表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
生贄巫女はあやかし旦那様を溺愛します  作者: 桜桃
七氏と巫女の出会い
29/95

8ー2

 父上から現代に連れて行くと言われた日から一週間、突如部屋まで父上がやってきたかと思うと、一つの風呂敷を我に押し付け「着換えたら()くぞ」と笑顔で言い放たれた。

 

 渡された風呂敷を開くと、中には見たことがないような服が畳まれている。


「これを着ろということなのだろうか。見覚えがない服だ、着方がわからんぞ…………」


 えっと、これは形的に(ズボン)だろう。

 膝や太もも部分が何故か破れているが、大丈夫なのか?


 他には白い薄い服と、黒い袖の短い服。

 これは、袋がたくさん着いている鞄……か?


 むむむ、これは一体、どうすればよいのだ……。


「…………二口女、来い」


『はい、失礼いたします』


 名前を呼ぶと、襖の奥から二口女の声。

 中に入るように言うと、落ち着きのある黒髪の女性、二口女が一礼をして中に入ってきた。


「何かございましたか?」


「これを父上に渡されたのだが、どのように着ればよいのかわからんのだ。二口女はわかるか?」


 風呂敷の中に入っていた服を見せると、二口女が笑みを浮かべた。


「素敵な物をお持ちですね。お預かり致します」


「お、あ、あぁ」


 その笑顔……、この服についてなにかわかっておるな。

 助かった。助かったんだが、嫌な気配を感じるぞ。


「これは、現代に置かれているお洋服と呼ばれる物ですね。私達が着ている和服ではなく、西洋風の衣服の事です」


「ふむ、聞いたことはあるな」


「少々お話には出ていたかもしれませんね。ですが、やはり慣れていなければ、こちらを着こなすのは難しいでしょう。九尾様は何も言わずにお渡しになったのですか?」


「うむ、着換えたら()くぞとは言っていたが、それ以上は何も言っとらんかったぞ。ただ渡されただけだ」


「…………そうでしたか。まったく、あのお方は……はぁ」


 む? なぜか二口女が頭を抱え、ため息を吐いてしまったぞ。これは呆れられておるな、父上。

 普段の行いが今のような事態になるのだな、我も気を付けなくてはならん。


「今は、七氏様の着替えのお手伝いでしたね。失礼いたしました」


「その言い方はなんとなく語弊があるぞ、辞めてくれ。服を着るくらいなら出来る」


「ふふっ、失礼いたしました」


 謝罪しているのに、二口女の口元は笑っておる。

 なぜ笑う、我は何もおかしなことは言っとらんぞ。


「ふてくされないでください、申し訳ありません。では、まずがこちらの絝からどうぞ」


「むむむ。まぁ、良い。今着るから待っておれ」


「はい」


 二口女に言われた通り、布が破れてしまっている絝を受けとる。

 その後すぐ、白い薄い服を渡され、最後は黒い、銀の装飾が付いた服を渡された。


 黒いものは、着ると前が開いている。

 銀の装飾が真ん中で揺れておるぞ。これは、前を止めるなにかなのか?


「今、七氏様が気にしておりますものは、前を止めるための物、現代ではファスナーと呼ばれております。上着などによくつけられておりますよ」


「そうなのか。これは止めた方が良いのか?」


「今回の服装のバランスで考えると、止めない方がかっこいいかなと思います。七氏様の顔立ちは、九尾様に似ておりますが、氷璃様のかわいらしさも入っている為、ガチガチにかっこよさだけを集めると違和感を覚えます。九尾様、服のセンスはありますね」


 二口女がよくわからないこと言っている。 

 我では、今すぐこのお洋服と呼ばれる物を全てを理解するのは難しそうだ。


 ――――――――ガラッ


「着換えたか?」


 二口女が何やらブツブツ呟いておると、父上が一言もなしに部屋へと入ってきた。


 せめて我の名前を呼んでから部屋に入ってくれと、いつも口を酸っぱくして言っておるのだけれどなぁ。

 父上には耳というものが付いておらんのか、まったく。


「もう、九尾様、息子の部屋でも着換えていると知っているのなら、せめて一言かけてください。終わっていなかったらお恥ずかしいでしょう」


「息子とは背中を洗い流す中だぞ? そんな気にせんでも良いだろう」


「そういう問題ではないのですが……、いいです。では、私はこれで失礼いたしますね。七氏様の着物は私達が洗わせていただきます」


 脱いだ我の着物を手に取り、二口女が一礼をし、部屋から出て行った。

 ……………………はぁ。


「父上、視線がものすごくうるさいのですが、なんでしょう」


「いやはや。やはりワシの息子だ、このような落ち着いたデザインでもよく似合うのぉ」


 我の頭をポンポンとしながら、豪快に笑う父上。

 そんな父上の服装も、いつもと違う。


 いつもは赤地の着物を着ているのだが、今は黒いズボンに白い襟の付いた袖の短い服を着ている。

 腰には小さな鞄を巻いているな、これもお洋服と呼ばれる物なのだろうか。


「鏡で見るがよい」


 そういえば、この部屋には姿見があったのだった。

 壁の方にあるタオルがかけられた鏡。タオルを取り、姿見に体を映し込む。


「ほう、このようになっておったのか」


 絝の穴は良い感じに空いておるな、かっこよく見えるぞ。


 白い服は上に来た黒い服より少し大きいのか、はみ出している。だが、それがまたいい感じに決まっておる。

 腕や足を動かしてみるも、着物よりも動きやすく、これはこれでいいかもしれぬな。


「ほれ、最後にこれを付けて出来上がりだ、なくすなよ」


 鏡を見ていると、後から父上が我の首に何かを付けた。


「これって、首飾りですか? 我は男ですよ父上、これは女性が付けるものではないのですか?」


 父上が我の首に付けた首飾りは、赤い雫の形をしていた。

 

「今の時代、男性が首飾りを付けていても特に問題はない。それと、これは現代ではネックレスと呼ばれとる」


 言いながら父上は我から離れ、部屋を出て行こうとした。

 唖然としている我に、父上は「置いて行くぞ」と呑気に声をかけて来る。


 唖然とさせたのは我ではなく父上だと言うのに。

 どこまでも捕らえがたい父上だ。


 我を置いて廊下へと行ってしまった父上を追いかける為、風呂敷に置かれている最後の装飾品、鞄を手に持ち慌てて部屋を後にした。

ここまで読んで下さりありがとうございます!

出来れば次回も読んでいただけると嬉しいです!


出来れば☆やブクマなどを頂けるとモチベにつながります。もし、少しでも面白いと思ってくださったらぜひ、御気軽にポチッとして頂けると嬉しいです!


よろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ