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第87話 もっと強く


「すごい……」

「なんだあの強さ……」


 私の隣で目の前の光景を見て唖然としている人達が、そう呟いているのが聞こえる。


 先程、エリックに言われた通りに二つ空いていた道の一つを、氷の壁をまた作って塞いだ。

 そっち側も何人か相手の兵士や魔物が入ってきていたけど、こっち側の兵士が総出で手伝ってくれたからなんとかなった。


 これであとはエリックが行った空いてる道の方でしか、敵はこっち側に攻めてこれない。

 だからそちら側に敵が多く募るはずだから、激しい戦闘になると思っていた。


 だけど、違った。

 空いてる道に来る兵士は限られている。

 一気に来るとしても五人程度。

 こちら側にはもっと数がいるので、魔法を打てる人が少なくなってるとしても対処できる程だった。


 なぜこんなに簡単に相手を倒せているのか?


 味方の兵士達はそんな疑問を抱く。


 私は知っている。

 なぜこんなに事が簡単に進んでいるのかを。


 しばらく経って、相手の兵士が空いた道を通り抜けることが少なくなってきたので、追撃しようとこちら側からそこを抜けて敵を倒しに行く。


 そこで、味方の兵士はなぜこんな簡単に済んでいるのかわかっただろう。


 私や他の兵士が見たのは、空いてる道を塞いでいる死体の山。

 そして、その奥でいまだに敵の兵士達を蹂躙している、エリックの姿だった。


 百人以上はいる敵のど真ん中。

 そこに一人で剣を振り、敵を斬り伏せている姿。


「なんだあの人、格好を見ればこっちの兵士だってわかるが……!」

「リベルト副団長、じゃないのか?」


 騎士団に入ってまだ一ヶ月のエリックの顔を知っている人は少ない。

 だからあれだけのことを出来る人は、副団長のリベルトさん以外いないと考える人が多い。


 だけどリベルト副団長は左腕がない。

 今目の前にいる人は、遠くにいても両腕があることがわかる。


「誰なんだ、あれは……!?」


 今こんなことを思うのは不謹慎かもしれないけど、私はなんだか嬉しくなってしまう。


 私のエリックが、他の人に驚愕されて、評価されている。


 今までは村の中で一番強い、という評価だけだった。

 それでも、私の中ではエリックが世界一強い、カッコいい人だったけど。


 他の人にも認められるのは、とても嬉しい。


 私の家族、エリックはかっこいいでしょ?

 エリックは強いでしょ?


 隣を見ると、味方の人達はエリックを見ていまだに呆然としている。


 あっ、あの人、エリックのことを見る目が熱っぽい。顔もなんだか赤くなってる。

 認めるのは嬉しいけど、惚れちゃダメだから。

 うん、あの人は要注意。顔覚えたから。


「お前ら! 何をボサッとしている! あの者に続け!!」


 指揮している人がハッとして、ようやくそんな指示を出した。


 そしてその指示でこちら側の兵士達は、エリックに続くように敵の兵士や魔物を攻撃し始めた。


「氷の壁を背にして戦え!」


 私が作った氷の壁。

 敵の武器や魔物が傷つけて少し崩れているけど、まだまだ健在だ。

 それを背にすれば背後から攻撃を受けることはない。


 そして、この氷の壁を死守すれば王宮に攻め込まれずに済む。


 私や、他の魔法を使う人達が氷の壁を背にして魔法を放っていく。


 すでに味方と敵が入り乱れて戦っているので、さっきみたいに大きな魔法は撃てない。

 敵の兵士や魔物を狙って魔法で殺していく。


 私も相当な数を倒しているが、どれだけ多く見積もってもエリックには及ばない。


 空いていた道を埋めるほどの死体を築き、さらに数え切れない程相手を斬っている。

 それも、敵が何百人といる中に突っ込み、たった一人で。


 私はこの一ヶ月、魔法騎士団に入って強くなったと思う。

 アンネ団長やビビアナさんから魔法の指導を受けて、村にいた頃より深く魔法について学べた。

 この氷の壁も、一ヶ月前だったら出来なかった。


 だけど、まだまだだと実感した。


 いまだに相手を斬り伏せているエリックの姿、背中が遠くに見える。


 私が目指すべき場所は、あそこだ。


 エリックの、隣だ。


 魔法を使う者だと、こんな乱戦状態でエリックの隣に立つのは難しいかもしれない。

 だけど、絶対にそこへ行く。


 私の目標は魔法騎士団に入る前も、入った後も変わってない。


 この戦い、エリックが来てくれなかったら危なかった。

 エリックがいたからこそ、この氷の壁を最大限に活かせている。


 もっと、強くならないといけない。


 エリックの隣に立ちたいから。

 あの背中を、守りたいから。


 ああ、だけどやっぱり、剣もやっとけば良かったなぁ。

 そうすれば、今にでも飛び出してエリックの隣に立てるのに。

 私に剣を教えようとしてくれたディアンおじさんを止めたお母さんとセレナ叔母さんを恨んでしまう。


 だけど私にはエリックにもない才能、魔法がある。

 それだけが、私の武器。


「『刃風ウィンドソード!』」


 魔法を発動させる。

 私が十歳の頃、エリックと一緒に唱えた魔法。


 風の刃が敵の兵士の身体を裂き、その後ろにいる魔物も何体か裂く。

 この魔法も強くなった。

 だけど、もっと。

 もっと頑張って、強くなろう。



 私は魔法を撃ってから後ろに下がる。

 そして私の後ろで準備していた人が、魔法を放つ。


 エリックが来る前と同じ、良い流れで戦えている。


 このまま行けば、裏門は死守できる!


 そう思った瞬間――。



 ――後ろからいきなり、大きな爆発音と共に、激しい衝撃が私を襲った。




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