表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
春紫苑  作者: E.L.L
1/224

1

私は1度死んだ


生きるために死ぬのか


死ぬために生きるのか



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈



雨が降っている


傘を忘れた僕は途中で降り出した雨の中を走った

少し特殊な留学をしているため、各地を転々とする生活を送っている

ここには来たばかりで土地勘などまるでない上に方向音痴であるにもかかわらず、前もろくに見ずに走ったせいか見慣れた景色は一切なく、僕は迷子になったことを悟った

防水仕様が前より改善したとはいえ、雨が降り仕切る中携帯を触るのはあまり気が進まないが、致し方あるまい

この辺りは大通りを1本外れると薄暗くて入り乱れた場所になる

あまりいい話も聞かない

ここは日本じゃないんだ

雨などに焦らず落ち着いて歩くべきだった


雨が弱まってきて、ついに止んだタイミングで携帯を出そうと手をポケットに入れた瞬間

凄まじい破壊音がした

音の方向を見ると、男が1人壁に叩きつけられて伸びているところだった

男が飛んできた方向から音も無く人影が現れた

漆黒の髪、色素の薄いほっそりした身体

国籍は不明な顔立ちで少年のようだった

とんでもない美貌だったが、僕はそいつの目を見て背筋に冷や汗が伝うのを感じた

どこまでも深く深く暗い金に近い茶色の目

色だけならばかなり鮮やかなのだろうに、感情というものが抜け落ちているかのようだった

美しい人形

僕は咄嗟にそう思った


そいつは無表情のまま、鮮やかな足の一撃で伸びている男にとどめを刺した

骨が碎ける音がした

一連の無駄のない動きはまるで舞のようで僕は目が離せなかった


ふとそいつがこちらを見る

目が合った瞬間僕は死を悟った

先生、ごめんなさい

僕はまだ恩返しはおろか、お礼だってきちんと言えていたのかも分からないのに



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ