異世界召喚されてしまったようだ・・・
―俺には、何もない―
おっと、こういうと誤解されるかもしれないな。別にお金がないとか、そういうことじゃない。
俺には、目標、生きがい、そういったものがないってことだ。あと、特技もないし、にがてもない。
好き嫌いもなければ、他人とこれと言って関りがあるわけでもない。後者については、俺個人の意見だが‥‥
よって、こういうことを時々言いたくなる―
「あー、なんか起きねえかなぁー。」
―そんなことを言ったとたん、俺の体が光に包まれる―
「あー、なんかたてちまったか。(フラグ的な何か)」
言い忘れていたが、今は夕暮れ時で、ここは学校の屋上だ。断じて、光を周りから浴びる、もしくは俺自らが光だすなんてことはない。―はずだ。まぁ、きっとこれはあれだ、夢落ちだ。そう思って、俺の意識は途絶えた―
―目が覚めたら、目の前に女子がいた。
「俺の夢すげーな、ついに美少女を召喚しやがった。」
そう、つけくわえると、彼女はいわゆる『美少女』だった。髪は黒髪で長く腰まであるのにかかわらず、艶やかな髪質が毛先まで行き届いていて、輝いているように見える。顔はバランスがよく、さらに白い肌がそれらを引き立たせているようだった。プロポーションは、巫女服のようなものでよくはわからないが、よさそうである。
あれ?俺ってこんな饒舌だったっけか?俺はどちらかといえば、あまり喋らないはずだ。
「勇者様、この世界によくおいでくださいました。ここは、あなた様方が異世界と呼ぶ場所ございます。我々は『クロイツ』と呼んでいる世界です。わたくしの名前は、カグヤ・ヤマト と申します。失礼ですが、勇者様のお名前を伺ってももよろしいでしょうか。」
この子の名前は大和っていうのか。俺の夢やっぱりすげぇな。名前まで考えてあるよ。それに何?異世界?俺そろっと精神科探したほうがいいかもな‥‥。いや、夢は脳外科か。そんなことより、俺の名前か。んー、こういうときって夢の中の俺は実名をいうもんなのかな。
「‥‥‥‥‥」
「あの~勇者様?」
おっと、夢の俺は自動で喋らないのか。となると、しょうがない本名を名乗るとしよう。
「あー、俺の名前は大和 桜木」
「こちらでいう、オウキ・ヤマト 様ですね?」
なるほど、俺は勘違いしていたようだ。この子の名前は輝夜だったのか。向こうが知っててよかった。俺の夢だから当然か。
さてと、めんどくさいが、状況整理するか。夢だけど‥‥
ここは、牢屋みたいなところだな。だけど、窓もなければ鉄格子もない。足元に変な文字で四角く囲われているだけだ。壁にも文字があるな。でも見たことないのによく文字ってわかったな俺。あ、夢だからか。
あと、今更だけど、ほかにも女性が5,6人いる。みんな巫女服着てるな。
「勇者様、申し訳ございませんが、こちらにいらしていただいてもよろしいですか?」
「あー、わかった。つか、その勇者様ってなに?」
「申し訳ございません。先に国王様とお会いしていただけますか?その後、説明させていただきます。」
「‥‥‥‥‥えー、めんどい。」
「ではこちらへお願いいたします‥‥‥‥。」
ん?おかしいぞ、話聞こえなかったのか?夢だからか?
「え‥‥だから、めんどいって‥‥」
「‥‥‥‥‥‥」
なんか、手を出口のほうに向けて、頭を下げたままかたまってるんだけど。
なにこれ?強制?あ、夢だからやらなきゃ進まないってことか‥‥
指示された通りに進んでいくと、いかにも玉座の間、というべき場所についた。
赤い絨毯が引かれ、シャンデリアもあり、玉座に、絵画もある。何人か、いかにも文官という人たちが並んでいて、鎧を身にまとう人がいる。そして、玉座には、その後ろの絵画そっくりな王様が座っている。
「おお‥‥勇者様がいらっしゃったぞ。」
「あれが‥‥われらの希望‥‥」
などなど、いろいろなささやき声が聞こえる。ここまでくると、マジで自分が怖くなってくる。いくら普段ぼーっとしてるからといっても、こんなことを考えていたのか‥‥末期か‥‥
「皆の者、静まれぃ!!」
国王と思しき人の声がひびいた。近くで見ると、案外若い。体格もいいな。
「お初にお目にかかる、私の名はテレン・ザン・カイゼルバーン。このカイゼルバーン王国の国王をしているものです。」