表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/140

三二段 より殺し合いが巧妙化したっていう一面もある


 ラユルを抱えつつ、《微小転移》で十二階層を丹念に見て回ったが、誰もいる気配がなかった。


「いないですねえ……」

「ああ……。でも必ず見つけ出してやるさ」

「はい、師匠ぉ!」

「……んじゃ、ラユル、ここで誰か来るのをしばらく待つか」

「はーい!」


 ラユルを下ろして転送部屋の片隅に座り込む。相手が魔道術士なのは間違いない。声からして、男だということも。問題は動機だ。ボスを横取りする気なら激怒させるようなことはしないはずだよな。時間制限もあるし、リスクが大きいからだ。だとすると、やっぱり俺たちを間接的に殺しにかかってたとしか思えない。もしかして、俺のことを知ってるやつかな? それだけはないと思いたいが……。


『シギル兄さん、誰か来たよ』

『あ……』


 相変わらずリセスは反応が早い。トランスボードに五人組のパーティーが出現し、何人かこちらを一瞥しつつ、各自メモリーフォンから武器を取り出してすぐここから出ていった。俺たちについては、休憩してるか誰かを待ってる人たちくらいにしか思わなかったはず。パーティーの中には魔道術士も一人いたが、ポニーテールがよく似合う胸の大きな女の子だった。スルーでよさそうだな。


 そういや、昔転送部屋では武器が取り出せるもんだから、それでよくパーティー同士の殺し合いが起こって、それでダンジョン管理局がここで争えないようにしたとか聞いたことあるな。その結果、より殺し合いが巧妙化したっていう一面もあるんだろうけど……。


『シギル兄さん』

『ん?』

『どうもさっきのパーティーが気になる』

『……え? なんか怪しかったか?』

『うん。ちょっときなくさい感じがした』

『……』


 殺し屋の勘ってやつか。


『よし、それに賭けてみよう』

『違ったらごめん』

『そのときは、何か面白いことを言ってほしいな』

『……頑張る』


 それもある意味楽しみだ。


「ラユル、行くぞ……って、あれ……」

「むにゃ……」


 こりゃまた気持ちよさそうに寝ちゃってるな。ここなら安全だし、置いてくか……。






 ◆◆◆






「《ストームフューリー》!」


 例のパーティーはすぐに見つかった。強く吹き付けてくる風に加えて、少女の凛としたよく響く声が俺を導いてくれたからだ。近くのモンスターを駆除したあと、岩陰からやつらの様子を確認する。


 前衛に男剣士ソードマン女戦士ファイター、中衛に男聖騎士クルセイダー、後衛には回復術士ヒーラーの男と少女の魔道術士ウィザードというオーソドックスなパーティースタイル。


 ブルーバットの群れが前衛に纏わりついているが、聖騎士の切れ目のない《ホーリーガード》によって物理攻撃は無効化されていたし、その結果回復術士もパーティーの復旧作業に追われることなく、コンスタントに支援魔法を掛け続けることができていた。前衛の剣士と戦士もその場を離れることなく落ち着いて一匹ずつ確実に潰してるし、溜まってきたら魔道術士が暴風を発生させる範囲の風属性魔法ストームフューリーを使い、まとめて片付けていた。かなり息の合った良いパーティーに見える。


 一応、邪魔するやつがいないか周囲を《念視》で見て回ったが、ほかに誰かいる様子はまったくないし、何か起こりそうな感じは今のところないな。まあ名を馳せた殺し屋でも勘が外れるってことは稀にあるんだろう……。


 ――お、魔法陣が出てきた。いよいよボスが出てくるな。


「あ、ああ、あひっ……」


 ……なんだ? 後衛の魔道術士の少女が急に中腰になって頭を抱えたかと思うと、奇声を上げ始めた。おいおい、狂ったのか? ボスがもうすぐ出てくるってのに……。


「いひ、いひゃひゃ、あひひっ!」

「お、おい、どうしたんだ、ルシア……」


 側にいた長身の男回復術士が怪訝そうに話しかけるが、ルシアという少女は依然異常な笑い声を上げつつ、今度はおもむろに後退し始めた。さすがにほかのメンバーも気付いた様子で、動揺が伝染病のように広がっていく過程がここまで伝わってくる。そんなタイミングで、とうとう光を帯びた魔法陣からボスのスチームバットが姿を現した。


「バルド! きっとそいつはボスの前に臆したんだ、もうそんなのいいから支援を頼む!」

「もうっ! 早くしてよ、バルド!」


 男剣士と女戦士が後衛のほうに駆け寄って支援を要求する間、スチームバットが勢いよく飛び上がり、取り残されて最早前衛となった聖騎士の男に頭から突っ込んでいった。


「ぐおおっ!」


 そのまま岩に叩きつけられたものの《ホーリーガード》があるので無傷で済んだっぽいが、まずいのは聖騎士がパーティーから離れてしまったことだ。


「《ウォータークラッシュ》!」


 さらに想定外なことが起こった。バルドと呼ばれた回復術士の男が口元に手を置いてそう甲高い声で叫んだかと思うと、その側にいるルシアという少女が持った杖から水の魔法が炸裂し、スチームバットに向かっていったのだ。あの声、間違いない。それまで低めの声だったからわからなかったが、あのとき俺たちを妨害したやつのものだ。でも実際に唱えたのはあのルシアという女で、《マインドキャスト》を使ったんだろう。


 ……そうか、男魔道術士がいないと思ってスルーしていたが、それがやつらの狙いだったんだ。こうして二人で協力し合うことで、妨害行為が失敗に終わっても自分たちはやっていないということを証明できる。


『賭けに当たったな、リセス』

『うん。面白いこと、全然思い浮かばなかったからよかったよ』


 リセス……殺し屋レイドの勘が見事に当たっていて、その凄さも改めてよくわかった。それにしても、一体やつらはなんのためにこんなことを……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こちらの投票もよろしくお願いします。
小説家になろう 勝手にランキング

cont_access.php?citi_cont_id=83299067&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ