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二十段 あれこそ様々な職の冒険者たちが誇りを賭けて戦う仕事場


「わー、すごーい! いっぱいー!」


《大転移》により城壁に囲まれた町の近くまで飛び、歩いて門の下までやってきたわけだが、久々に味わう華やかな町の景色や賑やかさを前にして、セリスが大はしゃぎしていた。この子一人だけあの宿舎に残しておくわけにもいかないとリセスが言うので同行させることにしたんだ。


『セリス、嬉しそうだな。まだまだ子供だ』

『……うん。でも、ああ見えて結構しっかりしてるんだよ』

『そうなのか?』


 普通の子供のように見えたが……。


『あの子が途中で起きてきたことなんて何度もあったけど、ほとんど私に気を遣って代ろうとしなかったしね』

『どうして?』

『……それは……シギル兄さんの意地悪……』

『……』


 今なんとなくわかったが、そこはあまり深追いしないようにしよう。ああ見えて結構ませた子なんだな、セリスって……。


 派手な装いで冒険者を惹きつける街の中でも、特に目を引くのは三角錐の形をなした巨大な銀色の建造物。一つだけでも膨大な魔力を有するという凝魔石が大量に使われていて、ありとあらゆるダンジョンやモンスターを構成、管理することができるという。あれこそ様々な職の冒険者たちが誇りを賭けて戦う仕事場ダンジョンなのだ。


 俺、ついに戻ってきたんだな……。実に感慨深い。たった一カ月ほどしか離れてないのに何年振りかのように感じるのも、それだけ濃い経験をしてきたからだろう。


『……よし、早速ダンジョンに向かうか』

『待って。その前にシギル兄さんの服を変えないと……』

『え、服って……別にいいだろ。バレやしないよ』


 リセスの言いたいことはわかるが、服が同じなだけで俺の見た目はもう以前とは別人だ。エルジェたちにシギルだとバレるとは到底思えない。身長や顔だけじゃなく、声帯移植で声も微妙に変わってるからな。転移術の補正力によるものか、大分前の声に近付いてはいるが……。大体、こんな風に復活してるなんて夢にも思わないだろう。


『向こうに殺し屋がいたなら、服も変えないと絶対ダメ』

『……わかるもんなのか?』

『うん。標的が日常的にどんな服を着ているのかとか、そういうことを普段からよく観察、調査してるから、すぐ怪しまれると思う』

『……でも、あんな状態から復活できるなんて思うかな?』

『義足とか使ってる殺し屋もいるから……。とにかく標的の息の根を止められなかったんだから、その殺し屋はずっと気にしてるはずだよ』

『……なるほど』


 殺し屋として名を馳せているレイド――リセス――が言うならそうなのかもな。こっちには《イリーガルスペル》もあるしレイドもいるしで別に怖くないが、向こうに警戒されると復讐の難易度も格段に上がるだろうから、なるべくバレるようなことは避けるべきか。


『でも代わりの服がないから買うしかないな。もう一つ魔道術士ウィザードっぽい服や帽子があったんだけど、あのときに奪われちゃったみたいだし……』

『シギル兄さん、お金は?』

『……あまりない』


 ただでさえ金欠状態だったのに、エルジェたちを殺すために高価な猛毒とか買っちゃったからな。


『……私も』

『リセスも? メモリーフォンに残ってたお金はセリスに引き継がせてあるんだろ?』

『うん。でも、体を治そうって思い立ったとき、手始めに色んなポーションとか買い漁ったから、ほとんど残ってない……』

『……なるほど』


 ま、安い服ならなんとか買えるだろう……。






 ◆◆◆






 商店街の一角にある術者専門の防具屋で服を買うことにしたが、正直どれを買うべきか迷っていた。今着ている、青いローブがお気に入りだったからな。安物でなんの効果もないし少し色褪せてるが、これを着てずっと訓練してきたから愛着があるんだ。


 どれにしよう……。服の色に関してだと、転移術士は回復術士や魔道術士と比べると選べる幅は広い。


 基本的に冒険者っていうのは、欲しい職を探してる人にアピールするためにジョブによって服装を決めるから、回復術士は白、魔道術士は黒のローブっていう感じで決まっている。それに比べて、転移術士は白と黒さえ避ければ青でも赤でもいいんだ。元々あんまり求められてない職っていうのもあるが、白と黒以外のローブを着ている術者は転移術士だと思われていることが多い。ただ、誘われることもほぼない不人気職なので、その分目立たなくていいんだよな。この状況だと白、黒、青を除けばなんでもいいわけだ。


 うーん……やっぱり気が付くと青い服に手を伸ばしちゃうな。


『これなんかどうだろ?』

『……シギル兄さん、それ今の服とそっくりだよ』

『……だよね』


 ボタンの位置とか微妙に違うんだけどな……。同じ青でも、襟元から胸元にかけて黄色のラインのあるローブが目に入る。これなら前と違うし良さそうだけど、ちょっと派手かな? 魔法耐性もほかのと比べて微妙に低いし、何より高くて買えない……。


「ねーねー、シギルお兄ちゃん、こういうのはどう!?」

「ん? いいのあった?」


 セリスに裾を引っ張られて、とある服の前に連れていかれた。なんのラインも入ってない、地味な灰色のローブがそこにはあった。


「これ、俺の好きな感じの服だけど、回復術士なのか魔道術士なのか転移術士なのか、さっぱり区別つかないな……」

「でも、それがいいと思うよ! カモフラージュできると思う!」

「カモフラージュか。なるほど……」


 セリス、的確だな。リセスの言う通り、しっかりしてる。さすがは殺し屋ファミリーの一人だ。これなら転移術士かどうかも見た目じゃ判別できないし、どんな職なのかもはっきりしないから誘われにくいし、さらに地味で目立たないしで言うことなしに思えた。


『私もこれがいいと思う……』

『よし、じゃあこれにするか』


 防御力はローブだしどれも似たようなもんだが、見た目より性能を重視するエルキド工房の魔法耐性高めな服で、しかも手ごろな値段だったこともあってすんなりと決まった。

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