始動
春休みが終わり、新学期が幕を明けた。
槻城学園は出資母体が綺住財閥となる財閥系の学園だ。
私立学校ということもあり、この学校の制度は他の学校と比べると独創的であった。
先ず、学園生活の主体は基本生徒達に一任するというものである。生徒が学園生活に必要になるインフラを提供するが、学園生活内における諸活動に関して、学園側は原則口を出さないというものである。
よって、部活動、委員会活動、文化祭や体育祭、そうして修学旅行といった重要なイベントに至るまで、生徒達が自主的に計画し実行に移さなければ一切機能しない。
教師陣も、授業で勉学を教える場以外においては、生徒達の活動を見守る立場に徹する。自ら教えを請う生徒達やアドバイスを求める生徒達に道を指し示すことはあるが、進んで講釈を垂れることはしない。
一見、先生達は五月蠅くなく自由で良いように思えるだろう。だが実際は色々面倒なことの方が多い。
普通の学校であれば勉学に励みテストで良い点を取れば卒業できるのに対し、この学校ではそうはいかない。その他諸々のことに頭と体を使わないと卒業できないシステムなのである。
教師陣が学園生活に口を出さない為、必然的にこの学園内の委員会は、負う責任と権限が強くなる。しかしながら、委員会組織としての運営だけは雑事の枝葉末節まで手が回らないことが多い為、そういった枝葉末節に関しては各クラス内の有志にお鉢が回ってくることになっていた。
そして、このクラスの有志の単位がグループなのであるが、この“グループ活動”というのが非常に厄介な代物となっいた。
───何故、厄介か?
先程言った様に、この学園内では生徒会執行部を先頭に、諸々の委員会からクラス内のグループに対して様々な任務が降ってくる。そして、各グループはその任務の達成状況に応じて“貢献ポイント”をゲットする。といったシステムだ。
ここまでは、ロールプレイングゲームのクエストと報酬の様なもので厄介なことはない。
厄介な問題となるのはグループに関するルールだ。
一、グループ編成は、一年に一回のみ可能とする。
編成後、如何なる理由があっても変更は不可とする。
一、グループを構成する要員数は、最小一名とし、
人数に制限を設けないものとする。
一、グループを構成する要員は、同じクラス内の生徒に限る
ものとする。
一、グループに付与される貢献ポイントは、グループ内の
全ての要員に均等に配分されるものとする。
また、配分時の小数点以下のポイントは切り捨てるもの
とする。
一、グループ活動において、学園内で規定されるルールに
違反した場合、グループを構成する要員全員に足して、
貢献ポイントを減点するものとする。
分かるだろうか、この時代錯誤的な悪辣なルールが。
グループ内に一人でもサボる者、足を引っ張る者がいれば、他のメンバー全員が迷惑を被る仕組みだ。
最悪の回避手段として一名のグループという手段もあるが、昨年の一年間を経験した者であれば、一人で任務達成を試みることは非現実的であった。どんな簡単な任務でも、最低二人はいないと期間内での達成が不可能なのだ。
だったら、もうグループ活動を諦めて何もしないという選択肢を取る生徒が現れてもおかしくはないのだが、今のクラスで諦めた生徒は一人もいない。
この貢献ポイントは各生徒ID毎に厳密に管理されており、学内のデータベースを参照できる者であれば全生徒の取得ポイント数を知ることができた。
繰り返すことになるが、この学園は生徒による生徒の統治である。故にこの貢献ポイントは、ありとあらゆる場面において、この学園内でのヒエラルキーの基準となる恐ろしいポイントでもあったのである。
ちなみに俺は、昨年、田口と杉吉と三人でグループを組み年間取得貢献ポイント90越えを達成した。これは同学年内で上位50位に入る想定外の快挙であった。
さて、ここまで説明したところで話を冒頭に戻したい。
本日は新学期初日。時間帯は一限目のロングホームルーム中。
クラス内は過去類を見ない程騒然としていた。
その理由は大きく二つ。
一つ目は、────────────転入生の存在。
これが“ただの”転入生であればだ、騒ぎはさほど大きくならなかっただろう。
しかし────────────────────
転入生は“女”であり─────────────
そして、容姿はかなりのハイレベルであり────
そして、何よりも“ 巨 乳 ”であったのだ・・・・・
我が校の女生徒の制服はスタイリッシュをモットーとしており、狙ってボディラインを強調する仕立てとなっている。故に張り裂けんばかりの“おっぱい”が、一層自己主張する形で、クラス内に君臨する形となっていた・・・・・
多く男子生徒のが息をのみ、目の前のおっぱいに心を奪われている。どうしようもなく視線が一点に集中する。当におっぱいという魔力に場が支配された瞬間であった。
いつも俺であれば、周囲と同じように生唾を生唾を飲み込んでいたに違いない。たがこの時、皆と同じように心ときめく気持ちになれないでいた。何故か心にザラつくものを感じる。それは本能による危険予知に近い。
───なんか、この女、割り切った感があるな。
俺が彼女を見た第一印象である。
良く言えば効率的且つ現実的、悪く言えばドライといったところか。不思議なことに彼女からは「これからの学園生活を楽しみにしてます」といったような乙女チックな情緒は全く感じられない。むしろ、「仕事で“仕方なく”ここに来ました」的な冷めた心象の方が強い。
───まぁ、どちらにしろ、積極的な干渉は避けた方が無難だな。
そう、紳士な俺は“おっぱい”の誘惑などには決して負けたりしないのだっ!
───・・・・・・タブンネ
そんな俺の心の中の戯言を他所に、クラス内の男子生徒達からは卑猥と感嘆の眼差しを集め、女生徒からは羨望と嫉妬の眼差しを集めながら、おっぱい転入生の自己紹介が簡潔い行われた。
彼女の名は「陽之杜ナツカ」という。
自己紹介の後も衝撃的なおっぱい転入生の存在によりクラス内は雑然となっていたが、クラス担任の丸家先生の手腕により、なんとか静粛を一旦は取り戻すに至る。
されど、LHの議題が次に移り、クラス委員の時乗が本日中に新グループの申請を実施するようクラスメイトに通達したことで場は再び騒然となった。
───これが二つ目の理由だ。
時乗が場を取り仕切ろうと躍起になっていたが、殊の外収まる気配がない。
無理もない。昨年一年間において、グループ決めを安易に考えていたばかりに苦い経験をした者は少なくなかった。今年は慎重にと多くの者が考えていたに違いない。しかし、俺達に与えられている猶予は数刻だ。騒ぐなというのが無理な相談だ。
ちなみに本日中の申請というが、申請内容を生徒会執行部が承認するまでが本日中である。そして申請から承認までの手続きは学園内の基幹システム上で実施され、申請に使用した生徒IDは以降の申請において重複して入力することはできない。つまりグループ申請は早い者勝ちということだ。
クラスメイトの大半が忙しなく互いに掛け合う中、俺、いや俺達は至って平然であった。
そう、田口、杉吉、俺の三人は今年も同じグループでやっていくことを既に決めていた。後はルールに則り、申請手続きをするのみであった。焦る要素はなにもない。更には、俺達三人はクラス内においてオタクグループという位置づけであり、能動的に俺達と係わるようなヤツはいない、つまり今年一年の俺達の平穏は保証されているようなもので──────────────────あったのだが・・・
「ハロ─☆ハロー☆」
───くっ、またお前か、俺達の平穏を乱す小悪魔めっ!
俺は、心の中で思わず悪態をつく。
春に相応しい陽気な声の主は、望月摩耶であった。
「「あれ、姉さん、どったの?」」
望月は、姉御肌的なところがあり、いつの間にか、田口と杉吉から、姉さんと呼ばれていた。
俺自身はこれからの展開を薄々勘付いていたが、田口と杉吉は、これから望月が口に出す内容など微塵も想像できていない状況だ。
「私達も、田口くんや、杉吉くんのグループに入れて欲しいかなぁ~。てへっ☆」
と軽く田口や杉吉にウィンクしてみせる望月。
───なにが「てへっ☆」だっ!この小悪魔めっ!
田口と杉吉は、状況が呑み込めておらず、完全に固まっている。
俺にとっては嫌な想定の範囲内。田口や杉吉にとっては青天の霹靂。
俺達三人は自分達が通常から逸脱する価値観の持ち主(変人)であることは自覚していたが、自分達の身の丈というものも弁えていた。だから自分達が学園生活において女性と共に行動することなど、期待もしていなければ夢にも思っていたかったのである。
二人がフリーズしているので、致し方なく俺が望月に確認することにした。
「あのな、望月。俺達が受ける依頼は皆が極力やりたがらない、校内清掃や学内清掃や紛失物探し等、ポイントが低い割には手間が掛かるものがメインだ。お前、それで満足できるのか?」
───どうだ。望月。お前は性格的に地味で面倒なことは好まないだろう。
彼女は良くも悪くも華やかであり、華やかであるものが好きなのだ。俺は望月に再考を促す。
彼女の目が少し細まる。いつになく真剣な表情の望月。小悪魔の思考タイムだ。
一拍おいて、彼女の返答は───
「それでも、いいよ。」
───な・ん・だ・とっ!
俺は、今までになく自分が追い詰められているのを感じていた。ここで彼女がグループに入ることを容認すれば、確実に自分達の平穏が崩れると本能が告げている。
だが、だがである。ここまで相手に確認しておきながら、「やっぱり嫌です」とは到底言えるものではない。それは己の矜持に反する。
俺はさり気なく、田口と杉吉の二人に目をやる。二人共なんとかフリーズから回復したようである。
「なぁ。カミヤン。」
「んっ?」
三人の中で一番インテリジェンスな杉吉が俺に反応する。(ちなみに「カミヤン」は俺のあだ名である。)
「僕らが受けている依頼の報酬ポイントは5ポイントのものがほとんどだろう。姉さんが入ったところで、一人当たりの配分は・・・」
───!!!!
俺は本能的に杉吉の発言を遮った!
「ストーーーーーーーーーーーーーップ!!!」
───駄目だっ!杉吉!それは以上は言ってはいけないっ!それを言ってしまえば、俺達は・・・
だが、事、既に遅し・・・
俺は見てしまった。望月の口の端が吊り上がり悪魔の笑みを浮かべている様をっ!
───望月めっ!ここまで計算していたのか。本当に抜け目のないヤツめっ!
「い・い・よ・ね。神久良くん?」
心なしか望月の声のトーンが重い。
「わかった・・・これから宜しく頼む・・・」
俺が望月に降った瞬間であった───のだが・・・
───何か、重大なことを忘れていないか?俺?
───・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
───そういえば、あいつ「私“達”」とか言って・・・
「おいっ!望月!おまえ、私“達”って?!」
「おーーい。『なっつん』。いいってよ~~~。」
望月が誰かに向けて手を振る。
───おいっ!『なっつん』って誰だよっ!そんなヤツ、このクラスにはいねぇ・・・
そうして、望月が目の前に連れてきた人物こそ、
「・・・『なっつん』さん?」
「陽之杜ナツカです。」
おっぱい転入生の「陽之杜ナツカ」さんであった───
───槻城学園、屋上
時間は少し経ち、その日の昼休みとなる。
俺は他のグループメンバー四人からIDカードを受け取り、シンクライアント端末からグループ申請の手続きを行った。生徒会執行部のメンバーは昼食時も生徒会室にいることが多い為、早ければ昼休みが終わる前に申請内容が承認されるはずだ。
俺はIDカードをメンバーへ返す。
陽之杜の学園案内も兼ね、望月から昼食の誘いがあったが、陽之杜をグループに加えたことにより、男子生徒達からのヘイトが大幅に向上し周囲の視線が痛くなったこともあり、俺達三人は昼食の同行を丁重に断つた。
昼食の件では協力できなかったものの、望月の社交性には感嘆せざるえない。
特異性があるということは周囲から孤立する可能性も高くなるということであり、クラスの皆が陽之杜から受けている印象を敏感に察知し、俺達という人畜無害(?)なグループに放り込んでみせた。
俺から見て陽之杜は決して隙のあるような人物ではない。それなのに望月は短時間で陽之杜の信用を勝ち取ってみせ愛称で呼べる仲にまでなった。
望月と陽之杜の間でどういったやり取りが為されれたのかは分からないが、結果を見れば流石と脱帽するしかない内容だ。
とは言え、、俺達三人が今回の件で失ったものが大きかったのは事実だ。
既に、「神久良が望月を使って転入生を篭絡しようとしている」と一部の輩が囁きだしているらしく、しばらくは周囲からの風当りは強くなりそうだ。
田口や杉吉は、新たな“おっぱい”───ではなく、魅力的な女性の出現に再びフリーズしていたが、今は平常運転に戻っている。
こうして俺達はいつもの三人に戻り、屋上の定位置で弁当を食べながら束の間の安息を満喫している状況だ。
───教室には居づらかったため、屋上に逃げて来たというのが本心であるのだが。
ふと気づくと、端末から転送されたメールが携帯に入っている。グループ申請が承認された通知であった。
「グループ申請、無事に通ったぞ。」
「おお、それは何より。」
田口は相槌を返し、杉吉は言葉を返すよりも前に端末を開いている。杉吉は学内にいる間は常に端末を持ち歩いていた。
「美化委員から学内清掃の依頼出ているけど、どうする?」
新学年開始から一週間は、各部が新入部員の獲得に躍起であり、学園内はいつも以上にゴミが散乱することになる。美化委員としては、猫の手も借りたい状況に違いない。
───ん、新入部員?・・・新入生?俺、また何か重大なことを忘れていないか?
───駄目だ。今日は朝から衝撃的なことが多すぎて、思いだすことができん・・・
「どうすると言ってもなぁ。姉さん達に無断で決めるわけにもいかんだろ。」
俺が呆けていると、田口が杉吉にアシストを出す。田口は直感的に行動するタイプであるが、その直感は道理に沿っていることが多く、行動よりも思考が優先する俺や杉吉は田口の行動に良く助けられていた。
田口の言うとおりである。望月達にやる気があるかは別として、勝手に話を進めるわけにはいかない。同じグループとなった以上、彼女達の合意を得て事を進める必要がある。
俺が「そうだな」と頷いていると、再び携帯がメール着信を知らせる。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・げっ!マジ?」
そのメールは、俺にとってあまり歓迎するものではなかった。
送信元は“風紀委員”である。
二人が、怪訝そうに、こちらを見る。
「あ、いや、風紀委員から、呼び出しのメールだった。」
「おお。」
「例の件の審議結果?」
“風紀委員”というキーワードで、二人は何の件で呼び出しが掛かったか察したようだ。お蔭で説明が省けて助かる。
俺は甲騨との一件に関して俺視点で事実をまとめ、メールで風紀委員に送っていた。甲騨の件では直接介入してこなったが、風紀委員はこの学園内における暴力沙汰に関しては非常に五月蠅い。何故ならば、彼らの特権とは校則に則り自由に暴力を振えることであり、彼らの特権を脅かす存在を決して許さないからだ。
故に俺は例の件の直後、己にやましいことがないことを証明するためにも、自発的に風紀委員へメールを送っていたのだ。
これはグループ活動においても、杉吉や俺がよく使うテクニックの一つである。グループ活動における日々の活動内容を依頼元の委員会へメールで送り、俺達の活動の正当性を学園内の基幹サーバー内に記録として残すことが狙いである。これをやられた相手側は貢献ポイントのダンピングができなくなるという算段だ。
さて、風紀委員からの呼び出しなのだが。
───できれば、メールのやり取りだけで済ませたかったな。
「すまん、俺は放課後風紀委員会室へ行く。望月達との会話は任せてもいい?」
「おお、任せとけっ!」
「問題ないよ。カミヤン。」
快く返事をしてくれる田口と杉吉。本当にいつも助かる。
───さて、後は、風紀委員の件をチャチャと片付けて・・・ん?
「・・・お兄ちゃん」
突然、背後から、「お兄ちゃん」と呼ぶ声が聞こえる。
───!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
瞬時に背筋が凍り付き、金縛りにあったように見動ぎが取れなくなる!
思い出した。思い出してしまった!そしてできれば、このまま忘れていたかった・・・
“俺は、今日のお昼、真希と一緒にご飯を食べる約束をしていたのである”
───まずいっ!まずすぎるっ!!!
俺の体温は急激に下がり、顔が真っ青になり、冷や汗が流れまくっている。
妹の真希はわかりやすいぐらいの身内贔屓だ。そんな真希が身内であっても決して許さないことがある。
それは・・・
“裏切り”だ───────────────────────────
信頼している身内であるからこそより一層許せないのだ。
───コワイ、コワスギル。後ろを振り向くのが恐いヨーーーーーーーーーー!
甲騨の件も、これからの風紀委員のことも、面倒だと思ったことはあっても、恐いと思ったことは一度もない。だが今は違う。本当に恐い。マジで恐くて体が動かないのだ。
───考えろ!睦己っ!この場を穏便に切り抜ける方法を考えるだっ!お前ならできるはずだっ!
自らを奮い立たせ、窮地を脱するための策を考える!脳をフル回転させる!
だが、相手はそんな猶予を与えてくれなかった・・・
「・・・お・に・い・ちゃ・ん?」
再び背後からドスのきいた声が聞こえる。
───駄目だ・・・観念するしかないっ・・・
恐る恐る背後を振り返る俺。
そこには確かいた。いたのだ!仁王様がっ!
仁王立ちになり、口は笑っているが、目が笑っていない仁王様がっ!
仁王様の両手には、お弁当包が一つずつ握られている。もちろん、その内の一つは俺のお弁当包である。今朝、妹が張り切って作り過ぎた為、通常の2倍の量があるお弁当箱だ。
俺が振り向く以前に、真希の形相を目の当たりにしていた田口と杉吉の二人は、真希のあまりの迫力に顔が青ざめている。
「睦己、おまえ・・・・・・・・・・・・」
「うゎぁ・・・・・・・・・・・・・・・」
絶句する、二人。
分かる。分かるよ。「おまえ」の後には、「なんてことしでかしたんだ」を言いたいのだろう。だが、その場の空気の重さに二人とも口にすることさえできなかったのだ。
この場の分子活動が止まり、周囲が凍り付いたように時間が停止する。今、この空間を完全に支配してのは一人のみ。仁王様ただ御一人だ。全ての生殺与奪は仁王様の手に握られている・・・
───苦しいっ・・・まるで、息ができないようで苦しいっ・・・
(師匠が言っていた、呼吸法の大切さ。今ならよく分かる・・・)
しばし、沈黙が続く────────────────────────
田口と杉吉を見れば、限界が近い、顔が真っ青だ。
というか、俺はもう限界だった。これ以上、この沈黙に耐えられるわけがないっ!
意を決意したその時────────────────────────
「「「申し訳ございません!!!」」」
俺達三人は同時に頭を下げていた。
田口と杉吉が、俺を無理やり屋上に誘ったという形で、一緒に謝ってくれているのだ。
───おまえら、本当にええやつや。
真希に対する恐怖と友への感謝で年甲斐もなくマジで半べそになる俺。
その後、真希が作ってくれた俺の弁当を、三人で分割して食べることを提案したのが、それは真希に受け入れて貰えず、結局俺自身が更に二人前のお弁当を食べる終えることで何とか真希の怒りを鎮めることができたのだった。
そして・・・・・・お腹が苦しく、午後の授業に全く集中できなかったことは言うまでもないことである・・・・・・