れなければ!


「あ、あの、奥様?」


「華鈴?」


 お二人が私の名前を呼んでおります。

 返事をしたいのに、目の前に広がる油に緊張してしまいうまく口が開かなっ――……


「え、煙??」


 え、あ、煙!! 煙が出てしまっております!! 

 あ、あ、これは、どうすればいいのですか!?!?


 私が一人であわあわしておりますと、視界の端に二口女さんが桶を手に取る姿が映ります。


「奥様! 失礼しますね!!」


 ――――――バッシャン


「あっ……」


 二口女さんが火を消すようの桶を、鍋にかけました。

 それにより、火は消え煙は収まります。


 思わず、体から力が抜けます。

 はぁ、怖かった。


「大丈夫か、華鈴!! 怪我はないか?」


「は、はい。大丈夫です………」


 旦那様が駆け寄り、私に怪我がない確認してくださいます。

 その際、私が持っていた菜箸を預かってくれました。


 私には怪我は無いので、そこは大丈夫。

 大丈夫、なのですが……。


 あ、あぁ、やってしまいました。

 私が怖がり過ぎて、二口女さんと旦那様が揚げた唐揚げを駄目にしてしまいました。


 う、うぅ。なんてことをしてしまったのでしょう。

 私は、お二人の努力を無駄にしてしまいました。


 これは私、切腹しなければならないでしょうか。

 それか、指を詰めますか。どうすれば許されるのでしょう。


 床に座り込み包丁を掴み見ていると、旦那様が私から包丁を取り台の上に置いてしまいました。


「華鈴、さすがに包丁を持ち、世界絶望みたいな顔を浮かばれると、こっちとしては心臓に悪いからやめてもらえると助かるぞ」


「う、うぅ。旦那様……。わ、私はもう、私はもう生きてはいけないのかもしれないです」


「唐揚げに命を懸けておるんか、華鈴よ……」


 だって、だって!!!! 私はお二人の努力を無駄にしてしまったのです!! 私のせいです!!


「よしよし」


 旦那様が項垂れている私の頭を撫でてくださっております。


 うっ、うぅぅう! 嬉しいです。

 ものすごく嬉しいのです。

 ですが、いつものように手放しに喜べません。


 泣きたいです……。

ここまで読んで下さりありがとうございます!

出来れば次回も読んでいただけると嬉しいです!


出来れば☆やブクマなどを頂けるとモチベにつながります。もし、少しでも面白いと思ってくださったらぜひ、御気軽にポチッとして頂けると嬉しいです!


よろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ

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