句集『夏ノ幽体』
『全二十句』の拙い句集を組みました。
ほとんどが夏の句です。それと、本来は避けるべきなのでしょうが、今回の投稿は作品というよりか練習なので、自己評点とコメントを添えました。不快でしたら、無視して下さい。
作品だけでも読んで頂けたら幸いです。
*挨拶をして銘々の夏休み
季語
《夏:夏休》
〈自己評点〉●●○○○
人々の動きに着目して詠んでみました。足早に帰る人もいれば、一角に集まって夏の計画を立てているクラスメイトもいる。(学校で)最後の挨拶してから、それぞれの夏がどっと動き始めると云う句です。正直『動き』という点でみると、【挨拶をして/銘々の夏休み】と破調の句としてもいいかなと思ったのですが、初心者なので出来るだけ調は崩さずにと。
★──────────────★
*ゆく夏ややがて哀しき露天商
《夏:ゆく夏》
〈自己評点〉●●◐○○
『やがてかなしき』と聞くと私は村上春樹のエッセイ
【やがて哀しき外国語】
を連想しますが、一般的には俳句やっている人なら松尾芭蕉の句
【おもしろうて やがて悲しき 鵜舟哉】《鵜舟》
を思い浮かべる人の方が多いでしょう。私は今回、その句を初めて知りました……この句、何から何まで完璧ですよね。変化もあって想像も働くし、もちろん時間帯も分かり視覚的な雰囲気も伝わる。何より上の十三字と鵜飼(鵜舟)の組み合わせが凄まじくいいッ! それに比べて私の句は比べるのも烏滸がましいほどに浅はかなですね。あと、どうでもいいことを一つ、露天商と云う言葉の響きが好きです。
★──────────────★
*胡座かく僕の素足のカタチとか
《夏:素足》
〈自己評点〉●◐○○○
この句は、別に書いた詩の一行から取って来ました。とても短いので、その詩もついでに載せておきますね。
┌
夏の午後の空腹感が嫌いじゃないこととか
胡座かいた僕の素足のカタチのこととか
近寄ってくる猫の鬱陶しさのこととか
そんなことを考えながら今は生きてるよ
┘
こんな些細な詩です。この句を詠むにあたって、『裸足・跣』と『素足』の違いが具体的に分かったので良かったです。どちらも夏の季語なので迷いましたが、私的には午後の応接間での映像だったので、『素足』にしました。これがもし縁側だったら迷いものですね。庭から縁側に腰掛けているのか、家から縁側に腰掛けているのかで。
★──────────────★
*たかむしろ三時が頬に浮きにけり
《夏:簟・竹席》
〈自己評点〉●●◐○○
『たかむしろ』は、【細く割った竹をむしろのように編んだ夏季用の敷物】のことです。思いっきりネット辞書のコピペですが。私の家の座敷は年がらこれが敷いています。幼い頃に溢したジュースの染みがまだ残ってますね。
『や』や『かな』はよく使いますが主に動詞に付く詠嘆『けり』は個人的にあまり使わないな、と思って詠んでみました。一応ですが、句中の『が』は主格ではなく、連体格所属の助詞です。あと、『に』は完了の助動詞「ぬ」の連用形で、『けり』は前記の通り、過去ではなく詠嘆です。まあ俳句ではほぼ定型ですね。
★──────────────★
*コメ欄の嘘よ本音は初夏の風
《夏:初夏》
〈自己評点〉●○○○○
これは結構前に詠んだ句ですね。抽象的で、あんまり趣のない句ですが、なんとなしに入れてみました。『コメ欄』のように現代的な言葉を取り込んだ俳句は好きです。虚子とか子規とかの句にもハイカラなものは沢山登場しますね。まあ、『コメ欄』は今やそこまででもないか。
あとどうでもいいことを一つ、『初夏』と『夏』ってどちらも二文字なので、『夏』って詠むぐらいなら『初夏』の方がお得じゃねって考えてしまう浅はかな自分が恥ずかしい。初夏と夏じゃあイメージが違うのに。
★──────────────★
*桟橋の先までいこうか晩夏光
《夏:晩夏光》中七が字余り
〈自己評点〉●◐○○○
以前に、[息継ぎ]で桟橋の詩を書きましたね。あの詩から、詠んでいます。初め、『~~行こうか』だったのですが、『いく』の漢字を迷って「平仮名でいっかー、口語だし」と適当に詠んでしまいました。『行く』か『往く』か『逝く』か『生く』か、それぞれで全く違う句になり得ますね。それと晩夏光も便利な季語ですよね。個人的にはこの季語は口語の句によく合うように感じます。
★──────────────★
*鞦韆や天上視ゆる角度かな
《春:鞦韆》
〈自己評点〉●●○○○
鞦韆とは、要するにブランコのことです。こちらの句も初め、
【鞦韆の晴天見える角度かな】《春:鞦韆》
でしたが、ここから少しスピリチュアルな句が続くので、それに合わせて変えました。それにしても『鞦韆や』『鞦韆の』『鞦韆が』でめちゃくちゃ迷いました。この駄文コメントを書いてる間にも何度も書き換えてます(笑。
この句を詠むにあたって、『青天井』って言葉は『上』ではなく『井』なところから、あくまで比喩の言葉なんだなぁ、と再認識できました。
★──────────────★
*螢火を見ゆ幾人かに脚は失く
《夏:螢火》中七が字余り
〈自己評点〉●●●○○
螢は蛍の旧字体です。この句を詠むにあたって、旧字体と異体字の違いがよく分からなかったので調べてみました。どうやら旧字体は異体字に包含されているようですね。他にも私たちが筆記で何気なく使う略字や俗字も異体字に包含されているようです。まあ、漢字的に考えれば、それはそうかですね。
『足』と『脚』の違いに関しても少々誤解していたので、改めて調べられて良かったです。てっきり人間は『足』、物は『脚』だと思ってていましたが、人間でも具体的な部所によっても使い分けられるんですね(多分、周知の事実)。くるぶしより下が『足』、下半身全体のこと生物全般的に『脚』なんですね。あと、最も生物的に云うと『肢』のようです。これは、虫など昆虫にはよく使われますね。
★──────────────★
*亡くしたら彼岸の花に浮かぶ舟
《秋:彼岸花》
〈自己評点〉●●○○○
多分、今回の句集の中で最も抽象的な句ですね。
この句を詠むにあたって『槽』にも『ふね』と云う読み方があるのに驚きました。
★──────────────★
*笹舟よ流れの久遠夏終る
《夏:夏終る》
〈自己評点〉●●◐○○
『久遠』と云う音の響きが好きだったので詠みました。(久遠=永遠)に対して限りあるものを意識させる言葉を持ってくるのが良いと思い、季語に『夏終る』を使いました。『暮の夏』や『夏果や』でも良かったのですが、『終』と云う漢字が入っていた方が視覚的に対比がよく分かるので。『流れの』か『流れは』か『流れが』かで大いに迷いました。今考えると、一新して
【笹舟の流れは久遠夏は果つ】《夏:夏果つ》
でも良かったですね……というか、この方が上の句より良い気がしてきました。〇〇は〇〇、〇〇は〇〇の対句の調子が好きです。どうでしょう?
★──────────────★
*縁石を渡る涼夜のお墓まで
*お墓まで縁石を征く涼夜かな
《夏:涼夜》
〈自己評点〉●●◐○○/●●○○○
『縁石をありく』と云うフレーズの着想から詠みました。ちなみに縁石は、小学生なんかがよく渡ってる、道路の縁にある棒状のコンクリートブロックのことです。『縁』の字的に何かと何かを繋ぐ境界にあるそんな石のことです。その上を涼しい夏の夜に墓まで歩いてゆく。想像の働くように、いろいろと工夫はしてみましたが……微妙ですね。
墓という共通点だけですが閑話を一つ、自由律俳句で種田山頭火と並んで著名な尾崎放哉の名句
【墓のうらに廻る】《無季》
が大好きなんです、私。とても洗練された九文ですよね。もう、いろんなことを考えます。尾崎放哉という人生に着目するとより深い考察や彼に対する畏怖の念が湧いてきます。何故たった九文だけでここまで、世界を創れるのか不思議でたまりません。いずれにせよ、初心者が自由律、まして無季なんてやると事故になるのでやりません。挑戦としてなら、いいかもですね。青木此君楼の自由律俳句
【いろ】《無季》 や 【かほ】《無季》
は流石に、ちょっと無理があるのではと思いますが。
★──────────────★
*青天ノ霹靂 自殺兎哉。
*電車通学や 白兎の自殺。
《(兎は冬の季語だが)無季》破調の句
〈自己評点〉◐○○○○/●○○○○
うーん、特に意味はないです。これは俳句じゃないですね、何が言いたいのか分かりませんし。そう言えば最近、人気俳優の方が自殺しましたよね。有名だから取り沙汰にされましたが、一日に一体どれほどの人間が自殺しているのか、再認識する必要がありますよ、俗世は。それは決して青天の霹靂ではないですよね。ちなみに、この句は英国の漫画家アンディ・ライリーによる絵本、『自殺うさぎの本』を読んで詠みました。ブラックユーモアが利いていて(苦手な人も多いですが)面白いですよ。また、『うさぎ』ってところが良いですよね。真偽は兎も角(うさぎだけに……うるせぇ、〇ね)として、うさぎは寂しがりやだったり孤独死するとか言いますしね。
★──────────────★
*うんざりをxとおきなつやすみ
《夏:夏休》
〈自己評点〉●●◐○○
一応ですが、『~~(文字)とおく,』のは数学の決まり文句です。文字を何にしようか迷いましたが、一番一般的な『x』にしました。なんだか中学生っぽいですし。他には『うんざり』を迷いました。意味的には『うんざり』で満足なのですが、『xとおき』の後を全部平仮名、前を出来るだけ画数の多い漢字にして、雰囲気を出したかったんです。例えば、
【憂鬱をxとおきなつやすみ】《夏:夏休》
とか。句の尻が軽くなって含意が視覚的に捉えられると思ったのですが……憂鬱より『うんざり』の方がニュアンス的に子供っぽく、合っていたので悩んだ結果、そちらにしました。残念ながら、うんざりに漢字はなかったです。
ところで、『なつやすみ』と平仮名で並べると、私は某なつやすゲームを想像せざる得ません。懐かしいですね。
★──────────────★
*何時までも氷菓の棒の軋む音
《夏:(文面では)氷菓・(読みでは)アイス》
〈自己評点〉●◐○○○
これも以前投稿した[息継ぎ]の『青3』という詩の一部から、詠んでいます。なので、特に迷わずに詠みました。氷菓は当て字ですが、一応検索してみたら『ヨルシカ』さんの【花に亡霊】という楽曲で使われてました。『ヨルシカ』さんの曲はよく聴くのですが、アルバムCDで聴くので、サブスクであったり、その他の(未は)ネット配信だけの楽曲はなかなか聴きませんから……。ところで、ヨルシカの作曲&(一部楽曲での)ハモリ担当の『n-buna』さんのボカロ曲は皆さん聴きますか? 『ヨルシカ』で知った人は是非聴いてみてください。
★──────────────★
*梅雨明けは帽子を買いにいきましょう
《夏:梅雨明け》
〈自己評点〉●○○○○
この句も別に書いた詩から着想を得て詠みました。と言っても意味は全く違うものですが。こちらもとても短いので載せておきます。
┌
~梅雨明け~
そしてこの梅雨が明けたら
案山子に笠を買ってあげよう
綺麗なことだけ視ていよう
┘
という詩です。まず傘と笠が違いますし、この詩には『案山子』が入っていて、それは秋の季語だし。だからあくまでイメージを得ただけです。
★──────────────★
*海目指す鈍行が風それが朱夏
*海目指す鈍行や風吹き立夏
*海目指す鈍行の風残る初夏
《夏:朱夏・立夏・初夏》
〈自己評点〉
●●●○○/●●◐○○/●●○○○
『鈍行』は『急行』に対して各駅停車する普通電車の俗称です。もちろん『初夏・立夏』は夏の始めのことですが、『朱夏』は『青春・白秋・玄冬』と並ぶ、季節の異名です。だから、季節全期を指す季語ですね。鈍行を上五に持ってくるパターンも何句か詠んだのですが、結局これに落ち着きました(三句もありますが)。
お読み頂きありがとうございました!
どうも、語り手です! なんだか最近、小説はもとより詩もなかなか筆が進まないので、今回はド素人ながら俳句を頑張って詠んでみました。まあ、はたして私が詠んでいるものを俳句と呼んでしまって差し支えないのか不安ですが……。私は他の文芸と比べ俳句というのは、『事象と心情の関係』に重きを置くものだと思います。例えば、【挨拶をして銘々の夏休み】は事象が挨拶、心境は夏休みに対するワクワク、味はそのクラスメイトたちの身体と心の『動き』のシンクロと、挨拶をして→銘々の夏休みという、場面の切り替わりです。これが巧くなってくるともっと限定的な事象の重なりだけで、どこまでも深い心境を表現することができるのでしょう。ただ逆に、いくら文字数を消費して深い心境を重ねようと、本当の味わいは出ないし、新しい事象も予感させないと考えます。なので、あまり独創的に抽象的に詠むのは初心者は避けた方が良いように、今回の投稿から学びました。
いつもなら当て字→氷菓アイス、または難読漢字→鞦韆しゅうせん以外に読みは振らないのですが、今回は迷わず読めるように振っておきました。それと本来なら、自己評点はもちろん、長たらしいコメントも避けるべきなんでしょうが、今回は前書きにもある通り、作品というより練習なので、自分自身でも整理しておきたかったんです。結果、俳句を詠むよりコメントを書く方が少し時間かかりました(汗。。。ちなみにタイトルは後付けで、三十秒で決めました。つまり適当です。
前回、【句集『明日の春』】を投稿した際の後書きに『二ヶ月後位には、この投稿を見ていて「ああ、この時はまだ新型コロナが流行ってたんだなぁ」と、のほほんとしたいものです。』と書きました。
……残念! 多少はよくなっているのかな? まあ、学校は始まったし、また今ちょっと増えてきてるけど……気長にいきましょうか。
それからもう一つだけ、いつになるか分かりませんが多分、次の投稿から名前を改めるかもです。
ではっ、コロナがまた少しずつ流行って来ていますが、みなさん、どうぞご自愛ください。
m(._.)m
【お・ま・け】
個人的に好きな句を縦書きにしてみた↓
* *
螢 海
見 火 鈍 目
ゆ を そ 行 指
幾 れ が す
脚 人 が 風
は か 朱
失 に 夏
く
* *
縁 う
渡 石 ん
る を x ざ
涼 な と り
お 夜 つ お を
墓 の や き
ま す
で み