8ー10
驚いている二人へ振り返り、目元の火傷を触る。
ザラザラで、でこぼこしている肌。
これが気持ち悪くないわけが、ないか。
「…………七氏、なにがあったの?」
「なにもありません。それより、この顔をどうにか出来ないのでしょうか。火傷の痕を消す事は可能ですか?」
母上に聞くが、無言。目を逸らされてしまった。
つまり、これは消せないのだろう。
なら、隠す方法を考えよう。
面でもつけるか?
なんのお面にしようか……。
「七氏」
「っ、な、なんでしょうか。父上」
父上の声が低い、完全に怒っている声だ。
隣に立つ父上を見上げると、無表情で我を見下ろしてきている赤い瞳と視線がかち合う。
「ぬしから聞き出す事は諦めた。悪いが、記憶を覗かせてもらうぞ」
「え、記憶? 一体何を……?」
父上が我の頭に手を乗せてきた。
記憶を覗く?
まさか、父上、人の記憶を見れるのか?
「――――っ、ち、父上!! 待ってください!!」
頭から手を離させようとするも、父上の力に勝てるわけもなくビクともしない。
頭を動かそうとしても、しっかりと掴まれておるから逃げられん!!
父上、見ないでください……。
我があんな小さい事を気にしているちっぽけな者だと、幻滅されてしまいます……。
「――――すまぬな、七氏」
「…………いえ」
父上が我の頭から手を離し、謝罪をしてきた。
我の記憶を覗き終わったらしいな。
どこを見たのだろうか。見て、どう思ったのだろうか。
「七氏、顔を上げてくれぬか?」
「…………」
「七氏」
俯いている我に、声をかける父上。
だが、すいません。今は顔をあげられません。
「…………わかった。なら、そのままでも良い、聞いてくれ。ワシらは七氏の顔が気持ち悪いと思ったことは一度もなく、屋敷の者達もワシらと同じ。ぬしの事は大事に思っており、かけがえのない宝物だ。他人がぬしを気持ち悪いと思おうとも、哀れみの目を向けられようとも。ワシらは絶対に手放さん。だから、安心せい」
…………あの、道路での会話を覗き込まれたらしい。
でなければ、このような言葉を口にするわけがない。
隣で聞いていた母上は、怒りなのかなんなのか。
黒い笑みを浮かべているような気がする、辺りが微かに寒くなってきた。
父上の言葉で何があったのか、大方察しがついたらしいな。
「氷璃、怒りを何かにぶつけたい気持ちはワシでもわかる。ワシも、相手がただの人間でないのなら、炎で骨の髄まで燃やし尽くし、魂は閻魔の元へ届け、永遠と地獄でただ働きをさせてやりたいところだ」
待ってください父上、貴方なら本当にできそうな気がするのでやめてください。そこまでしなくても大丈夫です。
そこまでしなくても、いいのです。
ただ、我は少し、悲しかっただけなのですから。
今だ怒りを抑え込んでいる母上と父上。
なんか、気が抜ける。
二人は、本当に我を愛してくれておるのだな。
こんな、醜い顔をしていても、二人からすれば些細な事。我は、大事な息子なのだな。
「…………ふふっ、まったく。母上、父上。我はもう大丈夫です。怒ってくださり、ありがとうございます」
二人の手を握り見上げなから言うと、母上は胸をなでおろし、父上は安心したように肩を落とした。
「まったく……、なぜこれを隠そうとするのか。隠してはならん記憶だったぞ。七氏、これはっ――……」
…………ん? なんだ? 父上が何を言っているのか、途中から聞こえなくなってきた。
耳を澄ましたくとも、視界の端が黒く染まっていくため、集中が出来ない。
あ、母上が我に顔を向けなにかを言っている。
でも、聞こえない、何も、聞こえない。
あれ……?
なんか、体に力がはいらっ――………。
※
「…………――――ん、あれ。布団? なぜ、我は布団の上で寝ておるのだ?」
我は今、なぜか自身の部屋にある布団で寝ていた。
上半身を起こし周りを見ると、母上が布団の隣に正座して眠っている。隣には、畳まれている洗濯の山。
ずっとここに居てくれたのだろうか、母上の顔が青い。疲れているみたいだ。
…………辺りが暗い、まだ、夜中か?
「……………………」
母上、すいません。
ちょっと、外の空気を吸いたいため、少し出かけますね。
母上を起こさぬように部屋を出て、屋敷の外に向かう。
外に出ると夜空には煌々と月が輝き、見上げている我を照らしてくれる。
やはり現代と違い、空気が澄んでいる。
大きく息を吸うと、心が洗われるようだ。
「どこか、散歩に行くか」
「それを父上であるワシが許すと思うか、七氏よ」
ビックゥゥゥゥウウ!!!!!????
「ち、父上!?!?」
いきなり後ろから淡々とした声が聞こえた。
振り向くと、そこには額に青筋を立て、我の逃げ道を塞ぎ立っている父上の姿。
我の肩を掴んでいる手には力が込められ、ギリギリという嫌な音が聞こえてくる。
ものすごく痛いのです。
これは、我、終わった。
父上、本気でキレております。
こうなると、誰にも止められません……。
「ごめんなさぁぁぁぁぁぁぁああああああい!!!!!」
ここまで読んで下さりありがとうございます!
出来れば次回も読んでいただけると嬉しいです!
出来れば☆やブクマなどを頂けるとモチベにつながります。もし、少しでも面白いと思ってくださったらぜひ、御気軽にポチッとして頂けると嬉しいです!
よろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ




