8ー17
満月の夜、雲が一つもなく星空が広がっていた。
カサカサと、森の中を歩いている一人の男性。
黒い着物に白地の羽織、黒い龍の刺繍が施されていた。
口元に浮かぶのは、微かな笑み。
顔には目元を隠すように黒く、四角い布が付けられ風で揺れていた。
「やっと、ぬしを助けられるぞ。巫女よ」
嬉しそうに呟く男性が向かった先は、現代に繋がる道を作り出してくれる神木。
長い銀髪を揺らし、目の前にそびえたつ神木を見上げ、黒い布を横へと微かにずらす。
藍色の瞳には、風で揺れている草木が映し出された。
「あやかしの長になった今、今までの我とは違う。人間とあやかしの共存が可能なのなら、人間とあやかしの恋愛も可能のはずだ。――――いや、”はず”ではない。確実に可能とする。それを証明するためには、まず我が巫女を落とさねばならんな。必ず、我を愛してやまなくしてやろうぞ」
拳を握り気合を入れた男性は、あやかしの長になった九尾の実の息子である七氏。
彼は気合を入れ、目の前に立っている神木に触れた。
すると、淡く光っていた神木が強い光を放つ。
今ではその光にも慣れ、冷静に落ち着くのを待った。
数秒後、光が落ち着き元の神木へと戻る。
「うまくいったらしいな」
にんまりと笑う七氏は、右手を神木の中へと入れ始めた。
ズズズッと手、腕、肩、体……。
徐々に神木の中に消えていく。
最後に地面を踏みしめていた足も神木の中へと入れ、完全に姿を消した。
神木の中へと姿を消した七氏を、後ろから見ていた父親である九尾と、母親である氷璃は安心したように見届ける。
「本当によろしかったのですか、九尾様。本来なら、まだ数百年と修行をしなければあやかしの長にはなれないというのに」
「大丈夫であろう。それに、ワシらの時に合わせていたら人間は朽ち果てる。人間に合わせるということは、今回のような事態にも対応しなければならんということだ。それで、これを望んだのは誰でもない七氏だ」
「ふふっ、そうね。これから、どのような生活を送るのでしょうか。私達は隠居生活をしながら待ち続けましょう。七氏が夢を掴む、その日まで」
お互い見つめ合い微笑むと、指をからめその場から忽然と姿を消した。
それはまるで、森に吹く風が二人を連れて行ってしまったかのよう。
神木は今だ淡い光が放たれており、七氏と、もう一人の女性の帰りを待ち続けていた――……
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『ぬし、我の嫁となれ』
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