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張りめぐらされた庭

 こんなこともあった。


 庭に植えたサクランボの木がかなり大きくなった頃、信二はカヨに頼まれて鳥よけの網をかけてやった。

 ところが、数日後の朝、信二はけたたましい峰子の悲鳴で叩き起こされたのだ。

「あの網に! 鳥が絡まってる!」

 あまりの騒ぎように信二は慌ててサンダルをつっかけ庭に走り出ると、確かに、かけたばかりの網の中程に、何か灰色の塊がかかっている。

 近寄ると、それは田舎でよく見かけたヒヨドリのようだった。

 灰色の羽がねじ曲がるように網に絡まり、暴れるたびに白い細かい羽が舞い散る。

「気持ち悪い、早く取って捨ててよ!」

 生き物が苦手な峰子はすでに涙目だった。「ほら動いた!」

 その騒ぎの脇を、するりと通り抜け、木へと向かって行く小さな影があった。

 脚立を小脇に抱え、小さなハサミを手にしたカヨだった。

 ふたりが見守る中、カヨはそっと鳥の真下に脚立を立て、そこを上がっていく。

 カヨは網の上から鳥を押さえながら

「ほら、もう大丈夫だ。もう来るんじゃねえよ」

そう声をかけてやって、ハサミを構えた。

 鳥はかけられた声の調子でか、手つきの優しさゆえか、じっと大人しくしていたが、網が切られて脚に絡まった糸くずも取り除かれたとたん脚をぴょんぴょんと蹴り上げ、カヨが拡げた手のひらからぱっと薄曇りの空へと飛び上がり、それから住宅街の間を縫うようにいずこともなく姿を消した。

「……どこが、キモチワルイんだろかねぇ。イキモノなのにねぇ」

 小声で歌うような節で、脚立から降りたカヨはわざわざ峰子の脇をかすめて家に入って行った。

 信二はおそるおそる峰子の横顔を覗こうと首をひねった、が、ひとあし早く峰子はくるりときびすを返し、大股に玄関へと向かっていた。

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