-心の箱庭にメロディをー
-プロローグー
薄くて暗い、地下にあるライブハウス。時々大きなコンサートホールとか。そこに集まるバンギャル達が持って来るものっていうのは、ステージへの愛とか、負の感情とか、とにかく色々なんだ。あまり陽の目を見る事は無いのだけどでも暖かい場所なんだ。
ねえ、わたしの好きな世界と音楽の話、そして好きになった人の話を少ししてもいい?あまりね、人には理解されないんだけれど。
ヴィジュアル系バンドが好きなギャル、通称”バンギャル”を始めてから気が付けばもう7年が経とうとしていた。わたしは小さいころからそんなに長く習い事も続いたこともないし、深くハマったものも無かった。成績は悪くは無かったけど平々凡々で。高校に入ってからは部活もしてなくて帰宅後に某動画サイトであの曲を聴いてね、心奪われてから。わたしの心の箱庭の中心にはどんどん彼らの音楽が侵食していった。
所詮、田舎の高校生だったわたしは地元の小さなCD屋さんで好きなバンドのCDを取り寄せてもらうのが精一杯で、ライブに足を運ぶことは到底無理で。いわゆる”音源ギャ”であった。でもクラスで1人だけ音楽の趣味が合う子がいて、あっと言う間に仲良くなって。公私共に認める親友になるのにはそう時間がかからなかった。
わたしが生まれ育ったのは全国的に有名な豪雪地帯だったから、冬はやはり音楽聴くか本を読むか、絵でも描くか。もしくは雪遊びしちゃうとか。それ位しか高校生が出来る娯楽って無かったの。でもね、今思えばとっても良い時代だったと思う。そして高3にもなると、その中に受験勉強が加わった。進学校だったので紆余屈折あったもののわたしも親友も進路が決まり。わたしは上京、彼女は名古屋へそれぞれ別の道を歩むことになった。
お別れの前に2人で遊んだ。撮ったプリクラには好きな曲の歌詞を書き、カラオケでは2人の好きな曲を思う存分歌って。少しだけ涙して。春だけどまだ雪化粧の残る町並みに背を向けて、それぞれの道へ旅立った。勉強より、これから東京に行ったらたくさんバンギャル活動をするんだっていう気持ちを強く持って新幹線に乗って、この物語は幕を開けていく。