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生贄巫女はあやかし旦那様を溺愛します  作者: 桜桃
七氏と巫女の出会い
35/95

8ー8

「――――――――ん? 七氏様、どうかしましたか?」


 百目が声をかけてきた。

 な、なんと答えればよいだろう。


 …………あんなことを言われたのは、初めてだ。

 この感情がどのような感情なのか、どのように言葉にすれば良いのかわからん。



「――――っ、七氏様、体調が悪化したのでしょうか。無理しないでください、タクシーの中に入りましょう」


「い、いや。我は大丈夫だ。心配せんでも良い」


「ですが、顔色が悪いです。やはり、現代の空気が慣れないのでしょう。九尾様が帰ってくるまでどうか我慢してください。戻ってきましたらすぐにあやかしの世界に帰りましょう」


 その場で力なく地面に崩れた我の背中をさすり、安心させるように百目が言ってくれる。

 この胸のムカムカは、本当に現代の空気に当てられただけだろうか。────いや、違う。


「…………百目、我の顔は気持ち悪いのだろうか」


「? いきなりどうしたのでしょうか?」


 顔を上げ百目を見るが、目を合わせられん。

 すぐに逸らしてしまう。


 その態度が今までの我とは違い過ぎるのだろう、百目が我の名前を呼び慌てている。

 今の百目の態度や言葉からは、嫌悪などの感情は感じ取れん。だが、我慢させてしまっているのかもしれぬ。


「……いや、何でもない、少々驚いただけだ。今はだいぶ落ち着いた」


「いえ、あの、先ほどの質問は一体…………」


「なんでもない、なんでもないぞ、百目。あと、今の事は父上へ報告しないでもらえると助かる」


「ですがっ──」


「頼む、百目」


 顔を前髪で隠しながら横目でお願いすると、百目が目を逸らしつつも小さく頷いてくれた。


 ふぅ、まさかあそこまで言われるとはな。

 周りの人を考えろ――か。


 確かにそうかもしれぬな、不快な思いをさせてしまっている我が悪い。

 もしかしたら、父上や母上、百目や女中達も同じことを思っていたのかもしれん。


 気まずかったが、我が気づかんかったから普通に接してくれていたのだな。

 そう考えると、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。


 前髪が無駄に長くて良かった。顔を少しでも隠せる。

 だが、完全に隠せはせんか。


 なにか、顔を隠せるもんを探さんとだな。

 そんな事を考えていると、父上が空から降ってきた。


「ふぅ、終わった終った。まさか悪霊どもが人間を驚かせていただけだったとは。まったく、世話妬かせよって……ん? どうした?」


「い、いえ…………」


 父上はいつもと変わらんな。そのおかげか、心が少し楽になった。

 百目が何か言いたげに我を見て来るが、約束は約束だ、何も言うでないぞ。


「七氏? 何かあったか?」


「いえ、なにもありませんよ、父上。体調もだいぶ良くなりました、これならまだ遠くに行けそうです」


 父上へ駆け寄りいつものように言うと、何故か眉間を寄せてしまった。な、なぜだ? 


「父上? どうしましたか?」


 父上に問いかけるが、何も答えてはくれない。

 いつもならすぐ答えてくれると言うのに……。


「七氏よ」


「はい」


「ワシとの約束は、忘れたか?」


 ん? 約束? それはもちろん覚えておるぞ。


「父上から離れない、気分が悪くなったらすぐに伝える。これは覚えておりますよ」


「そうだな。七氏、気分が悪いように見えるが、それは大丈夫になるのか?」


「? 吐き気などはだいぶ収まりました、目眩なども先ほどより治っております」


「…………はぁ、そうか」


 っ、いきなり父上が我の顎に手を添え、顔を無理やりあげさせられてしまった。


 父上の真紅の瞳と目が合う。

 父上の瞳に、我の驚愕した顔が映る。


 ――――何も、口に出来ぬ。


「…………無自覚か」


 一言零すと、父上が我から手を離し、腰に手を回し無理やりだき抱えられた。


「っ、父上?」


「百目、今日はここまでだ。色々振り回して悪いな、また後日、頼むぞ」


 我の言葉を無視し百目に言うと、父上が上へと跳んだ。

 刹那、たどり着いたのは現代に来ると、いつも通る神社。


 またしても一瞬でここまで戻ってきたらしい。


「あの、父上? なにか、怒っておられませんか?」


「そうだな、怒っておる。ワシは、怒っておるぞ七氏よ」


「な、なぜですか? 我は何かやらかしてしまったのでしょうか」


 ハラハラしながら聞いても、父上は答えてくれない。

 我とも目を合わせてはくれない。


 父上は、怒る時は相手を諭すように怒る方だ。

 今のような怒り方は、今までしてこなかった。


 これ以上質問するのは怖いから、何も言えぬ…………。


 父上はそのまま森の中に入り、神木を通りいつもの世界に戻ってきた。


 屋敷には母上が前回同様、布団などを準備し待機しておった。

 我らを見た瞬間、母上は心配そうに駆け寄ってくる。


「七氏、どうしたの!? まさか、立てなくなるくらい気分が悪くなってしまったのかしら」


「いえ、なんでもありません。体調の方も問題ないのですが…………」


 父上をちらっと見るが、我の視線など無視し、父上は部屋へと入り我を布団に乗せた。

 あとは女中に任せ、母上と共に部屋を出て行ってしまわれた。


「…………我は、迷惑かけてばかりだな」


 我は、父上のように偉大なあやかしになれるのだろうか。

 いや、なれん。こんな弱い我では、他人を考えられん我では、父上のような偉大なあやかしになど、なれる訳がない。


 目から何かが流れ落ちる。

 すぐにそれを拭い、服のまま布団の中に入った。


 隣から我を心配する声が聞こえるが、答える余裕がなく目を閉じ、無理やり夢の中に入る事にした。

ここまで読んで下さりありがとうございます!

出来れば次回も読んでいただけると嬉しいです!


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よろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ

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