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二一段 ホール一階に目立ちすぎる冒険者の姿があった


「わー、この家ひろーい!」


 ダンジョン前のホールに足を踏み入れる。相変わらずうんざりするほど冒険者たちで犇めき合っているが、セリスも人の多さにはさすがに慣れたみたいだ。


『いよいよだね』

『ああ……』


 ダンジョンに行く前にまず確認したいことがある。エルジェたちは今、どの階層にいるのかということ。というわけで午前十時が近いということもあり、例の場所へと向かっていた。やつらはまだあそこを溜まり場にしているんだろうか。それとも……。とにかく行ってみて、もしいたなら話の内容を調べるためにセリスを近くに送るつもりだった。人間の森をかき分けるようにして少しずつ前に進んでいく。


 ――溜まり場が見える位置まで来たとき、ちょうど十時を知らせる鐘の音が鳴り響いた。


『……いない』


 溜まり場を変えた? それともまだ来てないだけだろうか。あるいは、もう狩りに出かけたとか……。もし変えているとなると、ホール内はとにかく広くて冒険者の数も多いから探し当てるのは一苦労だ。狩りに行く時間も変えてるかもしれないし、タイミングが悪ければ一日中探しても見つからない可能性だってある。


『シギル兄さん、掲示板を見てみるのはどう?』

『そうだな。一応見てみるか』


 もしかしたら情報を更新しているかもしれない。俺が外れたことであいつらは四人パーティーになるわけだし枠が一つ開くわけだ。そうなると、リーダーのグリフが新たなメンバーを募集するためのアピールとして現在の制覇階層情報も開示している可能性だってある。


 掲示板の周りもとにかく人だらけ。管理局も配慮してその下に端末を多く並べてあるんだが、なかなか空きが来なくて後ろから罵声や怒号が飛ぶ始末だった。それから待つこと十五分。ようやく自分の番が来て、メモリーフォンを端末に当てることができた。その際、グリフという名前を入力するのすら胸糞悪かったが我慢した。幾つか同じ名前の冒険者が出てきたものの、すぐ引っ掛かって巨大掲示板にやつの姿を含めた情報がでかでかと映し出される。これは検索した者しか見ることのできない映像だ。


『……パーティー【ディバインクロス】のリーダーをやっております。現在、メンバーは募集しておりません、だと』


 妙だ。情報がまったく更新されていないのだ。ということは、今も四人で活動しているってことか? 当然だがメンバーを募集していないのだから制覇階層も開示されてはいない。もしくは、もう既にメンバーを揃えてるから集める必要がない、とか……。


『こうなったら、地道に階層を攻略していくしかなさそうだな……』

『うん。シギル兄さんならすぐだよ』


 階層は攻略すればするほど広くなっていく仕組みだから、なるべく早くエルジェたちに追いつきたいところだ。


「……って、セリス?」

「むにゃ……」


 セリスが掲示板に凭れて寝息を立てていた。いくら肩を揺さぶっても起きない。困ったな……。このまま宿に預けてダンジョンに行くとしても、起きたら俺たちを探して迷子になるかもしれないし……。このまま起きるのを待つか、それか起きたら見てくれることに期待してメモリーフォンに伝言を残して行こうか。


『シギル兄さん、私に任せて』

『ん、ああ』

「――セリス、敵ッ!」

「はっ……!」


 宿主が交代した俺の言葉に、セリスが飛び起きて周りを見渡した。なんだ、なんだ……。


『殺し屋やってるし、いつこっちが狙われる状況になるかわからないから、こうして暗示をかけてたの』

『……さ、さすがは殺し屋ファミリー……』

「……シギルお兄ちゃん、敵、どこ?」

「ん、ああ。もう消えたけど、まだ近くにいるかもしれないから気を付けて」

「うん!」






 ◆◆◆






「わー……!」


 セリスが窓に両手と顔をくっつけて喜んでる。ホールの三階にある宿から見る街の景色はいつ見ても最高だ。宿といっても、区切りもなく無数にベッドが並んでいるだけの部屋なんだが、料金を支払ったベッドに乗れば結界が自動的に周囲に張られる仕組みで、寝ていても誰も何もできないので安心だ。


「しばらくホールで遊んでてもいいけど、眠くなったらここで寝ること。いいね?」

「うん!」


 俺がダンジョンに行っている間に誰かに連れ去られるんじゃないかという心配もあるが、何かあればメモリーフォンで知らせるように言ってあるので大丈夫だろう。それで現在位置もわかるようになってるし、《極大転移》を使えばすぐ戻れる。


 さて、宿を取ったしあとはダンジョンに行くだけだ。


「んじゃ、行ってくるよ」

「私もダンジョン行きたいなー」

「セリスもあと三年経てば行けるようになるよ」

「ほんとー?」

「ああ」

「ねー、途中まで行っていい?」

『……だそうだが、リセス、どうする?』

『いいんじゃない?』

「それじゃ、見送りにきてもらおうかな」

「わーい! 行く行くー!」

「――あ……」


 セリスと一緒に宿を出て、中央の螺旋階段を下り始めたときだった。ホール一階に目立ちすぎる冒険者の姿があった。十字盾クロスシールドを背中に担いだ、一際体格が良くて顔もでかい男。あれは、間違いなくグリフだ……。

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