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生贄巫女はあやかし旦那様を溺愛します  作者: 桜桃
七氏と巫女の出会い
36/95

8ー9

「…………ん」


 …………周りが暗い、体が重たい。


「ん-、今、何時だ…………」


 ――――――――ズキン!


「いっ…………」


 頭、痛い。

 体を起こそうとしただけで、頭に強い痛みが……。


 なんだ、これ。体が重たい、関節痛。

 風邪をひいた時のような症状だ。


「ゴホッゴホッ…………」


 喉が張り付く感覚があって気持ちが悪い、呼吸がしにくい。


「…………みず、のみたい」


 水、飲みたいけど、ない。

 誰かを呼びたくても、声が出ない。

 ――――しかたがない、自分でいくしかないか……。


 重たい体を無理やり起こし、引きずるように廊下にでる。


「うっ…………」


 寒い、いつも歩いているはずの廊下が、ものすごく寒い気がする。

 それに、暗い。


 いや、暗いのは当然だ。

 これだけ静かなのだ、今は真夜中。皆、寝静まっているはず。


「…………はぁ」


 声が出ない以上、自力で行くしかない。

 幸い、まだ眩暈はあるが、壁に手を付いていれば問題はない。


 ゆっくりと、廊下を進む。

 昼間は女中が家事のために駆け回っていることが多いからか、このように人がいない廊下は寂しさを感じるな。


 ――――――――ブルッ


「っ、寒い。早く水を飲んで部屋へ戻ろう」


 真っすぐ台所へと歩いていると、一つの部屋に灯りがついていた。


 あそこは、母上と父上の寝室。

 なぜ、こんな時間に灯りがついておるのだ? 単なる消し忘れか? 

 消し忘れの場合、消してやらんとならぬな。


 部屋の近くまで行くと、二人の話し声が聞こえた。


 まだ、起きていたのか。

 なら、特に灯りを気にせんでも良いな、台所へと向かおう。


 部屋を通り過ぎ台所へと向かおうとした時、ちょうど二人の会話が耳に入ってしまい足が自然と止まる。


『七氏はなぜ、あんなに憔悴しきっていたのですか? さすがにあそこまで貴方が無理をさせたり、放置はしないでしょう?」


 母上の声だ。我の事を話しておるのか。

 心配をかけてしまっておるな。


『今回はワシが悪かった。目を離してしまったのだ』


『目を離してしまった? 何かあったのかしら?』


『あやかしの気配を感じてな。見に行っている間に何かあったらしい』


 …………むむ、心配をかけてしまっておる。

 あれは、父上は全く悪くないというのに……。


『共に居た百目に聞こうにも口留めされているようで、目を逸らすのみだったのだ。だが、何か言いたそうには見つめて来る、困ったものだ』


『どのくらい離れていたのでしょうか』


『わずか五分程度だ』


『五分……。その間に何があったのかを話してはくれないのですね』


『そうだ。ワシに話しにくいのであれば、氷璃にだったら……。そう思ったが、それより先に寝てしまったからなぁ。また起きた時にでも聞こうとは思う』


 ここまで、心配かけてしまっておる。

 どうすればよかったのだ。話しても、今以上に心配かけてしまう、いや、幻滅されるか。


 どっちにしろ、話した方がリスクはあるだろう。でも、ここまで心配するなど、思ってもいなかった……。


『まだ、七氏に現代は早かったではないでしょうか』


 っ、早かった……。

 我にはまだ、早かったのだろうか……。


『現代は危険が沢山と耳にしております。七氏にもしもの事があった場合、私は耐えられません。七氏は私にとって、何物にも代えがたい、たった一人の息子(宝物)なのですから』


 ――――っ。

 母上は我を、大事にしてくれておるのだな。

 こんな、醜い傷がついてしまった我の事も、愛してくれるのだな。


『安心するがよい、それはワシも一緒だ。だからこそ、今回の件は少々気になる。何があそこまで七氏を弱らせたのか。原因がわかれば、対処が可能だ』


『そうね。明日、話してくださるかしら……』


『さぁな。だが、根気よく待とうではないか。なぁに、ワシらの息子だ、心配はいらん』


『そうだと、いいのですが…………』


 ここまで、二人に心配をかけておる。


 ――――そうだ、二人が我の容姿だけで迷惑など思う訳がなかった。

 それだけではなく、共に解決策を考えてくれるだろう。


 我の両親は、優しく温かい方達なのだから。


 ……………………。


 ――――――――ガラッ


「っ、?」


「あら、七氏? なぜ、このような時間に?」


 父上が驚き我を見て、母上が問いかけてきた。

 今なら、声が出る。しっかり、話さなければならんな。


「すいません、先ほどの話が偶然聞こえてきまして……、いえ、本当に偶然なのです。喉が渇きましたので水を取りに行こうとしたら、お二人の会話に我の名前が出てきたため、気になってしまい……。途中からは、耳を澄まし、聞いて、おりました…………」


 勝手に盗み聞きをしてしまった事を謝罪すると、何故か二人は顔を見合せ始めた。

 怒っているのだろうか、盗み聞きした事を……。


その件(盗み聞き)については特に何も思ってはおらん。それより七氏、おぬし…………」


「え、なんでしょうか?」


 父上が問いかけると、何故か母上と目を合わせた。


 む? 母上が我の方に向ってきたぞ。

 頬に手を、添えられた? な、なんなのだ?


 ――――えっ、眉間に皺を寄せ始めてしまった。

 どっ、どうしたのだろう。


「貴方、熱あるわよ? しかも、すごい高い……」


「え、そんなはずはないと思うのですが…………」


 我が否定していると、今度は父上が「それ」と。野太い声で言いながら立ち上がり、我の傍へと来た。


 母上と同じく手を頬に添え、次におでこ、首筋も触られる。

 むむ、これは一体何なのだ。


「これは、確かに熱があるな。高熱だ」


「え、いえ。そんなはず…………」


「頭痛、関節痛、眩暈、倦怠感。これは感じるか?」


「確かに、頭痛と関節痛はありますし、体は重く、壁に手を付きながら廊下を歩いていました。え、この体の不調は、熱だからなのですか?」


「十中八九、熱だろう。明日、医者をここに呼ぶ、それまで寝ておれ」


 父上が我を自室に戻そうと背中を押してきた。

 でも、聞きたい事や話したい事があるから、ここでやすやすと戻るわけには……。


「あの、父上、我の体調はおそらく現代に行ったからだけではないです」


「その話は、ぬしの熱が下がってからゆっくりと――………」


「あの、父上、母上。我の顔は、気持ち悪いのでしょうか?」


 背中を押されながらも絞り出した言葉。

 その言葉を聞いた二人は動きをピタッと止め、驚きの顔を浮かべた。

ここまで読んで下さりありがとうございます!

出来れば次回も読んでいただけると嬉しいです!


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よろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ

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