第4話 共演饗宴
今回の出雲行きでは、2日目に島根県と鳥取県のほぼ県境にある、美保神社という神社にお詣りするため、宿泊は、2つの神社の中間あたりにある宍道湖半の宿を取ってある。
なので、この後に行く料理屋は、ここから宍道湖へ向かう途中に用意してくれているらしい。
由利香さんたちが出雲大社の参道お買い物ツアーを敢行しにいったすぐ後に、俺たちはシフォからある依頼を受けた。
「料理を、ですか?」
「はい、オオクニや他の者からのたっての希望で」
シュウさんが確認するように聞くと、シフォはニッコリ笑って答える。
実はその依頼というのが、腕のいい料理人が来るのなら、今回の宴でもいくつか料理を任せたい、と言うものだった。
そうか、やっぱシュウさんの噂はこんな所まで届いてるんだ。きっと本気の料理を作ってくれとかなんだろうな。またまた自信をなくしそうになって、俺は聞き耳を立てながらも極力聞こえないふりをして、その場をやりすごそうとしていた。
「そうですか。かまいませんが、どのようなものをお作りすれば良いのですか」
けどさ、シュウさんがそう聞いたあとのシフォのセリフが予想を裏切るものだったので、俺は後から何度も確認した位だ。
「ええ、夏樹の作る和風ランチが良いと」
「へ?」
えーと、今、夏樹って言ったよな。あれ? えーと、シュウさんの名前って、鞍馬 夏樹だったっけか? それとも冬里の名前が、紫水 夏樹?
俺はあんまりにも想定外だったので、訳の分からん思考に陥り。
「?」「?」「?」
と、頭がぐるぐるして、おまけに身体までぐるぐるしてくる始末。
「夏樹、大丈夫?」
冬里の声に、やっと我に返る。
そして、勢い込んで聞いてみた。
「シフォ! 夏樹の和風ランチって、俺の?」
「はい、他に夏樹という名前の方は存じ上げておりません。あ、ええと、オオクニからは」
と、シフォはそこで手をパッと広げて、見えない書類を確認するように見ている。
「朝倉 夏樹の和風ランチに、いたく感動した者がおり、ぜひもう一度堪能したいと申しております。……とのことです」
「へえー、誰かうちの店に来たのかな?」
冬里が面白そうに言うと、シフォは少し首をかしげて答える。
「詳細は分かりませんが、どうやらそのようですね」
「え? え? ……ええーーーー!!」
俺は驚いたのと、嬉しいのと、いや、これは夢じゃないよな、まさか俺、眠っちまったのか? と、思わず冬里の頬を引っ張ろうとして。
「い、イデデデ、……と、とうり、痛い……」
逆に冬里に頬を思い切り引っ張られる羽目になる。
「痛いんだ? 良かったねー夏樹、夢じゃないよ」
「は、はい。……はい」
と、そこで、しゃがみ込んで頭を抱えた後。
「イヤッター! 和風ランチ! 全力で頑張らせて頂きます!」
と、大ジャンプして、鳥居の前に集まっている参拝者を驚かせたのだった。
「お待たせー」
「ほーんとお待たせ、だよ。いったいどれだけお土産買ったの?」
シフォから衝撃の依頼を受けた後、他のメンバーは、表通りから少し外れたところにあるちょっと穴場の店を見つけてぜんざいを食べ、由利香さんが心ゆくまで買い物をして帰るのを待っていた。
一緒に買い物した椿はへとへとで、小上がりに倒れ込むと、ぜんざいを頼んでそれを食べ、なんとか息をつく。
「ああ、やっと人心地ついた。……で、夏樹は長いトイレですね」
と、ここでようやく俺がいないのに気がついた、と言うか、気がついてたんだけど、なかなか帰ってこないから変に思っていたらしい。
「あれ? ホントだ。なんか静かだと思ったら、夏樹がいないんだわ」
由利香さん! それはないっす。
「んーと、夏樹はね。今から行く店に先に入って料理してる」
「「?」」
2人が冬里から説明を受けると、椿は「夏樹、大喜びですよね」と言いつつ、自分も嬉しそうにしている。由利香さんはと言うと、「わあお、『はるぶすと』もついに全国展開? 」などと可笑しそうに言ったらしい。
そ、俺はもう待ちきれなくて、シフォに頼み込んで先に料理屋まで送ってもらったんだ。
料理屋と言うから、すごい料亭みたいな所かと思ってたんだけど、そうじゃなかった。
「は? ここっすか?」
建物は建物なんだけど、屋根と柱があるだけで、壁がほとんどない。部屋同士の仕切りは、えーと、これは、のれん? いや、すだれ? いや、違うな。
あ! 御簾!
そうそう、平安時代だったかの、絵とかに描かれてる、クルクル巻いて上げ下げするやつ。なんか、時代をさかのぼって貴族の御殿に来たような感覚だ。
「はい。もうこちらのスタッフは揃っているそうです。案内の方が今、いらっしゃると思うのですが」
その言葉が終わらないうちに、奥から着物のような服を着た女の人がやって来て、
「ようこそおいで下さいました。どうぞこちらです」
と、先に立って案内してくれる。
俺はシフォにお礼を言うと、勇んでその人について行った。
で、俺が料理をしている間、由利香さんたちは何をしてたかって言うと。
「で? 私たちはもう現地へ行って、上げ膳据え膳でお大臣様してればいいの?」
由利香さんがまたハチャメチャなことを言うのに、シュウさんが苦笑いして答える。
「いえ。冬里が食前のお手前を依頼されたので和菓子を、私は和食に合うワインを見繕って行くよう言われました」
「へえ」
「だから、由利香と椿も一緒に選びに行くんだよ」
「そうなの? わかったわ、じゃあ早速行きましょうよ」
由利香さんは苦もなく言ったんだけど、椿はその話しを聞いた途端、ガックリと机に伏せてしまう。
「椿? どうしたの」
「また買い物~? なんか勘弁してよって感じなんだけど」
あの椿が珍しく弱音を吐いている。
すると、冬里がうんうんと頷いて言う。
「わかるわかる。女性が1回の買い物にかけるエネルギーってさ、硬式テニスのフルセットと同じくらいなんだって」
「……そうなんですか」
青ざめて言う椿に、由利香さんは不思議そうに言う。
「ええー? 私そんなに疲れてないわよ?」
「それは由利香が、仮にも女性だから、だよ。女性は別なの」
「仮にもってなによ」
プン、とふくれる由利香さんに、ニッコリ笑いかけた冬里が、また指をクルクル回しながらしばらく考えて。
「じゃあ仕方ないか、椿がかわいそうだもんね。シュウ、和菓子とワインは僕たちだけで探しに行こう」
うわ、冬里ってば、椿には優しいんだ。
「ああ、それはかまわないよ。だったら、椿くんと由利香さんは、先に向こうで待っていて頂けますか」
「そだね。あ、ちょうどシフォが戻ってきたよ」
シフォに何度も往復させるのは申し訳ないから、と、椿は買い物に行くと伝えたんだけど、それがあまりにも悲壮な顔で言うので、シフォが思わず吹き出して「大丈夫ですよ」と、軽く了解してくれたらしい。
で、俺はそんなことなかったんだけど、椿と由利香さんはやっぱり歩き疲れてたのかな? ここへ到着するまで、ふたりして車の中で爆睡してたんだって。おかげで椿の疲れもすっかり取れたようだった。
「頑張ってるな、邪魔するけど、いい?」
厨房に入って、今日の食材を見せてもらって。たくさんの野菜と、魚はあるけど少なめだ。今日は少し海が荒れていたので、あまり漁に出られなかったらしい。でも、工夫して献立を組み立てて、ここの料理人の人たちと分担して、ほぼ、ランチは出来上がりつつあった。
「おう、椿! あの、いいですか?」
俺は他の人に了解を取って、椿を招き入れた。
「お邪魔します。……うわあ、美味そう。本日のランチは? あ、いいや、後で聞く」
「なんだそれ」
ふっと笑い合ったあと、俺は最後の仕上げにかかる。椿は邪魔にならないように、すいっとその場を離れて、手の空いた人に話を聞いていた。
全部の盛り付けが終わると、俺も話に加わった。
「夏樹の手際の良さに、皆、感心してたんだって」
「え? いや、そんなことないっすよ。俺の方こそすごいなって思って。勉強になることが多かったです。ありがとうございました」
これは心からの感想だ。やっぱり料理って、面白い。
そのあと、もう冬里のお手前が始まってるから、と椿が俺を呼びに来たんだって言うのがわかると、俺は皆にもう一度お礼を言って椿と2人厨房を後にした。
宴の広間に向かう途中、向こうからシュウさんがやって来るのが見えた。
「あ、シュウさん」
「夏樹、ご苦労様。皆、冬里の抹茶を楽しんでるよ」
「シュウさんは?」
と聞くと、手に持っていた紙袋の中身を見せてくれる。中には何本もワインが入っていた。
「わ、重いでしょ。俺が持って行きますよ」
「大丈夫だよ」
そう言って微笑むと、「私もすぐに行くから」と調理場へ入って行った。
シュウさんが調理場の入り口から「失礼します」と声をかけると、中にいた人が皆、あ、と言う顔をして、「クラマ!」「クラマだ」「シュウ・クラマ!」とか言いつつも慇懃に礼をするんだ。やっぱりシュウさんはここでも有名なんだな。
「クラマ、お久しぶりですな」
そこへやって来た料理長が、嬉しそうに握手の手を差し出しながら言った。
「はい。今日は夏樹がお世話になりました」
「いやいや、さすがはクラマのお弟子ですな。いい仕事をしてくれましたよ」
するとシュウさんは、苦笑しながら「いえ、彼は弟子ではありませんが」と言って、さっき出来上がったばかりの料理に目をやった。
しばらくそれらを真剣に眺めた後、シュウさんは満足したように頷いた。
合格なのかな、良かった~。
で、何かを探すようにあちこちに目を走らせていたシュウさんの視線が、あるところでピタッと止まる。微笑みながらそちらに行ったシュウさんは、大きなマスクにビン底メガネって言う変装の定番みたいな格好をして、素知らぬ顔で隅っこで雑用を続ける人に声をかけた。
「オオクニ、またこんな所に。皆さんにご迷惑をお掛けしているのではありませんか?」
すると、オオクニと声を掛けられたその人は、明らかにうろたえて、手をブンブン振りまくり、おまけに顔もブンブン振りまくる。
「え? オオクニ? 誰そいつ、知らないよ~。僕は忙しいんだ。だから」
ここまで言ってから、シュウさんの冷静な視線に気がついて、ショボンとしながらマスクとメガネを外した。
すると、その下から出てきたのは、ふくよかなんだけど、すごく整った顔のいい男。体型もこれまたふくよかながら、ボヨンとしてるんじゃなくて、包み込まれるような。そう、どっちかって言うと癒やし系の人だった。
でも、あれ? この人、さっき出雲大社でヤオヨロズの後ろから、チラチラこちらを伺っていたような。
そう、何を隠そう、この人こそ出雲大社の大神様、大国主命、略してオオクニ、だったんだ。
「先ほどはきちんと挨拶も出来ず、申し訳ありませんでした。お久しぶりです、オオクニ」
オオクニの前に膝をついて、胸に手を当てながら慇懃に言うシュウさんに、彼はほわんとした微笑みを見せて言う。
「またー、鞍馬はくそ真面目すぎ。今でも冬里に怒られてるでしょ?」
「はい、残念ながら」
可笑しそうに微笑んで立ち上がると、「ご依頼のワインです」と、紙袋を持ち上げる。
「お、鞍馬のお眼鏡にかなったワインがあったんだ。楽しみー」
そのあとオオクニは、聞かれもしないのにあれこれおしゃべりを始める。
「いや、ミホツがさ、★市に美味しいランチを出す店があるって聞いてきてさ、行ったら鞍馬たちのお店だったんだって。で、正体がばれると不味いから、厳重にいくつも結界と変身とを重ねて入ったって、笑いながら言ってたよ」
ミホツというのはオオクニの奥さんで、明日行く美保神社に鎮座している。そんなすごい人がうちの店に来たんだ! でも、厳重に結界張ってたんで、さすがの冬里もわからなかったんだな。
「そうですか」
「でさ、その時の和風ランチの美味しさと超イケメンにグッときたミホツが、どうしてもってリクエストしたの。ミホツってば世の淑女と同じく、イケメンに弱いからねー。あ、料理も抜群だって言ってたよ」
カラッと笑ってそんなふうに言うオオクニには、嫉妬とか、ねたみとかのこだわりは全然感じられない。さすがは神様だよね。
「その夏樹が料理するって言うから、ちょっと興味があって見てたの。あ、さっきまでミホツもいたんだけどな。もう、宴の間へ行っちゃったみたい」
「わかりました。それでは私も宴の間へ行きますが、オオクニはどうされますか?」
「この格好じゃ不味いから、着替えたらすぐ行くよ」
またほわんと笑って、オオクニは厨房を出て行った。
その頃、宴の間の特設会場では、冬里と他に何人かがお茶のお点前を披露して、出来上がったお茶は、なんと由利香さんも運んでいる!
で、俺たちが入って行くと、気がついた由利香さんが、「こっちよ」と、呼んでくれたんだ。
「由利香さん。何してるんすか?」
「だって、あんたは客人なんだからその辺に座ってろ、ってヤオヨロズさんに言われたんだけど、落ち着かないんだもの。だったら動いた方がいいから手伝いますって言って今に至るのよ」
そう言いながら、冬里からお茶を受け取って俺の前に差し出して、
「ここではあんまり作法とか気にしなくていいんですって。だから、はい」
と、そばにあった椅子とテーブル席を勧めてくれる。
「でも、なんかすごい人数っすね」
まわりを見渡すといっぱい人がいて、皆、自由に歓談しながら楽しそうに過ごしている。
でさ、後で聞いたところによると、この人たちは全国津々浦々の神様とか、その使いとか、とにかくヤオヨロズさんが声を掛けたら集まってくれた人たちなんだって。
何のために?
「いやあ、あの2人の結婚祝いをしてやりたくてな。由利香が出雲へ来るように導いたのも俺だ。で、2人のことを話ししたら、こんなに集まっちまったってわけ。ま、皆、めでたいことと楽しいことが大好きだからな」
ひぇー、神様に結婚祝いしてもらえるなんて滅多にないっていうか、ほぼ皆無だよな。これはこの2人、前途洋々だね。
抹茶で一息ついていると、お手前を終えた冬里がやって来て、すぐあとに調理場からシュウさんが帰ってきた。
で、またまたそのすぐ後に、料理を載せたお膳を持った人たちがダダーっと入ってくる。
そして、目にもとまらぬ早さで、それを広間の畳の上に、いくつもの円形に置いて行くんだ。歓談していた人は、思い思いに好きな席へ座り始めた。
「座席は決まってないの?」
「みたいだね、じゃあ、あの辺が空いてるから行こうか」
由利香さんと椿が言うので、俺たちはゾロゾロそちらへ移動しようとしたんだけど。
「おい、あんたたちはこっちだせ」
ヤオヨロズの声がして、由利香さんと椿が、金屏風の前にしつらえられた特別席へと引っ張っていかれる。
「皆さまもどうぞこちらへ」
シフォが現れて、俺たちも2人のすぐ手前にある席に座らせられてしまった。
「え? え? なんなの」
驚く由利香さんの声に応えるように、ふわりとした装束の男女が現れる。
「ようこそ、秋渡夫妻。鞍馬、それから冬里、夏樹。あれ? なんで鞍馬だけ名字なんだろ? まあ、いいかーははは」
「コホン」
「あ、ごめんごめん。今日は遠路はるばる来てもらったお礼と、それからね、秋渡夫妻への、ささやかな結婚祝いをさせてもらおうと思って。みんな、よろしくね」
驚く由利香さんと椿に、
「あ、自己紹介がまだだったね。僕は出雲大社の、……えーっとなんだっけか、あ、そうそうオーナーの、オオクニ。そして、こちらが妻のミホツ。よろしくね」
と、とっても軽い調子で自分たちの紹介をする。
すると、顔を見合わせて居住まいを正した2人が、深々とお辞儀をした。で、おもむろに顔を上げて、椿が話し出した。
「ええと、ちょっと驚きすぎてまだ思考がついていかないんですが、とりあえず自己紹介を。私は秋渡 椿、そして隣にいるのが妻の由利香です。こんなサプライズがあるとは思っていなくて。本当にビックリして、そしてすごくすごく嬉しいです。本当にありがとうございます」
そう言って、またお辞儀をした椿の後について、慌ててお辞儀する由利香さん。
「えー、そんなに恐縮しないでよ。みんな嬉しい事が大好きなんだからさ。だから堅苦しいのはやめて、料理食べちゃおう。あ、その前に乾杯だよ、かんぱーい」
お膳には、シュウさんが選んでくれたスパークリングワインが乗っていたので、皆でそれを高々とあげて、乾杯する。
「かんぱーい!」
「いや、めでたい」「楽しいのお」
「嬉し楽しじゃー」「やんや、やんやー」
そのあとは、ものすごく楽しい饗宴が始まった。
厨房の人たちと工夫して作った料理はおおむね好評で、特にミホツさんは「んんー、すごく美味しいわ」と、絶賛してくれてる、なんだか照れるな。
気になったシュウさんの反応は。
大丈夫、と言うように頷いてくれた。やったぜ!
広間の真ん中には、低めの舞台がしつらえられてて、誰がと言うこともなく、思い思いに舞いを舞ったり、楽器を演奏したりと芸を披露するんだ。俺も引っ張り上げられて、何だかわかんない踊りを見せて、皆を大笑いさせてやったんだ。楽しいー!
で、次にオオクニが冬里の前にやって来て、横笛を差し出した。
「出番だよ、冬里」
「ええー、僕、お手前いっぱい披露したのになー」
ニッコリ笑って言う冬里に怯むことなく、オオクニが続ける。
「だって、とっても舞いやすいんだもん、冬里の横笛」
ちょっと肩をすくめた冬里は、でも素直に立ち上がって舞台へと上がって行く。
そして、冬里の奏でる美しい笛の音に合わせて、まずヤオヨロズとニチリンが、そのあとにオオクニとミホツが、見る者を魅了するような優雅な舞を披露したんだ。
「そこの新婚さんも、舞を披露しろ」
皆に言われて舞台に上がった由利香さんと椿は、「日本舞踊は出来ないから」と、社交ダンスのまねごとをして、皆からヤンヤの喝采を浴びていた。
最後に、
「おい、鞍馬も来い」
ヤオヨロズが有無を言わさずシュウさんを引っ張っていく。
「ほれ、今日は祝いだ。出し惜しみするな」
と、差し出された剣を持ったシュウさんは、ちょっと苦笑いした後、すっと背筋を伸ばした。
「じゃあ冬里、悪いけど」
と、シュウさんも冬里を呼んだ。どうやら演奏してもらうようだ。
――ふええ。
ヤオヨロズと2人、見事に息の合った動きで、完璧な剣の舞をするシュウさん。
なーんか、「シュウは特別」って言った冬里の言葉が、ズンズン胸に染みてくるような演技だった。いや、冬里だって十分「特別」だけど。
そして、時間の感覚を忘れたようになった頃。
皆の共演で大いに盛り上がった饗宴は、その幕を閉じた。