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ブラナ#2

「すいませーんお待たせいたしましたわ」


家の中から二人が迎えてくれる、どうやらあの子の意識も戻ったようですわね、頭にタオルを巻いていますからちゃんとシャワーも浴びられたようですし


「お…おいメシってそれか?」

「………」


二人は私の引きずっているものに目を奪われているようですわ、あの子に至っては声も出ないようですし


「そう!先ほど仕留めた下竜の右脚ですわ」


大きくて食べ応えもあってそこそこの魔力も含まれているいい食材ですわ、しかも新鮮ですしね


「すぐに料理を始めますわ、お二方も手伝ってくださいまし」

「お…おう」

「………」

「そちらは火をおこしてもらいますか?ノワルさんは火を出せますわよね」

「…りょーかい」

「……」コクッ


私はカバンから包丁を取り出して下竜の鱗ごと皮を剝いでいく


「なかなか脂が多いですわねいいものを食べて育ったのでしょう」


二人の方に目を向けるとノワルさんは手慣れた様子でかまどを作っていますわ手伝いは必要なさそうですわね、こちらも皮は剥ぎ終わりましたしあとはステーキのように……


「厚さは3センチぐらいでいいかしら味付けは私のミックススパイスで…」


肉を輪切りにしていきカバンから瓶を取り出し中身を両面にしっかりと振りかける、岩塩に胡椒、ガーリック、オニオン、そして私の秘密の配分のスパイスを配合した特製のすごうまスパイスですわ


「オーイ火起こし終わったぞー」


ノワルさんが声をかけてくる、ちょうど終わったタイミングぴったりでしたわ


「わかりました、ありがとうございますわ」


かまどの上に家から持ってきた鉄板を置き下竜の脂身を置くとジュワアアと焼ける音と共に良い匂いと油が出てくる


「やっぱりお肉はステーキに限りますわね」


鉄板にどんどん肉を並べていくと肉とスパイスの焼ける食欲をそそる匂いが広がる、またお腹がなってしまいそうですわ


「おいアンタ、どんだけ焼くんだよ…しかも一つ一つがでけぇし」

「あらノワルさん、三人ならこのくらいなのではありませんの?」

「そんなわけないだろ誰が手のひら二つ分よりでかい肉を二個も三個もくえるかよ」


ふむ、どうやらノワルさんは小食のようですわね残った分は私がいただきましょうか


「……」キラキラ


助けたあの子も輝く瞳でじっとお肉を見ていますわ、ふふ…お肉の魅力はやはりすごいですわね、火の入り方を見てひっくり返して両面を焼いていく


「よーし、完成ですわ!下竜のもも肉ステーキですわ」


お肉に火が入りすぎないように中まで焼けた瞬間を見極めてお皿に取り出していく


「はいどうぞ」


二人にステーキが乗ったお皿を渡す


「……!」

「ありがと…だけど私は一枚でいいかな」

「あらそうですか、では私がいただきますわね」


全員にステーキのお皿がいきわたり家から持ってきた組み立て式のテーブルと椅子にみんなが座る


「では、龍神様よあなたの恵みに感謝しこの食事をいただきます、この料理を祝福し私たちの生命の糧としてください」

「……いただきます」

「………」パシ


手を合わせ龍神様へ祈りを捧げる、ノワルさんは龍神教ではないようですが食事前に祈るようですわね、あの子も見様見真似で手を合わせていますわね


「よし!食べましょう!」


ステーキにナイフがすっと入る、私好みの焼き加減に仕上げた生肉からステーキになるちょうどの境目を見極めた柔らかなステーキから肉汁が出てくる


「完璧ですわね」


一切れ口に運ぶとスパイスの風味が口いっぱいに広がり噛めば噛むほどあふれる肉のうまみもそれに負けずに主張してくる


「うっま…なにこれ」

「……!……!」パアァァ


お二人にも好評のようですわね

食が進むにつれて話も弾む


「…アンタ食うの早くねぇか?」

「そうですか?普通だと思いますよ?」

「いやいやアタシが一切れ食べてる間にアンタは三、四切れでしかも大きいの食べてるじゃん」

「この子だっていっぱい食べてますよ」


目を向けるとナイフが使えないのかフォークだけでステーキをもりもりと食べている


「まじかアタシが少数派かよ」

「美味しいですか?」

「……!」コクコク


口の周りを肉汁べたべたと汚しながら笑顔で何回もうなずいている


「そういえばあなたのお名前は?」

「……」フルフル


助けてから一言も喋ってない子供に名前を聞く


「駄目、コイツ喋らないんだよねシャワーの時にも聞いたんだけどさ」


ノワルさんがそう代弁した


「助けたくれたヤツが帰ってきたらお礼を言えよって言ったんだけどな」

「…………」シュン

「あら、お礼なんていいですわお礼の為に助けたわけではないですもの」

「それでいいのかよ…んでこれからどうすんだよ?」

「これからとは?私は導くための旅を続けるだけですわ」


ノワルさんは首を振って子供を指差す


「違うってコイツのことだよ、このまま連れていくのか?」

「近くの村に預けようかと思っていましたけど…」

「アンタは村に仲がいい奴でもいんのか?」

「いえ、いませんが」

「ならあきらめた方がいいよここの地域は排他的だから知らない子供を受け入れるとこは無いね」

「そうですか…ずいぶん詳しいのですね」

「一応ここら辺で暮らしてたからね……」


そう言ったノワルさんの顔はほんの少し寂しそうな感じがした


「ノワルさんの村は…?」

「師匠と二人だけだったし、その師匠もいなくなった」

「……そうでしたのね」


受け入れるとこはこの近くにはない、だからと言ってここに置いていくことはもちろんできないですし…


「決めましたわ!この子は私が連れていきますわ!」

「へぇどこに?」

「まだ旅の途中ですからすぐにとはいきませんが旅が終わりましたら国に帰りますので、私の国なら受け入れてくれるはずですわ」

「それならよかった…」


ノワルさんは優しい視線をあの子に向け、何か思案するように口に手を当て少し経ってからノワルさんは静かに口を開いた


「……なぁ、あたしもついて行っていいか?アンタの旅に」

「もちろんいいですわ」

「え、本当か?」

「ただし一つ条件がありますわ!」

「条件…?」

「私は“アンタ”じゃありません立派なブラナという名前がありますのちゃんと読んでくださるかしら?」

「……ハハッ、わかったよ…ブラナ」


お読みいただきありがとうございます。

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