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1.始まり

 「テンプレ」とは⋯ テンプレート(テンプレ)は、同じ文章や決まり文句が繰り返されるような状況で用いられることが多い傾向にある。主にインターネット上で使用される。


 「陰キャ」とは⋯陰気な性格な人を意味する。陰キャラの略語。スクールカーストにおいて下位に位置する「イケてない」グループの総称として使われることもある。


 「テンプレ陰キャ」とは⋯上記二つを併せ持った人。典型的な陰キャラ。








テンプレ陰キャの僕は果たして何人友達を作れるのだろうか。


 そんなことを考えながら坂道をやや早足で僕は歩く。1ヶ月前に通った時はまだ蕾だった桜が、今はこれでもかというほどに咲き誇っているのを見て、ついにこの時が来てしまったのか、と頭が痛くなる。


 今日は普通の人なら楽しみなはずの ー僕にとってはそうではないがー 入学式である。

何故僕が入学式を忌み嫌っているかにはれっきとした訳がある。単純に人と接するのが苦手なのだ。

これはテンプレ陰キャの特徴だ、と僕は思う。一部のキラキラしい人間 ー俗に言う陽キャー なんかは入学式は可愛い子を見つけるチャンスだとか言うけれど、それは極僅かな人たちの考え方で、僕と同じ界隈の人間からしたら極限まで目立たないように、と神経をつかう行事、なんだと思う。

兎にも角にも、入学式とは人生において10本指に入るくらいテンプレ陰キャにとって苦手な行事なのである。


ードンッ!


「…!すみません!」


一つに束ねた少し茶色がかった髪を揺らして少女が頭を下げる。


「え、あ、ぁ…あの、大丈夫…です。」



「……ぇ。あっ本当にすみませんでした!あの、えっと急いでるので失礼します!」



…やってしまった。僕は友達を作るんじゃかいのか⁉︎こんな調子で作れるわけがない。だけれど、コミュ障はどうにもならない。いや、考えるんだ。何かいい策があるはず…。その時、またしても背後から何かがぶつかって来る気配がした。


「おはよう!ソル!」


「うわっ…!ぉ、おはよう。(いつき)。」


後ろから肩をどついて来た彼は中学校時代からの友達であり、僕のたった一人の友達でもある。少々口が悪いのがたまにキズ、といったところだろうか。


「おいおい、朝からくれーやつだなぁ。お前は。超陰気くさい。そんなんじゃ俺以外の友達できねーぞ?」


「べっ別に、暗いとかそういうのじゃなくて単純におどろいただけ、だから。」


「えー?俺には『入学式とか災難でござる。何故拙者があんな行事に出席せねばならないのか…。』とか考えて一人で落ち込んでるようにしか見えないけど。」


「そんなこと思ってないし!それに、ぼっ僕はそんな古臭い喋り方しないよ!」


「え?テンプレアニヲタ陰キャなのに?」


まさかコイツ、アニヲタがみんなあんな喋り方をするとでも思っているのか?脳に花咲いてるのか?僕がそんな言葉使いなわけないだろう。


「…これだから陽キャは嫌なんだ。」


「あっ酷い!俺的に回したら怖いからね?わかってるよね?」


「…わかってるよ。だから申し訳程度にだけど君の中身のない話に付き合ってるの。」


「あー、可愛くないヤツ。」


樹がソルの顔をシラけた目で見つめながら呟く。


「なっ⁉︎僕は男なんだから可愛さは必要ないだろ…⁉︎」


「大体お前太陽(たいよう)、って名前だろ?もっと明るくいこーぜ?」


「これは…親が勝手に付けた名前だから…僕には関係ない。それに僕は穏やかな月の方が好きなんだ…。」


「はい暗いー。そんなんだからいつまで経っても女子と話せないんだわ。」


「暗くないっ!まぁ確かに女子と話せないのは事実だけど…。」


「ほらな?暗くてもいーことないんだよ。明るくいこーぜ?」


「だから暗くないって…。人と話すのが苦手なだけ。それに仮に暗いとしても、僕だって女子と話そうと思えば話せるんだからね⁉︎」


「ほー…?それは本当かねぇ?ソルくん。」


「本当だよっ!なんなら二次元あるあるの陰キャ男子が急にハーレム、みたいな展開にだって持ってけるから!」


「ぜひ見てみたいものだねぇ。お兄さんを楽しませてくれよ。ちゃんと有言実行できるね?」


樹がニヤニヤとした顔で尋ねてくる。当然僕の答えはー


「も…勿論。」


「それは楽しみだなぁ。」


樹の顔にさらにニヤけが増える。コイツ絶対頭に花咲いてる。僕はそう確信したよ、樹。

僕は高らかに。自分に言い聞かせるように言う。


「あぁ、証明してみせるよ。テンプレ陰キャヲタクでもハーレムは可能だって!」







続く。












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