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第100話 ニーナの現状


「……どうしようかな」


 あたしはフェリクス兄さんと一緒に暮らしていた家の中で、そう呟いた。



 兄さんを殺したエリック・アウリンがこの村に来てから、一週間ほど経った。


 エリックは国が襲われているということで魔道具で帰って、連れもその後すぐに馬車で帰っていった。


 あのときにこの村に来た王女様とも話した。

 あたしが一方的に言いたいことを言っただけだけど、王女様は真剣に聞いてくれた。


 まあ、良い人だと思う。

 普通なら自分の父親を倒して王様になって、無理やり結婚させられそうになった男の妹の話なんて聞きたくないはずなのに。


 それであたしの話を聞いて王女様は帰った。


 そして、あたしは今まだこの村に残っている。


 一回襲われたから、この村は場所を移した。

 今は私の守護魔法があるし、襲われないと思うけど。


 もうこの村にいる理由は、私にはない。


 兄さんが生きていたら、この家に帰ってくるかもしれないと思っていたからずっとこの村にいた。

 だけどもう兄さんがここに帰ってくることはない。


 だからこれからどうしようか迷う。


 この村にいる意味はないけど、あたしはこの後どこに行けばいいだろう。

 特に行くところも、やることもない。


 兄さんに助けられてから、今まではずっと兄さんのあとをついてきただけ。

 その兄さんがいなくなって、あたしはどうすればいいんだろう。


 ベッドに寝転がって考えていたら、なんか少し頭が痛くなってきた。

 一度気分転換に外に出よう。


 家を出て、軽く歩き回る。


 今は夕方ぐらいで、日が沈みかけていて少し暗い。

 村の奴らももう家に入っているのか、誰もいない。


 あたしが守護魔法の範囲内から出たら、この村は魔法の恩恵を受けなくなる。

 理由もなく外に出るつもりはないから、その範囲ギリギリを歩き回る。



 この国の王都に行くのもいいかもしれない。

 お金はフェリクス兄さんが稼いでくれたお金だけど、全然余裕である。


 エリックやあの王女様にも言ったけど、あたしももう一度この国の表と裏を見ようかな。

 兄さんも表と裏を見て王様になろうと思ったから、あたしもそこを見れば何か見つかるかもしれない。


 多分この村の奴らからは止められるけど、どうでもいい。

 弱いこいつらが悪いんだ。

 自分の身は自分で守るのが当たり前、あたしが地下街に住んでいるときに唯一学んだこと。



 そう思いながら村の周りを歩いて景色を眺めていたが、遠くの方から馬が走ってくる。

 馬の上には誰かが乗っている。


 誰だろうか、こんな時間に一人でここら辺を馬で走ってるなんて。

 この村に向かって走っているわけではなさそうだ。


 暗くて遠くにいるから見えずらいけど、結構目が良いあたしは目を凝らしてその人物を見る。


 あの容姿は……女性、かな。

 服は暗めで見えずらいけど、顔を見る限り女性っぽい。


 どこかで見たことがある、気がする。


 ……えっ? もしかして……!


 あたしは村の守護魔法の範囲から出る。

 村の守護魔法は無くなるが、そんなの気にしない。


 速く走っていかないと、あっちは馬だから通り過ぎてしまう。


 村から離れるように走って行ってしまうその人物に向かって、叫ぶ。


「エレナ! エレナァ!!」


 そこまで速くない足を必死に動かして、叫びながら追いかける。


「待って、エレナ! あたし、ニーナ!」


 こちら側の声が聞こえたのか、あちらの馬の速度が下がっていく。

 そして、止まった。


 あたしはそこまで走っていき辿りつくと、うつむき膝に手をついて呼吸を落ち着かせる。


「はぁ、はぁ……エレナ、だよね?」


 あたしの叫んだ声を聞いて止まってくれたので、おそらくそうだと思うが、一応確認としてそう問いかける。


 うつむいていた顔を上げて、馬に乗っているその人物の顔を見る。


「……うん、そうだよ。久しぶり、ニーナ」


 その人――エレナは笑って、そう言った。



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