第4話 わがまま
「侑月ー」
「何?」
「わがまま言っていい?」
夕食も終わり、リビングでゆっくりとしていると、瑠奈が話しかけてきた。
「別に良いけど・・・」
「じゃあ言うね。この家に住んでいい?」
「は!?」
瑠奈の口から飛び出したのは想像もしていなかった物だ。
「何か欲しいとか、どこか連れてってとかじゃないくて、ここに住みたいの?」
「うん。そろそろ実家から出たいなと思ってたんだけど、希望の条件に合うところがなかったんだ。この家は凄い希望に合ってるからどうかなーって思って。」
「へー 実家出たかったんだ」
瑠奈が実家から出たかった事を俺は初めて知った。
「そうなんだ。本当は一人暮らしも考えたりしたんだけど、家賃の面とかもあって、最近はシュアハウスとかも考えてたんだ」
「そっか」
瑠奈の考えを聞いて関心をしていると、
「それでどうかな?」
体を寄せてきて、上目遣いで聞いてきた。
「別に俺は構わないけど」
「ほんとに!? やったー!!」
家に住む許可を出したのは、瑠奈の上目遣いにやられた訳じゃない。
確かに可愛いと思ったがそれは違う。
そもそもこの家は1人で住むには広すぎるのだ。
この家の間取りは4LDKだ。
高校生の男が一人暮らしで暮らすような家では無い。
空いてる部屋もあるため許可を出したのだ。
「けどこの家は俺の親の物だから、聞いて許可が出ないとダメだよ」
そうなのだ。
この家は俺の父親の物だ。
元々、この家はセカンドハウスとして使っていた家だ。
その家に住むことを、俺が高校入学直前に言われた。
「侑月これから一人暮らししてね」
「え? 」
「家はあのマンションだから。家具とかも買い替えたかったら、変えていいからね」
「は!?」
まぁほとんど強制である。
なので現在この家に一人暮らししていても、親に聞かないと分からないのだ。
「それと瑠奈は親に言ってるの?」
「実家を出ることは言ってるよ。けど侑月の家に住むとは思ってないと思う」
「じゃあそっちにも連絡しないとダメだね」
その後両方の親に連絡を取った。
こっちの親は
「瑠奈ちゃんと同棲ってこと!? じゃあこのまま行ったら瑠奈ちゃんが娘になるかもね!」
「全然構わないぞ。瑠奈ちゃんだったら、こっちの家に住んでくれても良いのに」
と言われた。
数回会っただけだが、2人とも瑠奈を凄く気に入っている。
そのため自分達の息子よりもその彼女に対しての言葉が多かった。
母親は義娘になった時を想像していた。
父親は瑠奈だったら、自分達が今住んでいる一軒家に住んでも良いと言いやがった。
瑠奈だったらって事は俺はダメなのかよ。
一応息子のはずなんだけど。
その2人の話を聞いた瑠奈も
「嬉しいです! また今度そちらの家にも行かせてもらいます!」
と喜んで話をしていた。
瑠奈の方は
「侑月くんごめんね。瑠奈が色々と迷惑かけて」
「侑月くんほんとに申し訳ない。これからも瑠奈の事をよろしく頼むよ 」
2人ともに謝られた。
俺もありがたい事に瑠奈の家族に気に入ってもらっているようで、同棲の事にも何も反対されなかった。
「それじゃこれからよろしくね」
「はいはい。こちらこそよろしく」
そんな訳で瑠奈と同棲する事になりました。