火の中の蛙大海を知らず
こんにちは勿忘草です。
楽しんでいただければ幸いです。
呪いによって手の甲に黒い紋様が入ったルトルはよろけながら馬小屋にたどり着きわらの中に倒れ込んだ。
翌朝日が昇ると同時にウルガが小屋に入ってきた。
「おはようルトル。ん?」
ウルガはルトルの異変に瞬時に気がついた。
「ルトル、その手どうした?」
ウルガの騒々しい声を聞いてルトルは目を覚ます。
「ウルガさんおはようございます。手の甲は気にしないで下さい…」
ウルガはいつも礼儀正しいながらも明るく振る舞っていたルトルの異変は悟ったもののそれ以上口を出すことはできなかった。
ルトルもまた他人を心配させまいと隠し続けることを心に誓っていた。
しかしそれからが地獄だった。
感情を表に出すと他者に呪いのことがバレてしまうというリスクから感情を制御し、食事も貰えず体力は低下、心身ともに削れていった。
そして何日かたったある日、ルトルはいつも通り馬小屋のわらの上で寝ていた。
パチパチ
何かが弾けるような音がしてルトルは目を覚ました。
馬小屋に火が放たれていた。
泣き喚こうものなら激痛が走り今のルトルではそのまま気を失ってしまうだろう。
ルトルは諦めてまぶたを閉じた。
浮遊感がした。
「ルトル!生きてるか?しっかり捕まっとけよ!」
「ウルガ…さん?」
ウルガはルトルを抱えたまま今にも崩れ落ちそうな馬小屋の外に出た。
ルトル達が外に出ると馬小屋は崩れて炎が柱のようになった。
呆然としているルトルにウルガは言った。
「もうこんな家にいてもお前さんは殺されるだけだ。俺のことは良いからお前さんだけでも逃げろ。あんな奴を父親だとはもう思うな。即興で悪いがこれからはトールとして生きていくんだ。」
ルトル否トールはウルガの言葉通り屋敷の前の森に入っていった。
その背中を見届けたウルガは呟いた。
「絶対に生き抜けよ英雄君よ…」
ありがとうございました。
自分としても続きを考えるのが楽しくて仕方ありません。
次回もどうぞよろしくお願いします。