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四五段 俺にしかできないことをやったほうがいい


「うぐっ……」


 弓道士の攻撃を避けていたら、剣士のやつがとうとう倒れてしまった。《ラッシュアタック》もとっくに切れてて、酔っ払いみたいな鈍さだったからあまり気にならなかったが。


『シギル兄さん、多分そろそろあの弓道士にハートを使われる。まずいかもしれない……』

『えっ……ハートって、《心眼》のことだっけ? それを使われたらリセスでも避けられないっていうのか?』

『ぎりぎりでかわせると思うけど、掠る可能性も充分にあるから……。もしそれが毒矢だったら確実に死ぬ』

『……そ、それって……』

『遠距離なら向こうのほうが一枚上手ってこと。今はラユルを連れて離脱したほうがいいと思う』

『いや、やる』

『……シギル兄さん……もしかして……』

『ああ。厳しくなかったら修行じゃない』

『やっぱりね……ってことは、代わるんだよね?』

『もちろん』


 俺には殺し屋レイドの真似はできないが、それは逆も然り。彼女のような相手の読みを外していく巧みな避け方は到底できないから、それに並ぼうとするより俺にしかできないことをやったほうがいい。というわけで、俺は着地したあと動きを完全に止めた。


『し、シギル兄さん……!?』

「――《ヘヴィーアロー》!」

『早く避けて!』

「《微小転移テレポート》!」

『……え?』


 俺はその場を一歩も動かなかった。唸りを上げて飛翔してきた矢の軌道を、目睫付近で《微小転移》を使ってずらしてやったわけだ。それでも本当にぎりぎりだった。こめかみのあたりがスースーするし、今にも口から心臓が飛び出しそうだ。やつの《ヘヴィーアロー》とかいうスキルは命中精度だけじゃなく威力も抜群で、《イリーガルスペル》がなかったら確実に死んでいると思えた……。


『シギル兄さん、さすがだね。まさか、矢を《微小転移》で動かすなんて思わなかった……』

『ああ、俺じゃリセスみたいに上手くは動けないから、あれしかないと思って。でも、結構危なかったけどな』


《ヘヴィーアロー》とかいうスキルによって放たれた矢は、あのコルヌモールのような加速力があった。あの経験がなかったら、きっちりずらせたかどうかは怪しいところだ……。


『シギル兄さん、見て、あの弓道士、凄くがっくりしちゃってる』

『……ああ、相当ショックだったっぽいな……』


 あの弓道士、地面に膝をついたまま立てなくなったのか、聖騎士の女と回復術士の男に両脇を抱えられていた。それでもこちらを油断させるための芝居かもしれないと思ってしばらく注意深く見ていたが、そんな気配を微塵も感じさせないほどの落胆ぶりだった。まるで、全身の骨を抜かれてしまったみたいだ……。


「――お、覚えてやがれ!」

「……あ……」


 剣士のやつ、いつの間にか起き上がったかと思うと、退却していくパーティーのほうに駆け出していった。もう合流しそうな勢いだし、さては死んだ振り状態で逃げるタイミングを見計らっていたか……。


『シギル兄さん、追いかけなくていいの?』

『……っと、そうだな。聖騎士の仇を取らないと……』

「――し、師匠おぉぉ!」

「……ラユル?」


 悲壮な顔のラユルが《テレキネシス》でこっちに向かってくるわけだが、すぐにその理由がわかった。女王蟻が天井を這ってこちらに向かってきていたのだ。しかも、激怒状態の変形した姿だった。転移術士が火の魔法を使えるわけないし、おそらく近くで出現したものの放置されたボスが火柱に当たり続けて激怒し、さらにラユルを見つけて追いかけてきたんだろう。


 やつにはスチームバットやコルヌモールほどの猛烈なスピードはないはずだが、やたらと不気味で迫力もあるせいで物凄く早く感じてしまう。それと同時に、やつが来るのがもう少し早かったらあの名射手と挟み撃ち状態になっていたかと思うと背筋が寒くなった。


「《微小転移》――」


 ラユルを庇うようにして迫りくるボスの前に立ち、無理矢理ターゲットを俺に変更させる。やつは俺が横に移動した際、体を捻りながら足で掴もうとしてきたが、《微小転移》による高速移動を前にあえなく空振りに終わった。やつはああ見えて桁違いに力が強く、もし掴まれば抱きしめられるようにして徐々に潰されるそうだ。最後は女王様の大きな胸の中で死にたいと言って笑いを取る冒険者はいたが、実際にやられれば死ぬまで地獄の苦しみを味わうことだろう。


「あ……」


《念視》でいくらボスの体を見てもどこに心臓があるかわからなかったが、やつが天井から吊り下がるような形になって、その背後に回ったときにようやくわかった。そこは後ろ髪の部分だと思ってスルーしていたが、それが逆さになって露出した部分、すなわち首の後ろにあったのだ。前から見えなかったのは、首の骨で隠れていたためだろう。今心臓を取り出したが、巨体の割にかなり小さめだった。


「やりましたぁ! さすがは師匠ぉ!」


 ラユル、そう言いつつ股間を押さえてるのは……多分いきなりやってきたボスにびびって漏らしそうになってるからなんだろうな……。

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