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五一段 これで転移術士の印象も少しは良くなるはずだ


「……う……?」


 いつの間にか倒れてしまっていたラユルが起きたのは、空に赤みがさしてきた頃だった。たまには外の空気もいいと思って目覚めるのを待ってたんだ。成功率が物凄く低いことに気が付くまで無理をさせすぎたかもしれないが、熟練度はなんと既に5まで上がっていた。Sクラスのスキルをたった数時間で5まで上げるなんて、さすがに予想外だった。師匠が俺に驚いていたように、俺も弟子に驚くような展開になるとは。ここまでノーコンだと力を制御する必要がある《微小転移》習得は難しいだろうが、それを補って余りある才能を感じる。歴史は繰り返すのか……。


「ラユル、おはよう」

「ラユルちゃん、おはよう!」

「お、おはようです、セリスさん、師匠! 私、倒れちゃったんですね……」

「ああ。夕方からダンジョンに行こうかと思ってたが、明日にするか?」

「いえ、行きます!」

「お、おいおい……ラユル、本当に今から行くのか? もう少し休んだほうがいいと思うが……」

「大丈夫ですっ! 絶対に成功させたいので……!」


 ――というわけで、早速起きたばかりのラユルとともに十六階層へ向かい、《無作為転移》を使わせてみることにした。その間ほかのパーティーに邪魔されたくないので、なるべく目立たない場所――隅にある岩の陰――まで移動する。周囲に何匹か青白い骸骨を見かけたが、やつらはノンアクティブなので手を出さない限りは安全だった。


「……《無作為転移テレポート》! はぁ、はぁ……」


 ……だが、ラユルの目が虚ろになるまでやっても、一向に何か起きる気配はない。やはり、《無作為転移》というのは成功率自体ほかの転移系スキルよりも断然低いんだろうな……。


「――《ホーリーガード》!」


「……ん?」


 声がした方向を見てみると、女の子三人組のパーティーがいて、その一人の褐色肌の女聖騎士クルセイダーが骸骨の群れに囲まれているのがわかった。《ホーリーガード》によって物理ダメージを受けつけない状態だが、四方からモンスターに揉まれているような状態なため、金色の長髪が乱れまくっているのがわかる。


「あ、集めすぎだよ、リリム!」

「最後の一匹をブーメランで釣ろうとしたら、骸骨の塊に当たってしまって……すまん、アシェリどの!」

「ティア! あんたもびびってないで早く処理して!」

「わ、私、実は寝不足で疲れていまして……ひ、《ヒール》ッ!」


「……」


 おそらく仲間の前衛が釣ってきたモンスターを押し付けられた形なんだろうが、確かに集めすぎだ。この十六階層を彷徨うソリッドスケルトンは、魔法、物理攻撃に対する耐性、ライフともに高く、聖属性魔法攻撃に属する《ホーリーブレス》、または《サンクチュアリ》等の中位、上位スキルが効果的だが、青いツインテールを揺らす低身長の女回復術士ヒーラーがヒール砲くらいしか使えず、近くにいる女戦士ファイターも黒いポニーテールと斧を振り回して戦ってるが空振りが多くて処理にもたついてるし、あの遅いテンポじゃいずれ《ホーリーガード》も途絶えて決壊してしまうだろう。というか、たった三人でよくここまで来られたもんだな……。仕方ない。こっちに流れてきても困るし、俺が片付けてやるか……。


「ラユル、少し休みながらでいいから」

「はい、師匠ぉ……!」

「ちょっとそこのパーティーがピンチみたいだから手伝ってくる」

「はーい……!」


 かなり辛そうだが、ここはなんとかラユルに頑張ってもらうしかない。


「《微小転移テレポート》――!」


 聖騎士の前に出ると、その肩まで乗っていたスケルトンを含めて一気にバラバラにしてやった。こいつらの心臓に当たる部分は全身の骨そのものだから、それを砕くしか倒す術はない。今更だが、《微小転移》が攻撃魔法として認識されないのは大きすぎる。


「た、助かった……! 魔道術士ウィザードさん、ありがとう!」

「かたじけない! 魔道術士どの!」

「感謝です! 魔道術士様!」


 三人からお礼を言われたが、なんとも複雑だ。魔道術士が魔法で片付けたように見えたらしい。ここは転移術士の名誉のためにもはっきりさせないとな。


「残念ながら俺は転移術士テレポーターだ。超攻撃型のな……」

「て、転移術士だって……?」

「なんと。転移術士に、まさかこんな凄い技があるとは……」

「ほー、超攻撃型の転移術士ってそんなに凄いのですね。脱帽です……」


 みんな驚いてる様子。これで転移術士の印象も少しは良くなるはずだ。超攻撃型なんて俺とラユルくらいだろうけど……。


「それより、いくらなんでも溜めすぎだ。決壊したら死ぬのはお前たちだけじゃないかもしれないんだぞ……」

「転移術士さん、ごめんよ……」

「も、申し訳ありません。最終的にあれだけ溜まるとは思わなくて……」

「全部この二人が悪いとはいえ、私からも謝ります。ごめんなさい……」

「「ティア……」」

「に、睨まないでください。事実じゃないですか……」

「……」


 ……まあ三人とも頭を下げてるしいいだろう。


「というか、なんで三人でこんなところに?」

「……そ、それは……抜けられちゃってねえ……」

「抜けられた?」

「はい。リーダーのアシェリどのがよく寝坊して遅刻するからと、呆れて二人も……」

「う……」


 女聖騎士がなんとも気まずそうな顔をしている。この見た目からして元気そうな子がアシェリっていう名前のようだ。


「コホンッ。転移術士様、私が説明いたします……」


 回復術士の子が呆れ顔で一歩前に出てくる。ティアって呼ばれてた子だ。


「アシェリのずぼらすぎる性格のせいで、主力だった魔道術士と弓道士アーチャーがほかのパーティーに引き抜かれた格好なのです……」

「……なるほどなあ」

「なので困っているのです、転移術士様……よろしければうちのパーティーに入りませんか?」

「お、ティア。そりゃいい提案だね、あたしからもよろしく頼むよ、転移術士さん! リーダーも今日からあんたでいいよ!」

「アシェリどの、リーダーというものをもっと重く捉えるべきだとあれほど……」

「今はそんなのいいから、リリムも早くお願いしなよ!」

「……っと、確かに。私からも是非お願いしたいです。どうか転移術士どの、ご一緒に行かせてはもらえませんか……」

「……」


 困ったなあ。三人とも性格は悪くなさそうだが……って、あれ? 視界が歪んでいく。これは……まさか……。

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