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四十段 異様すぎると思ったがすぐに謎は解けた


『シギル兄さん、多分もうボス出てる』

『え……どこらへん?』


 しばらく休憩したあと、俺たちは再び例のパーティーの捜索を始めたわけだが、リセスの発言でボスを見つけることに切り替えた。中級者で構成されたパーティーなら、ボスを出現させるのも早いはずだからな。


「……あ……」


 彼女の指示通りの方向に《微小転移》で向かうと、うじゃうじゃいる蟻たちの中に見た目は変わらないがやたらと動きが速いのが見えた。


「……おそらくあれがボスだな」

「はい、ボスさんいますう!」

「ラユル、静かに」

「はいぃ!」


 近くの岩陰に隠れて改めて様子を窺う。……やはりボスのクイーンアントで間違いなさそうだ。属性はハニーアントと同じく地でサイズも変わらないが、俊敏でとにかくタフなことで知られている。その前には五人のパーティーによって火柱が立てられ、ボスを含む蟻の群れはそこに突っ込んでどんどん蒸発していたわけだが、あのボス蟻だけは生きていて何度も火焔の柱に弾き返されては突っ込む動作を繰り返していた。


 あとは、あのパーティーの中に例のジョブがいるかどうかだな。遠目からその様子をじっくり確認すると、前衛に男剣士ソードマン、中衛に女聖騎士クルセイダー、後衛に男魔道術士ウィザード男回復術士ヒーラー、それに男弓道士アーチャーがいるのがわかった。あの弓道士、クールな顔立ちをしていて、背が低いせいか少年にも見える。この階層で何人か同じ職は見かけたがどれも凄腕とは言い難いものだったので、もしあいつがその片鱗でも見せてくれるようならほぼ確定だろう。


「……」


 なんだ、あのパーティー。ボスが出てるっていうのに、男魔道術士ウィザードが定期的に火柱を立て直すくらいでほかの連中は何もしない……って、あ、そうか。今思い出した。確かここのボスの激怒条件は、出現してからずっと火の魔法を当て続けることなんだ。初級のボス相手に腕試ししている中級者のパーティーって話だし、わざと激怒させて倒そうっていう魂胆なわけだ。それならお手並み拝見と行こうか。


「あっ、ボスさんの姿がぁ! もがっ……」


 咄嗟にラユルの口を押さえて顔を引っ込める。《念視》で岩越しにやつらの様子を見るが、こっちに気付いた様子はない。


「ご、ごめんなさいぃ、師匠ぉ……」

「しょうがない。次は気をつけなさい」

「はぁーい」


 あれを見たら驚くのも無理はないからな。クイーンアントが赤いオーラに包まれて激怒状態になった結果、見る見る天井に届くかと思うほど膨れ上がり、さらに変形して人間の女性と巨大な蟻を合わせたような姿に変わった。といっても人間の部分なのは頭部と乳房くらいで、あとは蟻そのものだった。映像で見たことはあるが、実物を前にすると結構な威圧感を覚えた。激怒状態なのに穏やかな表情で、まったく声を発さないのも不気味さを助長しているんだ。確か、サイズが小型から大型に変わるだけじゃなくて属性も地から水になるんだよな。


 それを見越した魔道術士の男が火柱越しに《ウィンドカッター》を使い、ボスの体を悠々と切り刻んでいた。あの男、なんか常に余裕っぽい笑みを浮かべてるし、やたらと偉そうな感じで鼻につくが、魔法自体はかなり熟練度が高くて威力もあるな。しっかり《マインドキャスト》で使ってるし、定期的に更新される《ヒートピラー》、すなわち火柱もよく見るとほかのパーティーのものより相当に分厚くて持続性があり、女王蟻はパーティーに近寄れないでいた。さすがに中級者のパーティーにいるだけある。もうこの男だけで倒せるんじゃないかという勢いだが、それじゃ困る。あの弓道士の実力がわからない以上、こっちも手を出せないからな。


『リセス、あの弓道士を働かせるために、いっちょ妨害してやろうか』

『シギル兄さん、いい考えだと思うけど、どうやって?』

『俺にいい考えがある。これから実行するから見てて』

『うん』

「ラユル、ちょっとあいつらの邪魔してくるからここで待ってて」

「はい、師匠ぉ……!」


 自分で口を押さえるラユル。少しは学習したらしい。スキル構成を《テレキネシス》《微小転移》《集中力向上》《マインドキャスト》の組み合わせにすると、早速《微小転移》でやつらのすぐ近くにある岩場の陰まで移動した。


『――《テレキネシス》!』


 魔道術士の背中を押して女王蟻に献上するつもりだったが、《プロテクション》がかかっているのかまったく通じなかった。何もしてないと思っていたが、あの回復術士が《マインドキャスト》でひっそりと支援していたらしい。距離はあるが気付かせることすらできなかったし、《プロテクション》の熟練度も最高クラスなのが窺える。それでもラユルの《テレキネシス》なら行けると思うが、ノーコンだからな。切り替えて今度はボスに向かって同じスキルを放つと、若干だが位置をずらせた。その結果、《ウィンドカッター》が外れて、女王の口から大きな泡のようなものが大量に吐き出された。あれはここのボスが唯一使う詠唱のあるスキルで、触れると閉じ込められて中からは決して出られなくなるんだ。


 あ……男剣士が素早く泡を処理していたものの、追いつかずに女聖騎士の肩に泡が当たってしまい、中に閉じ込められて高々と浮き上がっていった。《ホーリーガード》をやってるうちは動けないからな……。でも、驚くべきことにこのパーティー全体から焦燥感はまったく感じなかった。危機的状況だというのに、この溢れ出る余裕はどこから来るんだ……。異様すぎると思ったがすぐに謎は解けた。あの弓道士がようやく弓を構えたかと思うと、周囲に漂う無数の泡すべてを一瞬にして潰してしまったのだ。……間違いない。あいつこそ十三階層でコルヌモールに一発で矢を命中させた名射手だ……。

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