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七一段 本当に重大発表だった


 起きてきた仲間が溜まり場に集まったのは正午を過ぎた頃だった。アシェリは起きたというより起こされた感じでまだ寝足りないのか、黒猫のミミルと一緒に欠伸してたが……。


「ふわあ……あのさ、セリスちゃんの重大発表聞いたら、また寝ていい?」

「アシェリどの、それでは夜が眠れなくなるとあれほど……」

「しょうがないだろリリム、眠いんだから……」

「もうこの際お二人とも永眠なさってください」

「「ティア!」」

「おおぅ……」


『……リセス。セリスの重大発表って何かな?』

『……なんだろう。こんな大事なときにつまんないことだったらごめんね』

『いや、別にいいよ。そうだったとしてもいい気分転換になる』


「セリスお姉さん、重大発表って、一体なんなんですかぁ? わくわくしますうぅ……」

「ふふ。ラユルちゃん、まだ、まだだよ……おあずけっ!」

「えー」


 ラユルは幼女っぽく焦らされていた。


「あと一人、来てからだよ」

「あうぅ……」


 ん? セリスは誰か来るのを待ってるのか? あ、そういやアローネがいたっけ。でもセリスは知らないはずじゃ……。


『……もう一人仲間ができたんだよってセリスに言ったんだった』

『なるほど……』


 ちゃんと覚えてたんだな。急いでアローネに連絡しないと……。


「――ウニャ!」


 ん? ミミルが颯爽とゴミ箱から下りて入口のほうに歩いていったと思ったら、そこにアローネがいた。まさか向こうから来るとは……。


「あら、クロム。こんなところにいたのね……」

「ウニッ……」

「え……」


 ミミルがアローネに抱かれて凄く心地よさそうにしている。名前まで付けてるし、あの懐き方を見るにここで飼育していたのは彼女だったっぽいな……。


「新しいお仲間さん!? お姉さん、この子の飼い主なのー?」

「そうよ。元々は仲間が飼ってた黒猫だったんだけど、その子が亡くなってからは私が引き継いで育ててたの」

「そうなんだ……じゃあ、ミミルじゃなくてクロムって呼んだほうがいいのかな?」

「色んな名前があってもいいと思うわよ。私はクロム、お嬢ちゃんはミミルで」

「うん! 私はセリス、よろしく、お姉さん!」

「よろしく、私はアローネよ」


 もう仲良くなってる。理想の姉妹って感じだな。本来ならラユルもああいう風になってたんだと思うと不思議だ。今じゃ立場が逆だし……。


「おのれ、悪ケミ! ここに何をしに来た!」

「「リリム!」」


 リリムがアローネに食ってかかろうとしてアシェリとティアに止められてる……。ああいうことがあったから仕方ないとはいえ、この子だけは露骨に喧嘩腰だ。


「ん? フレンド登録でシギルさんがここにいるってわかったから挨拶しに来たのよ。悪い? それにしても、まさかここが溜まり場だなんて思わなかったわ……」

「ならば帰ればよい! ここに貴様の居場所などない!」

「あらあら。随分な嫌われようだこと……」

「リリム、よしなって。もう仲間なんだから……」

「そうですよ、リリム。いくらなんでも大人げないです……」

「私は認めない! 断じて!」

「……だーかーらー、あなたが認めなくても私を追い出す権限なんてないよねー」

「ぐぬぬ……」


 参ったな……この二人の仲をなんとかしないと溜まり場の空気が悪くなってしまう……。


「それじゃ、こうする? 正規メンバーの座を賭けて私と外で決着をつけるとか……」

「望むところだ、悪ケミ!」

「も、もうやめてくださいぃ!」

「……ら、ラユル……?」


 ここで意外にもリリムとアローネを黙らせたのはラユルだった。涙ぐんで口を真一文字に結んで、いつにも増して真剣な顔だ。とはいえ見た目が幼女だから迫力はまったくないが……。


「この神聖な溜まり場でこれ以上喧嘩するなら、シギルさんの一番弟子であり、お嫁さんでもあるこの私が許しませんっ!」

「……奥方どの……」

「……お、お嫁さん……? こんな小さい子が……? ウプッ……」

「あ、悪ケミめ、笑うなんて失礼だぞ……ク、ククッ……」


 アローネに釣られてリリムまで笑い始めた。……何はともあれ場が収まったみたいだな。よかった。ラユルはわけがわからないといった様子で呆然としてるが……。


「……うー、なんだかお腹空いてきちゃったからもう発表しちゃうね」


 ……セリス、まだ引っ張るつもりでいたのか。そういやもう昼食の時間帯だったな。


「そろそろご飯にするか。で、どんな発表なんだ?」

「んーとね、この大きなお家に来た頃、シギルお兄ちゃんに言われたことを思い出して、あの人たちの話をこっそり聞いてたの」

「……え……ま、まさか……それって……セリスをナンパしてきたお兄ちゃんや、怖い人に蹴られてた可哀想なおじさんがいたところ?」

「うん! そしたら、もうビーチまで行ってるってー」

「……な、なんだって……!?」


 本当に重大発表だった。例のボーナスステージのビーチかよ。まさか、そんなところまで行っていたとは……。ってことは、やつらは五一階層から六十階層まであるビーチステージのいずれかにいるということになる。事実だとすればかなり差が開いてしまってるが、よく考えたらあれから一カ月くらい経ってるわけだし、ルファスの強さを考えたら当然か。だからこそあんなに良いところを溜まり場にできてるわけだしな……。

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