注意:説明回
「まず、今この場にいるここは現実世界ではありません。ただし現実世界じゃないといっても空想とか別次元の異世界という訳ではありません。ここは誰かの、人間の記憶や感情を具現化した心の世界。
ありていに『心世界』って呼ばれる場所です」
「まあそんな世界にどうやって入ったとか、作ったとか、そういう構造知識はわたしにはイマイチわからないので説明を求めないでくださいね。まあどこかのドエライ科学者が中心になって開発したらしいとは聞いたことがありますけれど」
「心世界が出来たことによって、人は外部から直接的な手段によって記憶や性格をいじくれるようになりました。例えばここも誰かの記憶なんですけど、この学校の存在を消してしまう手段もあります。
そうなるとこの心世界の部屋主はこの学校の事を完全に忘れてしまう事になります。精神だって相手の大事な経験や思い出っていう記憶を消せば変えてしまえます。逆に、経験したことのない記憶だってこの心世界では創り出せたりもできる」
「そういう事ができてしまうのがこの心世界という奴なのです。これがどれくらいヤバいのか、記憶のなくしたセンパイでもわかる事でしょう。ですので、わたし達のような組織が生まれたのです」
「心世界を利用して悪事を働く。それは昨今の犯罪やテロと言った手段とは次元が違います。
どんな兵器でも防ぐことは出来ないでしょう。でも、だからと言って無抵抗であってはいけません。ですから、いろんな国の人が集まって、心世界を利用する悪事を防ぐ秘密結社『プロメテウス』が創立されたのです。
その一部がわたしとセンパイがいる組織『日ノ國』です」
「他の組織ですか? まあ代表格は『レヴィアタン』と『幻影集団』ですかね。
幻影の連中は正直、名乗った事も無ければ実体そのものが不確実な組織で、いる事だけはわかってるんですが正体を確かめた人はまだ誰もいない……そういう連中なのです。
ですのでわたし達の組織が勝手に名付けた組織ですので、説明は省きますね。問題はレヴィアタンの方です。彼らは実力行使を伴って世界を好き勝手にしようという連中ですので、気を付けてください。あとは、まあ大小さまざまで私が知る限りは二十くらいのものだったと思います」
「ほかに気になる事は? あぁ、ヒカリさんの魔法みたいなのですか? わたしも必要最低限のしか持ってないんですけど、アビリティシステムっていいます。まあ携帯のアプリみたいな感覚で使える――心世界の中で使用できる便利道具みたいなものです。他にも、記憶の中を解析したり、センパイを治した修復プログラムもあります。
でもああいったシステムのほとんどは自分でシステムを構築してコードを作らなくちゃいけませんので、扱える人は限られています。ちなみにそういったシステムを作る人をクラフターとも言いますね。わたしはああいうの、全く、さっぱり、一ミリも、わからないです」
「あと特殊なプログラム『ExC』と分類される武装システムがあります。
これは本人の精神形態を形にしてしまうプログラムなんですけど、本当に武器の形で出てきます。これは完全に相手の精神を破壊するための目的で創られたプログラムですので、所持している人には近づかないほうがいいですね」
「え、わたしがそのコードを持ってるのか、ですか? 残念ですが持ってないんです。あると便利だと思うんですけど。持ってないんじゃあ役立たずと一緒? それセンパイにだけは言われたくないです」
「心世界から出る方法ですか? それは、あるにはあるんですけれど、今はちょっと……」