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気がつけば、何も無い荒地の真ん中に一人。ただ立っていた。
自分ひとりだけが、立っていた。
――そこで気づけていたなら、どんなによかったのだろう。
どんなにか、違っていたことだろう。
結局、俺は気づけずに、絶望に震えていたのだけれど。
小さくて、健気な。
闇空に流れる、一筋の光のような。
足元に咲いた、一輪の救いの存在に。
「……残っていた、一番古いモノだ」
少年を見下ろしている、俺達。
「…………」
隣で笑う金色の男が、……どこか悲しそうに見ている。
「さて、行くか」
「……? どこへ」
「たくさん、たくさんある」
「……そんなにいっぱいあるのか」
「そうだ」
男はそういうと、俺の腕を掴んで上昇した。
「おまえは、たくさんの景色を、出来事を、人間を。見なくてはいけない」
「……」
「おまえを、取り戻す為に」