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アジトとして使っているうちの一つにハルが見知らぬ少年を連れてきたという情報が入った
たまたまそこにいたのが俺だったから降りていった
床にへたり込んで荒い息を繰り返しながらハルと何か話している東洋人らしい少年がいた
距離があって会話はあまり聞こえない
ハルは普段から全く隙がないのだが少年に手を出す気配がない
腰に指しているであろうナイフに手を触れる気もなさそうだ
敵では無いのだろうか
まぁあいつのことだからいざとなればすぐこの少年の首も切れるのだろうが
「君だけなら…もっと…早く…逃げれたろ…」
俺にはアジアの方の言葉は分からないから、東洋人の少年が何を言ったのか分からないがハルが驚いたのが分かった
あの仮面のように整って全くと言っていいほど動かない表情を動かした
『ハル』
俺は東洋人の少年にとりあえず手足を拘束しようかと近づく
近くで見てみると幼い顔立ちだが東洋人は若く見えると言うし、年齢はよく分からない
目は焦点がよくあっていない
痩せていて背丈も170センチ前後くらいだ
東洋人の基準は知らないが大柄とはいえない
クスリはやっていなさそうだし恐らく相当フラフラなのだろう
『ジャック
よせ、必要ない』
手を伸ばそうとすると、ハルが抑揚のない声で俺を止めた
少年は力尽きたように崩れ落ちた
『おい!』
俺は慌てて近づいたがハルは落ち着き払って少年を見ていた
『こいつに戦闘能力はない
勘はいいようだが、素人だ
敵にならない』
『スパイの可能性は?』
『2日間この辺りをうろついていたから少し疑ったが
発信機も盗聴器もついていない
リストにも名前はなかった
いざとなれば力づくで抑え込む』
怖いやつだ
こいつだけは敵に回したくないと俺はあと何回思うのだろうか
『こいつどうするんだ
ここに転がしとくわけにも行かないだろ』
ハルは少し考えると
『奥のソファにでも転がしておけ』
とサラッと言った
『俺にやれってか?』
『別にこのままでもこちらとしては構わない』
そういうと手袋をはめ直して奥に行った
シャワーでも浴びるのだろうか
どちらにしても引き止めると不機嫌になる
止めないのが得策だ
俺はため息を着くと少年を担ぎあげた