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エピローグ


 ここからだと、米子空港の方が近いんだけど、ちょっとした理由があって、帰りも出雲空港を利用することにしている。


 帰路のハンドルは夏樹が握っている。

「♪~♪~」

 調子外れな歌をハミングしながら、車はあっという間に松江市内に入る。お昼は海鮮料理を堪能して、時間が少しだけ余ったので、松江城の優雅な姿を外から鑑賞して。

 またあっという間に旅の最後、出雲縁結び空港へと到着した。

「なんだか夏樹が運転すると、どこでもあっという間に着いちゃうわね」

 とか言ってふざけつつ、あの水引のついた自動ドアをくぐる。


 そこにはなんと!

 オオクニさんとミホツさんがいたの。

「え? どうされたんですか」

 思わず聞くと、

「お見送りよ」

 と、ミホツさんがにっこり綺麗に微笑んで言う。そして私に近づくと、コッソリ耳元でささやいてくれた。

「ありがとう。素敵な神社だって言ってくれて」

「!」

 驚く私にニチリンさんと同じく、とっても綺麗にウインクして、ミホツさんはいたずらっ子みたいに笑った。



 実は椿と私はね、大阪空港に飛んで、今夜は京都の料亭紫水で総一郎さんと倫ちゃんに会いつつ料理を堪能して京都に1泊。

 で、明日は奈良で依子さんに会ってから帰るつもりで、もう一日お休みを取っていた。

 だから、お先に大阪伊丹空港行きの便に乗ることになっている。

 さっき理由があるって言ったのはこれ。米子空港からは、残念ながら大阪便が飛んでないのよね。

 思いがけないおふたりのお見送りを受けて感激したところで、

「じゃあ、お先」

「★市には、僕たちが先に帰るけどね。あ、総一郎と中大路によろしく」

「依子さんにもよろしく言っといて下さい!」

「OK」

 そんなこんなやり取りをして、私たちは出発ゲートをくぐって行った。

 今日乗ったのは、36人乗りの小さな飛行機。可愛いー、まるでフェアリーワールドのアトラクションみたい!


 座席に座ってシートベルトをキッチリと締める。

 窓から外を見ると、展望デッキに鞍馬くん、冬里、夏樹。

 そしてオオクニさんとミホツさんが立っていた。

 飛行機が動き出すと、5人は楽しそうに手を振ってくれる。椿と私も、向こうからこちらは見えないとわかっているけど、思わずブンブン手を振っていた。


 飛び立った飛行機は、あっという間に雲のあるところまで上昇する。

 で! そのあと! 飛行機の外を見ていた私は、思わず息をのんだ。

(り、龍?! )

 そう、建仁寺のふすま絵でみたのとそっくりな龍が、ギョロッとこちらに目を向けて、飛行機の横を飛んでいるのだ!


 ……でも、でも。


 まわりの誰1人大騒ぎしていない。え? これって常識なの? 

 なんだか思考回路が変になってる? 私。

 思わず隣にいる椿の方を見ると、「?」と微笑んで窓の外を見る。

「ねえ、あれって」

「ん? ああ、あの雲、まるで龍のシッポみたいだね」

「雲?」

「さっきまであんなに晴れてたのに」

 そうか、他の人には雲に見えるんだわ。だったらなんで? と訳がわからないまま曖昧に微笑んでいると、

「あんた以外の人には見えないようにしてあるから、安心しな」

 と、ヤオヨロズさんの声がした。

「!」

 また驚いて窓の外を見て。

「ウグッ!」

 今度こそ、大声を上げないようにするのに手で思わず口を押さえ込んだ。

 だって!

 龍の上に、ヤオヨロズさんと、なんとニチリンさんまで乗ってるのよ!

 なに、この某、昔話アニメのオープニング状態。

 思わず「坊や~よい子だねんねしな」とか歌いそうになったわよ!


 すると、ヤオヨロズさんは優雅に手など振って、言った。

「俺たちは先に京都に帰るわ。ま、暇があったらうちにも寄りな」

「お先にね」

 そんな言葉を残して、龍がグインと向きを変えて離れていく。

 と。

 飛行機がぼよん、と上下に揺れた。

「皆さま、飛行機の揺れには十分お気をつけ下さい。気流の関係ですので、運航には影響はございません」

 などと、アナウンスが入る。

 そりゃあ、龍が横飛んでたら、揺れるわよ。

 私はもうどうにでもなれ、って言う感じで、窓からこっそり2人に手を振るのだった。

 あーあ、慣れっておそろしい、のかしらね?




「わあー、ヤオヨロズさんてば、なんか遊んでますよ。由利香さんが、龍よ! とか言って大騒ぎしたらどうするんすかね」

 その頃、展望デッキで2人が乗る飛行機を見送っていた5人は、ヤオヨロズとニチリンの乗った龍が、飛行機に平行して飛ぶ姿を確認する。

「だーいじょうぶ。なんたって由利香だよ?」

「あ、そうっすね、なんたって由利香お姉様、っすよね」

 そんな2人を、いつものごとく苦笑しながら眺めているシュウ。


 なんだかんだ言う3人を眺めて、顔を見合わせながら微笑み合うオオクニとミホツ。実はこの2人は、ヤオヨロズとニチリンのお見送りも兼ねていたのだ。

 飛行機から龍が離れて行くのにつられるように、雲がどんどん移動していく。

 やがて晴れ渡った空には、一筋の飛行機雲だけが綺麗に残っていた。






ここまでお読み頂き、ありがとうございます。

いつもながら、いえ、今回は行き先が出雲大社と言うことで、いつもより不思議感あふれた『はるぶすと』でした。まだ物語は続きそうですので、遊びにいらして下さいね。

え? 鞍馬くんたちはあのあとの便で帰ったのかって?

いえいえ、実は……。

「ま、交代で運転すれば、今日中には帰り着くよね」

と言うことで、あのレンタカーで陸路、★市へ帰ったのでありました。

もちろん、週明けから『はるぶすと』は、通常通り営業しております。


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