第37話・あくたらべく こうざんへ むかった!
「マジでいいんすか?」
「構わんぞ」
先生はふん、と戦斧を下ろしてくるりとオレたちに背を向けた。
そして、そこにあるパソコンに何やら打ち込んでいく。
そして、四つのメダルのようなものを渡してくれた。
「これは、この学校から許可を得て取りに来たという証だ。忘れずに持ち帰れ」
それから今度は棚に向かって、何だか色々取り出した。
防護眼鏡のようなもの、ハンマーとタガネ、それと地図らしきもの。
「分からんことがあったら鉱夫に聞け、タ・ケールに認められたと言えば、まあ、悪いようにはならんだろう」
「タ・ケール?」
「気が向いたら教えてやる。しかしお前らはミスリルを採るという目的があるだろう」
「あ、は、はい」
「なら行け。儂に死体を回収させないように十分に気を付けるんだな」
先生は太く短い指で、幾つも乱立している門の一つを指した。
「先生、先生はもしかして……」
「気が向いたら教えてやる、と言っただろう」
篠川先生はハルナさんに背を向け、水晶の結晶に手を向けた。
「さあ、行け!」
言われて、オレたちは光を放つ門をくぐった。
青空の下、岩山がそびえ立っている。
門の向こう側は、篠川先生以上に背が低く、がっちりした人たちが、あちこちで働いている。
「おう! ハザマの向こうの人間か!」
声をかけられて、オレたちはそっちを向いた。
もしゃもしゃのひげを生やした背の低いおっさんが、どすどすと足音を立ててやってきた。
「ハザマの向こう……はい、狭間職業訓練校から参りました。目的は……」
おっさんは丁寧に挨拶した。
「ミスリルだろう、分かってる!」
いちいち声がデカい……。
「ハザマから来る人間は、みんなミスリルを採りに来る! しかも自分で掘り出しに!」
「え……? もらえるんじゃ、ないのか……?」
那由多くんの呆然とした声に、ハルナさんが呆れたように言った。
「当たり前でしょう。行ってもらって帰ってくるんじゃ本当にアイテムを手に入れたとは言えないわ。自分の力で手に入れないと」
先生がハンマーとかタガネとか貸してくれた時点で気付くべきだったな、那由多くん。
「はあ……魔勇者がハンマーとタガネで力仕事か……」
「那由多くん、それはここで働いている人たちに失礼じゃねーか?」
「力仕事は大切よ」
オレとハルナさんにツッコまれて、しゅーんと那由多くんは俯いた。
「それにモンスター共も鉱山に棲みついているからな、気をつけろ!」
「モンスター?!」
「おう! このアクタラベクは、昔、儂らドワーフ族の王都だった!」
やっぱりここにいるのはこの人も含めてドワーフか! 初めて見た! 当然だけど!
「しかし! 闇のデミラクは、この鉱山都市を手にせんと、儂らドワーフを、皆殺しにしようとした! それを救ってくれたのが! ハザマの向こうの、勇者だった! 故に、この鉱山は! 勇者と儂らドワーフ族の! 共有財産となった! しかし、闇のデミラクは! モンスターを、鉱山中に、ばらまいた! その生き残りが、まだまだ、この山に! 棲みついている!」
「なるほど、そのモンスターを追い返せるだけの実力者しかこの鉱山には入れないと、そう言うわけですね?」
「その通り!」
「じゃあ、とりあえず先生のくれた地図を見てみよう」
オレたちは地図を覗き込んだ。
出入口、から始まって、どんどん地下に降りていく。かなり潜ったところに、豊富なミスリル鉱脈があった。ミスリルだけではなく、普通の鉱石も取れるらしいけど、とりあえず今は関係ない。
「じゃあとりあえず行ってみよ……」
う、と言おうとしたら、すっと地図が引き抜かれた。
「ちょ、返して……」
「見せてみろ」
ドワーフのおっさんが、地図を抜き取ったのだ。
「ほうほう、なかなかに見事な地図の書き手だ」
「おーい、返して……」
「いや、ここの最新情報がもらえればありがたい。見てもらおう」
それもそうだ。
じっくりと地図を見ていたドワーフのおっさんは、地図の角の方に視線をやって凍り付いた。
「こ、ここ、これ、は……」
「何? 何か間違いでもあったのか?」
「タ・ケール……」
そう言えば篠川先生が言ってたっけ。タ・ケールに認められた、と言えば悪いようにはしないだろう、と。
土田のおっさんもそのことを思い出したんだろう、恐る恐る切り出した。
「タ・ケールと言う方に、認められたのですが」
「こりゃあ驚きだ! タ・ケールの認めた連中とは!」
大声過ぎて耳が痛ぇ。
「タ・ケールとはどんな人なんですか?」
半分耳を塞ぎながらも、おっさんが聞く。
「知らないのか!?」
「シノカワ・タケルという人が、その名を言ったのです。悪いようにはならないかと」
「タ・ケール・シノカワ! 間違いねえ!」
ドワーフのおっさんが大声を張り上げた。
「何者なんですか?!」
「サリ・シノカワの息子じゃねぇか!」
「サリ・シノカワとは!?」
「このアクタラベルの英雄よ! 闇のデミラクを倒してくれた偉大なる勇者よ! それだけじゃなく、子まで成した! それがタ・ケール! 勇者と儂らの血を継いだ子よ!」
「ハーフドワーフ……?」
ハルナさんが呟いた。
そっか、篠川先生は人間とドワーフの間に生まれたんだ。それで妙にドワーフ感を漂わせてたんだな。
「なら、ここに行け、ここだ」
おっさんは地図にマル印を描いた。地図の通路からはみ出している。
「新しい鉱脈を探して見つかったところだ! ミスリルがかなり出ている! この地図を見せてタ・ケールの知り合いで、ゴ・ノール……儂の名前だ……つまり、儂の紹介と言え! そうすれば、すみのほうくらい掘らせてもらえるだろう!」
「ありがとうございます」
土田のおっさんは丁寧にお礼をして地図を受け取った。
「では、行ってきます」
「おう! 重々気をつけてな!」
ゴ・ノールというおっさんは、手を振って見送ってくれた。




