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生贄巫女はあやかし旦那様を溺愛します  作者: 桜桃
七氏と巫女の出会い
42/95

8ー15

 我が何もしないでおると話が進み、結局最後は巫女が折れ、頷いてしまった。


「ありがとう、これからは華鈴、貴方のお世話は任せてちょうだい。貴方が最後の日を迎えるまで、日替わりで面倒を見るわ」


 今回持ってきた食事を無理やり押し付け、四人組はその場を後にする。

 一人残された巫女は、もらった野菜や肉じゃがなどを抱え、その場に膝から崩れ落ちた。


「…………仕方がない、のですね。ですが、教えてください、神様。私はなぜ、この世に生まれてきてしまったのですか。このような人生を送るのなら、生まれたくなかった…………」


 巫女の声は涙ぐんでおり、耳を澄まさなければ聞き取れない程か細い。


 声は掠れ、嗚咽を漏らす。

 地面に蹲り、静かに泣き続けた。


「…………」


 自然と巫女に伸びた手。

 この手で、我は巫女に何をしようとしている。


 我は、今の巫女に何が出来る。

 この伸ばした手で、我は巫女を救えるのか?


 ――――今の我は無力だ。

 なにもできん。巫女一人すら、救えんのだ。


 胸が痛い。何かによって握りしめられているような圧迫感を感じる。

 それと同時に、針か何かで刺されているような、ズキズキとした痛みまで感じる。


 この、胸の痛みはなんなのだ。

 この、胸に膨らむ不愉快極まりないものは、なんなのだ。


 わからぬ、わからぬ……。


 わからぬが……。

 我は、あの娘を助けたい。

 あの、巫女の涙を拭いてあげたい。


 他の誰でもない我が、巫女――華鈴を地獄から救い出したい。


 ※


 この日から妙に巫女について気になり、父上の目を盗み神木へと向かい現代へ行っている。


 時々、神木が道を開けてはくれないのはなぜだろう。

 行ける時と行けない時の差は、なんなのだろうか。

 何か、条件があるのか……。


 考えても今は分からぬ、行ける時に行こう。


「――よしっ、今回は無事に来れたな」


 現代に行き、神木に一礼。

 上の方にある太い枝に座り、神社で清掃をしている巫女を見守る。


 何か特別な動きが無ければ見ているだけで終わり。

 だが、時々神社へ来門者が訪れるようになり、その時は神木から降り、気づかれない程度まで近付いて行く。


 ”もしも”があってからでは遅いからな。


 しっかりとご飯を食べられるようになったからか、遠目からでも健康体に戻りつつあるのはわかる。

 だが、これは神へ捧げるため。神に捧げるのだから、貧相な姿では失礼に値すると勝手に人間どもが決めただけのこと。


 神など信じてはおらんくせに、そこまでやるか……。

 まぁ、良い。今はその食事はありがたく食べておくのだぞ、巫女。必ず、我がぬしを救い出してやる。


 絶対に、神の捧げものにしてやるものか。


 ※


 満月の日が刻一刻と近づいている時、父上が突如、驚きの言葉を発した。


「もうそろそろワシ、隠居生活がしたいと思っておる」


 思わず手に持っていたお芋の天ぷらを落としてしまった。お皿に上に落下したため問題はない。


 それより問題なのは、父上の発言。


「九尾様、隠居生活がしたいとは? もしかしてなのですが、あやかしの長を七氏に引き継ごうとお考えで?」


「うむ、そうだ。七氏もだいぶ九尾の力を使いこなせるようになってきた。それだけではなく、現代の空気にも慣れ、今では問題なく仕事をこなしている。少々危ない所もあるが、それはワシらでカバーできる範囲。まだワシらが元気で動ける時に引き継いだ方がいいだろう」


 そんな、縁起でもないことを言わないでくださいよ、父上。というか、父上は絶対にまだまだ元気でしょう。

 もう千年くらいは元気に駆け回るでしょう。


「九尾様にもしもの時が来るとは想像すら出来ませんが、人生何があるかわかりませんものね。私ももうそろそろ隠居して九尾様を独り占めっ――こほん。休みたいわね」


 意味のない咳払いでしたよ母上、しっかりと最後まで申しております。独り占めしたかったのですね。


「ですが、我はまだ不安です。仕事内容も、お手伝いくらいしかしておりません。一人で出来る自信がまだ……」


「さすがに、代替わりをしたからと言ってすぐ一人で仕事はさせんよ。最初は近くでワシが見ている」


 そんなことを言われましても。我はまだまだ不安が残ります。

 箸をテーブルに置き俯いていると、頭に冷たい手が乗っかる。これは、母上の手でしょうか。


 ちらっと見てみると、母上が笑みを浮かべ我を見ていた。


「七氏、貴方は真面目で、なんでも一人で背負い込んでしまいがちです。まるで、昔の九尾様を見ているようで、私は不安があります」


 …………へぇ、父上。昔は頑張っていたのか、意外だ。


「ですが、そんな努力家で頑張り屋さんな貴方だからこそ、私達は言っているのですよ」


「ですが、頑張っているからといって、それが報われる訳ではありません。失敗してしまったら……」


「失敗してもいいのです、不安に思ってもいいのです。貴方の失敗や葛藤を見届け、正しい道へと導くのが私達、親の仕事なのですから」


 にこっと微笑む母上は本当に美しく、実の息子である我でも見惚れてしまいそうになる。


 父上の方を見ると、母上の言葉に賛同するかのように腕を組み、頷いていた。


「それにな、ぬしはこれからは一人ではなく、しっかりと支えてくれる者が現れる。だから、安心せい」


「え、支えてくれる人? それは一体…………」


 我が聞くと、二人は先程の優しい笑みからにんまりとした、何かを企む笑みへと切り替えた。

 ……………………嫌な予感…………。

ここまで読んで下さりありがとうございます!

出来れば次回も読んでいただけると嬉しいです!


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よろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ

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