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五七段 これも何かの縁かもしれない


 ホムンクルスを失った悪ケミストを仲間が見捨てて去っていく様子が、なんとも哀愁を誘った。戦力として判断されなくなったらすぐポイ捨てとはな。仕方がないとはいえ、若干同情してしまった。……っと、いつの間にか例の三人組に囲まれてしまっていた。


「本当に、スカッとしたよ! 転移術士さん、ありがとう!」

「私などのために、本当に感謝してもしきれないほどです、転移術士どの……」

「尊敬しています。転移術士様……」

「……ああ、よかったな」

「「「はい……」」」

「……帰れないんだが……」


 思わぬ形で《微小転移》の弱点を発見してしまった。微小というだけあって範囲が狭いから、こうして近くを固められると動けなくなるんだな……。


「転移術士さん、ねえ頼むよ……あたしたちの仲間になっておくれよ!」

「何卒、お頼み申し上げます、転移術士どの……」

「転移術士様……どうか仲間として同行させてください。二人ともこんなですけど、私がカバーしますから……」

「「ティア……」」

「な、なんですか二人とも、その冷たい眼差しはっ……」

「……ちょ、ちょっと考えさせてくれ」

「「「はい!」」」


 まさか、またこうして彼女たちに誘われることになるとはな。これも何かの縁かもしれないが、どうしようか……。


『リセス、どうしようか』

『……いいんじゃない?』

『でも、俺たちの行く道はどう考えたって裏街道だからな。そこにこの子たちを巻き込むべきかどうか……』

『んー、でもシギル兄さんがいなかったら、多分この子たちはあの錬金術士に殺されてたと思うし、むしろそこを心配するくらいなら一緒にいたほうがいいのかもね。それくらいシギル兄さんは強いし、彼女たちもよくわかってるよ』

『そういう考え方もあるか……』

『うん。ダンジョンじゃ命なんて幾つあっても足りないくらいだしね』

『……ただ、俺たちのやろうとしてることを知ったら、どう思うかな……』


 俺たちの主な目的はダンジョン攻略っていうより、髭面の殺し屋を含めたとあるパーティーの皆殺しだからな。俺にとっては恨みのある相手でも、彼女らにしてみたら違うだろうし……。少なくとも喜んで手伝おうなんて気にはなれないだろう。また仲間に裏切られるのも嫌だし、それならいっそここで関係を絶っておくというのも手だ。


『彼女たちを信用できないのなら、最初に殺し屋だって名乗ってみたら?』

『え……』

『その反応次第で仲間にするかどうか決めたらいいと思う』

『……わかった』

『……あ、レイドっていうのはまだ名乗らないで』

『ああ』


「……あのさ、みんなに一つだけ言っておきたいことがあるんだ」

「う、うん……」

「遠慮なく言ってもらいたい。覚悟はできている……」

「もし転移術士様がこの中で一人だけを選ぶというなら、ここでみんなとお別れになりますね……寂しいですけど、それも運命ですから。アシェリ、リリム、元気でいてくださいね……ぐすっ……」

「「ティア……」」

「ひ、一人だけなら回復術士の私に決まってるじゃないですか……。あくまでも仮定なので睨まないでください……」


 ……誰か一人を選ぶなんて発想はなかった。その条件だと確かに回復術士を選ぶと思うが、まさに仲良し三人組って感じだし引き離すのも可哀想だから、俺ならゼロか三人を選ぶかな。


「もし俺が殺し屋なら……どうする?」

「「「えっ!?」」」


 ……みんな口をぽっかりと開けて驚いてるが、怖がってる様子はない。


「……す、凄い……! そういやそんなダークな空気あるよ、あんた……!」

「うむ……。確かに貴殿からは尋常ではない雰囲気を感じましたので、そういう事情のある方だとは思っておりました……」

「お強いですものね……。やりそうな感じはします……」


『リセス、なんか憧憬の視線すら感じるんだけど、本音だと思う?』

『……んー、何か隠してる感じはまったくないね。ラユルの反応に似てた。殺し屋について少しでも詳しかったら憧れなんて覚えないし、必ず表情のどこかに恐れが出るよ』

『そういうもんなのか……。じゃあ、レイドっていうパーティー名も変えなくていいかな?』

『うん。というか、この様子じゃ知らないと思う……』


 有名な殺し屋レイドも知らないくらいなら、まったく心配はいらなそうだな……。


「じゃあ、みんな俺のパーティーに入ってくれ。要請を出す」

「「「はい!」」」


 加入要請が全員に受諾され、これで俺のパーティーはちょうど満員の5人になった。こういうところからも、妙に縁を感じるんだよな……。


「……あ……」


 歓喜の声に包まれつつ、俺ははっとなった。そういや、ラユルはどうなったんだ……?《無作為転移》が決まったなら別の場所に移動してるだろうし、まったく成功してないってことだよな。ってことは、まさか途中で倒れて――。


「――《中転移テレポート》!」


 急いでスキル構成を弄って例の場所まで飛ぶと、ラユルが岩壁に凭れてぐっすりと眠っていた。


「……師匠ぉ、えへへ……もー、ダメですよう……」

「……」


 心配してたのが馬鹿らしくなるほどニヤニヤしちゃって、一体どんな夢を見てるんだか……。

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