ノワル#2
「あ、そうだあいつが帰ってきたらお礼言っとけよ」
「…………」
ハハッ…本当にわかってんのかな…?
「すいませーんお待たせいたしましたわ」
外から白女の大きな声が聞こえてくる
「お、帰ってきたみたいだぞ」
子供を連れて玄関から外に出ると白女がありえないものを引きずっていた
「お…おいメシってそれか?」
「………」ポカーン
なんでそんなに誇らしげなんだよコイツだって口を開けてポカーンってしてるじゃないか
「そう!先ほど仕留めた下竜の右脚ですわ」
やっぱりそうだったか、なんか鱗の色でそうじゃないかって思っていたけどさ
「すぐに料理を始めますわ、お二方も手伝ってくださいまし」
「お…おう」
「………」
手伝うつもりではいたけどさドラゴンの調理なんてどうやって手伝えばいいんだよ…
「そちらは火をおこしてもらいますか?ノワルさんは火を出せますわよね」
「…りょーかい」
「……」コクッ
なんだ、かまどづくりかそれならよかったけどアタシが火を出したこと覚えてんだな記憶力は案外悪くないのか?
「まぁいいかとりあえず石を集めて積んでいくか、アンタも石集め手伝ってくれよ」
「…………」コクッ
あれだけでかいドラゴンの脚だしかまども大きめに作っておくか
「かまどはアタシが積んでいくから木の枝を拾ってきてくれ」
「…………」コクッ
……言われたことはすんなりやるんだよな喋ること以外は、今も一所懸命枝を拾っているしあのペースならアタシも急がないとな
「お、早いじゃんありがと」
「…………」
受け取った枝を組み終わったかまどに枝を入れていって魔法で火をつける
「オーイ火起こし終わったぞー」
ドラゴンの肉を切っている白女に声をかけるどうやらちょうどあっちも終わったタイミングだったらしい
「わかりました、ありがとうございますわ」
いつの間にか持ってきてた鉄板をかまどの上にのっけて最初に脂身を焼き始めた
「うわっめっちゃ良い匂いじゃん」
そして鉄板の上にでかい肉がどんどんと…どんどんと?1,2,3,4……多くねぇか?
「おいアンタ、どんだけ焼くんだよ…しかも一つ一つがでけぇし」
「あらノワルさん、三人ならこのくらいなのではありませんの?」
「そんなわけないだろ誰が手のひら二つ分よりでかい肉を二個も三個もくえるかよ」
何人前焼くつもりなんだよ、これ食いきれるのか?ほらアイツだって驚いているはず……
「……」キラキラ
そんなことはなかった…すごい目をキラキラさせてやがる、確かにうまそうだけどさ
「よーし、完成ですわ!下竜のもも肉ステーキですわ」
ステーキが完成したようだ皿にのっけて渡してくれるが…
「はいどうぞ」
「……!」
この子は嬉しそうにしてるけどアタシはこんなにでかいステーキ何枚も食えねぇよ
「ありがと…だけど私は一枚でいいかな」
「あらそうですか、では私がいただきますわね」
お前は普通に食べれるのか、しかも量が増えて嬉しそうだし
「では、龍神様よあなたの恵みに感謝しこの食事をいただきます、この料理を祝福し私たちの生命の糧としてください」
「……いただきます」
「………」パシ
普通にいただきますと言おうと思ったらやたら長い祈りが聞こえる龍神教の挨拶ってめんどくさいな
「よし!食べましょう!」
言われなくてもそのつもりだけどさ、ナイフをステーキに入れる
「柔らかっ」
ナイフだけでわかる柔らかさに驚きつつも一口ほおばる、口の中で肉汁がはじけ降りかかってるスパイスと一つになってるし……しかもこの感覚って……まさか
「うっま…なにこれ」
「……!……!」パアァァ
夢中になって食べてたがふと顔をあげると白女の皿からステーキが3枚も消えている
「…アンタ食うの早くねぇか?」
「そうですか?普通だと思いますよ?」
「いやいやアタシが一切れ食べてる間にアンタは三、四切れでしかも大きいの食べてるじゃん」
「この子だっていっぱい食べてますよ」
フォークだけでバクバクすげぇ勢いで食べてやがる
「まじかアタシが少数派かよ」
「美味しいですか?」
「……!」コクコク
こうしてみると表情は豊からしい
「そういえばあなたのお名前は?」
「……」フルフル
白女もコイツに名前を聞いてる
「駄目、コイツ喋らないんだよねシャワーの時にも聞いたんだけどさ」
効果のない質問にそう代弁する
「助けたくれたヤツが帰ってきたらお礼を言えよって言ったんだけどな」
「…………」シュン
「あら、お礼なんていいですわお礼の為に助けたわけではないですもの」
「それでいいのかよ…んでこれからどうすんだよ?」
「これからとは?私は導くための旅を続けるだけですわ」
子供に指を向ける、コイツの扱いによってアタシの取る行動が変わる
「違うってコイツのことだよ、このまま連れていくのか?」
「近くの村に預けようかと思っていましたけど…」
「アンタは村に仲がいい奴でもいんのか?」
このあたりの村を思い浮かべるがよさそうな村には思い当たりがない
「いえ、いませんが」
「ならあきらめた方がいいよここの地域は排他的だから知らない子供を受け入れるとこは無いね」
それにアイツは魔術の実験に使えるかもしれないからどっかに置いて行かれるのも困るしね
「そうですか…ずいぶん詳しいのですね」
「一応ここら辺で暮らしてたからね……」
ふといなくなった師匠の顔を思い浮かべる
「ノワルさんの村は…?」
「師匠と二人だけだったし、その師匠もいなくなった」
「……そうでしたのね」
空気を悪くしてしまったような気がするがアタシの予想なら……
「決めましたわ!この子は私が連れていきますわ!」
よし予想どうりの言葉が来た
「へぇどこに?」
「まだ旅の途中ですからすぐにとはいきませんが旅が終わりましたら国に帰りますので、私の国なら受け入れてくれるはずですわ」
なるほど白女の国かもしかしたらアイツの不思議な魔道具とかも手に入れられるかもしれないな
「それならよかった…」
そしてドラゴンを食べたときに感じた魔力が吸収される感覚、魔物を初めて食べたがもしかしたら自分の魔力量の増加に効果があるかもしれないし、コイツのふざけた魔力量の秘訣だとしたらアタシにとってのメリットが多いしな
「……なぁ、あたしもついて行っていいか?アンタの旅に」
「もちろんいいですわ」
思ったより返答が軽くて拍子抜けする
「え、本当か?」
「ただし一つ条件がありますわ!」
「条件…?」
やっぱりそんなすんなりいかねぇか、一体どんな条件なんだ……?
「私は“アンタ”じゃありません立派なブラナという名前がありますのちゃんと読んでくださるかしら?」
……それだけ?ただ単に呼び方だけなのかよ
「……ハハッ、わかったよ…ブラナ」
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