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七五段 妙な因縁を感じる


「それじゃ、セリスちゃん、その子をよろしくね」

「うん!」

「ウニー」


 アシェリをパーティーから除名してアローネを加えた俺たちは、少し遅れはしたもののセリスと黒猫ミミルに見送られながら二六階層へと向かった。もちろん、俺に呼ばれたアローネが溜まり場に来てからリリムは一言も喋らなかったし目も合わせようとはしなかった。アローネのほうはちゃんと挨拶したんだがな。リリムはティアにどれだけ窘められようと無視を決め込んでいた。こりゃ仲良くさせるのは相当な時間がかかりそうだ……。


『おはよう』

『……あ、リセス。やっぱり寝てたんだな』

『うん。なんだか凄く眠くて……今もちょっと眠い……』

『……そうだったのか。疲れてたんだろうな』

『多分ね』

『何か夢は見た?』

『……ううん。あれからずっと見てない』

『……そっか』


 俺もあれから見てないから、やっぱりリセスに引きずられてあの不思議な夢を見た可能性が高そうだ。


『リセス、アローネとリリムを仲良くさせる方法とかわかる?』

『……んー……荒療治がいいだろうね』

『荒療治?』

『うん。ぴったりくっつけて、逆にもっと喧嘩させるようなやり方。色んなパーティーを見てきたけど、仲が悪いからって中途半端に引き離しちゃうと、頭の中で負の感情がどんどん溜まるのか拗らせて逆効果になってたから』

『……そうか。発散させるってわけか。なるほどな……』

『……もうちょっと寝るね』

『え……また?』

『うん、ごめんね』

『もう起きないなんてのは勘弁してくれよ』

『……大丈夫だよ』

『ちょっと間があったぞ、今……』

『大丈夫!』


 元気の良い心の声が返ってきた。これならそこまで心配しなくてもよさそうだな。


「――師匠ぉ?」

「シギルさん?」

「シギルどの?」

「シギル様?」

「あ……」


 気が付くと、二六階層の転送部屋でみんなに顔を覗き込まれていた。隣同士だったリリムとアローネがお互いに顔を見合わせた途端離れたのが面白かった。


「ちょっと考えごとをな」

「なるほどぉ……。師匠、今日こそは期待しててくださいね。絶対に成功させますからっ!」

「ああ。ほどほどにな」

「ぎりぎりまでやります!」

「……言うと思った。じゃあ、絶対に成功させろよ!」

「はぁい!」

「ティア、というわけだ。ラユルの側で《アストラルヒール》を頼む」

「はいです。この子の面倒は私がちゃんと見ます」

「えへへ、ティアさん、お願いしますぅ……」

「ラユルちゃん、厳しくいきますよ。お互いに倒れるくらいに……」

「は、はい! ゴクリ……」


 他人だけじゃなく自分にも鞭打つスタイルのティアならではだな。まあ、二人ともそこまでやるなら今度は成功することだろう……。


「その間に俺たちはこの階層の攻略を目指す。アローネとリリムは俺のサポートをしてくれ」

「わかったわ」

「……承知」


 まさに水と油といった感じの二人だが、どっちも料理には必要なものだ。これからの経験が乳化剤となり、上手く混じり合ってくれると信じよう……。






 ◆◆◆






 両脇にリリムとアローネを従えた俺は転送部屋から出てすぐ、三つのことに気が付いた。まず、崖沿いの道が少し狭くなっていること。二つ目は岩壁が今まで以上にごつごつしていること。最後に、師匠の恋人が亡くなったであろう場所がここだということ。一つ目に関してはほとんど前と一緒だからあまり注意しなくてもいいと思うが、二つ目は要警戒だ。あのごつごつした岩の中にモンスターが潜んでいるのだから。


 その名もミミクリーフロッグ。岩でできた人間サイズの蛙で、ソリッドスケルトンのように心臓が全身の岩に当たるため、遠くから《念視》で見ても判別できないほど完璧な岩との擬態化に成功しているのだ。確かにどこを見てもただ岩がせり出しているだけに見える。やつらは身動き一つせず、冒険者がかなり近寄らないと襲ってこないらしいから厄介だ。三つ目の師匠がここで錬金術士の恋人を亡くしたという事実からしても、決して油断できない階層だと言えるだろう。おまけにアローネがいるし、妙な因縁を感じる……。


「せいぜい、シギルどのの足を引っ張らないようにしてもらいたいものだな、悪ケミ……」

「あらあら。それはこっちの台詞だけど……?《サモン・ホムンクルス》!」


 クールに返したアローネの頭上にあの大きな赤い蠅が出てきた。


「それ、名前なんていうんだっけ?」

「メシュヘルちゃんよ。覚えてね」

「ああそうか、メシュヘルだったか……」

「ええ。ほら、シギルさんに挨拶しなさい」


 メシュヘルが俺の頭の周りをブンブンと飛び回る。相変わらず速い動きだ。こいつは俺のことを覚えてるらしくて結構しつこい……。


「ふふ、あなたのこと気に入ってるみたい。お前、強いなって」

「……そ、そうなのか……」

「ええ。もっと成長すればカタコトだけど言葉も話せるようになるわ。それが凄く楽しみなのよ」

「おお……」


 確か、冒険者の中で一番敷居が高いジョブが錬金術士で、職業試験も魔道術士の次に難しいだけじゃなくてホムンクルスを育てるのに相当な金がかかるみたいなんだよな。こういうのを育ててみたいと思う反面、養育費とかも想像してやっぱりいいかってなってしまう。最初にある程度財力があるやつじゃないとすぐ破産してしまいそうだ。


「まったく、うるさいハエだ……」

「リリム、止めなって……」

「すまない、シギルどの。だが近くで飛ばれると羽音が不快で……」

「まあわかるが……」

「メシュヘルちゃん、こっちにおいで」


 赤蠅のメシュヘルが素直に応じてアローネの横に移動する。主人と同じように見た目と反して意外と聞き分けがいいようだ……。

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