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"序章"

読んで頂ければ幸いです


「どうして!? 私の事が嫌いになったのですか? 悪い所があるなら直しますから...」

「そういう事じゃないよ。君の事も一生嫌いになんてならないだろう。ただ...疲れたんだよ」

「王の密命がまた届いたというのに逆らうおつもりか? それにまだ完全に世界が平和になった訳ではない。冒険者として困っている国や民を見捨てる気か!?」


ヒトに頼られるのは嫌じゃない

でもそれに甘んじてしまうヒトは好きじゃない

お人好し? 確かにそうだ

でも...限度はある


「密命? 関係無いね。国は恥ずかしく無いのかねぇ...一冒険者に国の事案を任せる事に対して」

「何を言っている? 確実に任務を遂行出来る人材を遊ばせておくことこそ王にとって、いや国にとって愚行であろう。強い力にはそれなりの責任が伴う。貴様はこの世界で最上位の冒険者としての自覚は無いのか!?」


俺を勝手に完璧超人の様に讃えるな

俺は普通に旅がしたかっただけだ

色んな仲間と出会い 色んな場所へ行き

色んな体験がしたかっただけなのに...


「..........すまないな。でも、竜王神様との約束を違えるつもりはないから安心してくれ。俺は俺のやりたいようにやりたいんだ」

「ふざけるな!! そんな事を国が許すと思うのか? 極刑に値するぞ!?」

「誰が俺を処罰するんだ? 弱い国力で俺を縛る事が無理なのはお前が一番よく分かっているだろう?」

「..........しかし!!」


どうしてヒトはそんなにも強欲なんだ

冒険者は何でも屋では無い

そんなモノは俺のしたい事じゃない


「国を敵に回す事になるんだぞ!? もう貴様は冒険者稼業も続けなくなる。貴様の生き甲斐では無かったのか? 世界の危機に誰が立ち向かうと言うのだ!?」

「だから言っているだろう? なんでもかんでもヒトに頼るな。自分の身は自分で守れと」

.....

国王がどんなに頭を下げてももう聞くものか

世界の危機? そんなモノ、自分達で何とかしろ


俺はもう決めた

俺は“鍛冶屋”になる

でも只の鍛冶屋じゃない

俗世間から離れた場所で静かに営もう

もし“俺”を見つけられた時は、別の場所に移ればいい


偶然出会ったお客に最適な武具を

偶然は必然

その偶然から新たな戦士が生み出されるならば

それは願ったり叶ったり


それくらいは赦されるだろう?


<=======================>


あれから5年程経って...



そろそろ今日も開店するとしよう

いつものように誰も来なくても良い

今までの依頼で一生何もしなくても暮らしていける金を手に入れたからな

かといって魔物を狩って飯を確保するだけの生活にも流石に飽きてくるな...その都度色んな武器作って試せるのはいいけど...

そんな事を考えながらとある山の中腹に建てた小屋の扉を開けると身の丈に似合わない大剣を背中に携えた少年が此方に歩いて来る


「...その小屋はお兄さんの家か何かですか?」

「あぁ、これは適当に建てたものだがもう5年経つから結構ボロボロになっちまった。まぁ家...兼、工房なんだけど...」

「工房ってお兄さんは鍛冶屋か何かですか?」

「鍛冶屋を少々」

「...こんな山奥で鍛冶屋を?」

「あぁ」

「...世の中には色んなヒトがいるんですね」

「まぁ、俺はちょっと特殊だけどね」

「あの、もし良かったら此処で少しの間休ませては頂けませんか?」

「別に良いけど...君、若いのに礼儀が正しいね」

「はい、父がこの【エジピュ】王国で騎士団長を務めていて、その父から男子たるもの常に誠実さと謙虚さを忘るるべからずと教わりましたから」

「へぇ〜、良いお父さんだねぇ」

「はい」

「でも何で君はこんなところに?武者修行?」

「いえ...その父から此処の山奥に棲まう魔獣・サウザンドベアを倒してこいと言われて...」

「それって...もしかして.........コイツ?」


俺が小屋の中から既に毛皮にしてしまった熊型の魔獣を引っ張り出すと


「はい、その魔獣...え!?」

「あっ...悪りぃ、昨日の晩飯にしちまって...」

「...いえ、良いんですよ。でも鍛冶屋さんなのにお強いんですね」

「まぁ、俺みたいな鍛冶屋は自分で材料とかを仕入れに行くからな。街の鍛冶屋と違って」

「あの、もし良ければ僕に剣術の稽古を付けて頂けませんか?」

「いや、それは悪いよ。妙な癖がついても良くないし...君の剣は王国騎士団...式なんだろ?俺じゃあ参考にならないよ」

「そ、そうですか...」

「でもまぁ、これも何かの縁だ。その身の丈に合わない大剣...俺が新調してやろう」

「えっ、悪いですよ。それに僕、お金はあんまり持ってなくて」

「良いんだよ。お客第1号って事でタダで作ってやる。俺はまだ若いけど鍛冶のウデなら誰にも負けないぜ。それに俺の作る武具は使い手を選ぶ。君に成長が見られないなら剣は君を拒むだろう」

「そんな剣が作れるのですか?」

「あぁ、作れるとも。まぁ、大船に乗ったつもりで少し待ってな」


俺は小屋の奥に展開した工房にて鍛冶を始める

街の鍛冶屋で扱われている武具では納得がいかず、10歳の頃から自分で武具を作り旅をしていた

つまり鍛冶を始めて15年しか経っていないが、俺の腕前は鍛冶業界で世界最高品質を誇るドワーフ族が白旗を揚げる程だと思っている


程なくして最高の大剣が完成する

名は...まぁ何でもいいや

出来上がったソレを少年に手渡すと少年は歓喜していた

俺も嬉しい限りだ


「ありがとうございます。この御恩は一生忘れません、王国に戻り何か代金に代わるモノを...」

「いいよそんなの。それより、俺の事は他言無用にしてくれ! 俺は静かに暮らしたいんだ」

「え...は、はい」


その後、少し試し斬りをしてから少年は下山して行く

その後ろ姿には将来大物になるオーラが漂っているように思えた


<=========>


数日後、小屋に向かって来る一団が見えてくる

俺は千里眼でその一団を観察すると王国騎士団っぽい格好をした騎士が数名とこの前の少年が先だって歩いていた


もしやあの少年が教えたのか?

いや、俺は少年の誠実さを信じたい

恐らく少年の大剣を見て父親か誰かが問い正したのだろう

そんな事を考えていると騎士団は小屋の前に到着し、小屋の扉を叩く


「大勢で押し掛けて済まない。私はエジピュ王国騎士団団長『カルヴァ・ジェスティー』である。数日前ここで息子が世話になったと聞き参上つかまつった」

「.....」

「息子からも貴殿が静かに暮らしたいと聞いてはいるが、この剣を見るに相当の腕前を持つ鍛冶屋である事がわかる」

「そりゃどうも」

「用件なのだが、国王様から我等騎士団の装備一式を提供して欲しいとの書状を持参している」

「あー..........お帰りください」

「なっ、国王の書状であるぞ!? 何の理由も無しに拒否すると言うのか?」

「...息子さんに聞いたと言われましたよね? 静かに暮らしたいと? それを無視するおつもりですか? それに俺はここの地方には全く関わりの無い者なんで、いくら国王様の命令?であろうと聞く義務とか無いんで」

「では何故鍛冶屋を営んでいる!? 鍛冶屋であればその力を奮ってこそでは無いのか!?」


.....

またか...またこうなるわけか

あの少年に剣を打ってやったのは尚早だったか

こんなにも早々に『時空移動』を使う事になるとは...


「店主!? 聞いているのか!? いつまでも扉も開けず話す気か? ..........おいっ、聞いていないのか!?」


勢い良く扉を開ける騎士団長

しかしそこには何も無く

あたかも最初からそこには何も存在していなかったかの様な光景が広がっていた

奥に一つ扉があり、騎士団長は扉を開けて絶句する

扉の先は断崖絶壁

騎士団長は狐につままれた感覚を覚えていた


「本当にここに鍛冶屋があったのか?」

「はい、父上。もし無かったのならばこの大剣はどう説明がいきましょうか?」

「...国王にどう説明すれば良いやら」


撤退を余儀無くされた騎士団は城へ戻り国王に包み隠さず全てを話した...


「..........その話が本当であれば、我等はトンデモナイ失態を犯してしまった可能性がある」

「陛下...トンデモナイ失態とは?」

「騎士団長であれば聞いた事はあるだろう。かつて数十万いた冒険者の中で群を抜いた存在がいた事を」

「存じております。かの者とは十数年前、【アドゥベロエ】で開かれた闘技大会にて相見えました...齢8つでありながら自らの倍ほどある大人をいとも容易く斬り伏せていく姿に恐怖を覚えたものです。かく言う私もその斬り伏せられた1人でありますが」

「そう、その者こそ件の鍛冶屋ではないかというのが余の見解じゃ」

「なんと...!? あの鍛冶屋があの...!?」

「うむ...しかし、忽然と姿を消したと言うのならばもうこの近くへは訪れる事は無いだろう。世界は彼に頼り過ぎたのだ...それが彼にとって苦痛に感じてしまった様だ」

「再び会うことは叶わぬのでしょうか? 息子に拵えたこの大剣の礼をしっかりとしないまま会えずじまいでありますから」

「.....礼には礼を尽くさんとな。騎士団長よ、貴様の息子に指令を下す」

「我が息子にどの様な!?」

「構えるでない。1人で無謀な事をせよと言っているわけでは無い。冒険者と成りて、各地を回って彼とコンタクトを取るというものだ」

「冒険者でありますか...しかし息子は騎士見習いでありますから冒険には不向きかと...」

「貴様は自分の息子を信じて居らぬのか?」

「...!? いえ...わかりました。息子を連れて参りますので改めて...」

「うむ、連れて参れ」



「国王様、しかとこの身に刻みました。必ずや、かの鍛冶屋殿にーーーーーーー



かくして、少年は冒険者と成りて旅に出た

旅の道中、心強い仲間と出会い色んな場所へ訪れ、そして..........10年の年月が流れた




“序章” 完


読んでいただきありがとうございます。

続きも執筆中ですのでよろしくお願いします。

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