【破―④】
「もういいだろ、もうさんざん暴れただろ。いい加減にしろよ。お前、何が目的なんだよ!」
答えず。ただジッと僕を見つめている。あるいは睨んでいる。
「お前いったい何なんだ! ウンザリするような言葉ばかり言いやがって。お前に僕の何がわかるっていうんだ! お前は僕の親か? ああ⁉」
答えず。だが奴は僕の方をゆっくりとした足取りで向かってくる。
「なんでなにも言わないんだよ! 訳わかんねえんだよ、喋れよ! こっちに近寄るな!」
答えず。だが奴は僕の言う通りに止まり、それ以上近づくことはなかった。
「なんなんだよ、お前……。ホント、なんなんだよ……」
「ユウマ君、それ以上はいうな‼」
「お前なんか、消えていなくなっちまえよ‼」
そんな事をいうから、心無い言葉なんか出てしまうから、全部狂っちまうんだ。空澄さんの声を書き消して、僕の声はこの空間全域に届いた。
『白々しい』
「え……?」
気が付くと、闇の真っただ中に居た。
『知らないからといって、忘れてたからといって、白紙の記憶だからって、だからなんだ?
許されると思っているのか。そんな訳がないんだろ。
お前だって元凶の一部なんだから。無意識だろうが記憶を無くそうが、関係ない。一度汚れた魂は本人がどう見繕ったところで、汚物以外にはなり得ない。
お前だってもう汚物の仲間なんだぜ。一つの汚物が二つになったところで、どちらも汚れた泥の塊よ』
「なにを言ってるんだ。何が言いたいんだ? いや……お前は何を知ってるんだ」
『お前が忘れた全部を俺は知ってるし、お前に教えてやることもできる。だからいい加減、戻ってこいよ。もういい加減疲れたよ。もうさんざんだ。何をやっても晴れやしない。いや、どうせ何をやっても無駄だったんだよ。もう手遅れだったんだよ。俺たちはもうどうやったって、報われないし、救われない。だから、こうして、今までの過去を文字通りに殴り捨てて、消し飛ばして、全部を終わらせようとしたんだ』
「僕には、わからないよ。何を言ってるんだよ」
『理解するのは、ほんの一瞬だ』




