表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
時を止める能力に目覚めたとか言い出した彼女をどうすればいいですか  作者: 月立淳水
本編 時を止める能力に目覚めたとか言い出した彼女をどうすればいいですか
17/29

第四章 炎を使うピンク女にたじたじとなるの巻(4)


 あー、あれ、やばいな。メル、やばい。

 あれは死んだな。

 墓は建ててやるよ。俺の小遣いでな。


 その前に。


「メルの仇、てめえを討ち取ってからな!」


 俺が立ち上がって、かっこよくびしっと彩紗に人差し指を突きつけると、


「死んでねえよ!」


 がばっ、とメルが起き上がった。


「おおう、生きてたか。墓代が助かった」


「軽口叩けるならカズも無事だな」


 まあなんつーか、熱いのは熱いんだけど、あくまで炎だけと言うか、触ると死ぬ! みたいな炎じゃないんだよね。

 なので、多少焦げても、まあ死にはしないとは思ってた。だから心配はしてなかったのだ。小遣いの。


「こ、こら、まだ来る気!? もっとエラいのぶちかましちゃうぞ☆」


 彩紗はそう言いながらも、右足が一歩後ずさってる。


 なんだこのチャンスタイム。

 分かりやすっ。


「この私がっ! あんたの炎ごときにやられると思うな! 勝負はこっからだ!」


 メルはチャンスタイムを分かってるのか分かってないのか、立ち上がって強気の宣言だ。


 そして、俺とメルは、同時に踏み出す。

 彩紗は明らかに、まずっ、という顔だ。


 俺がまさに彩紗の肩に手を伸ばした瞬間。


「ちょ、ちょっと待って、タンマ!」


 彩紗が叫びながらしゃがみこんだ。


「た、タンマ!?」


「タンマだよ、タンマ! さ、さ、三分!」


 俺は、ぼへぇ、という音とともにため息を吐き出す。

 だめだ。この子も筋金入りのアホの子だ。


「……要するに、レベル128使っちゃった、わけだ?」


「そっ、そんなこと、しゃべるわけないじゃん☆」


 はいはい、しゃべらなくても分かりました。


「分かったよ、さっきはメルの三分待ってくれたしな」


 そして、再び親睦タイムがくれば、そこで口八丁……もとい、説得で彼女を退かせることができるかもしれないし。


 再び三人でベンチに移動。


「いやー、強いねえ」


「あは☆ でしょ☆ どう? 勝てそう?」


 なんで途端にほのぼのモードなんだよアホ二人は。


「ま、種の一つは見破ったがな」


 俺は言いながら、さっき拾っておいたマッチの燃えカスを彩紗の目の前に差し出す。


「うおは☆ すごい、もうバレちゃったの☆」


「ああ、お前の能力は、『着火』はできないらしいな。着火ができるなら、わざわざマッチは使わない」


「正解☆ うーん、わくわくするね☆」


 わくわくする要素があったか。

 ……彼女としてはあるんだろうな。何しろ全力で戦ってみたいってだけのアホの子だから。

 どこの戦闘種族だよ、という突っ込みは胸にとどめる。


「それと、着火ができないだけなら、ライターを使うはずだろ。使い減りしないんだから。でもマッチを使う、つまり、燃える『燃料』も一緒に放り投げる必要がある。お前ができるのは、『燃えているものを飛ばす』ってだけだ」


「うえ、すげぇ! 一之ちゃんって、頭いいのねえ!」


 彩紗は驚いた表情で、メルに向かって興奮を隠そうともせず話しかける。


「ま、うちの助手は、この私に及ばないまでも、なかなかのもんよ」


 メルに及ばないってことは地球で一番馬鹿ってことか。別にいいけど。メル基準でどういう風に言われても。


「何秒なの? レベル一個で」


 メルは無邪気な質問をする。

 あのなあ、誰も彼もレベル一個何秒なんて能力ってわけじゃないんだから――。


「0.2秒☆ レベルひとつで☆ だから、さっきのはめいいっぱい使って二十五秒くらい操ってたのかな? メルちゃんのは?」


「私のは、0.1秒だよ。倍も性能が違うんだあ。そりゃ強敵だ」


 ……あっさり吐いたぞ、こいつら……!


 もう突っ込みどころだらけで突っ込む気が失せる。

 何でしゃべるかな。っていうか炎操る能力も制限時間制なんだ。っていうかメルもあっさりしゃべるのかよ。っていうか時間止め0.1秒と炎操作0.2秒じゃ時間は倍でもそもそもやってることの次元が違うからね? っていうか……。


 ああ、頭が痛い。


「でも、あの炎のヘビだけは分かんないなあ。あれ、どうやってんの?」


「ふっふふーん、アレだけは、企業秘密☆ がんばって謎解いてね☆」


 企業か。お前は企業なのか。資本金はいくらですか。


 まあ、俺としてはなんとなくもう種の予想はついちゃってるんだけどな。

 この休憩が終わったら、ちゃっちゃと終わらせよう。


 もうほんと、めんどくさくなっちゃった。


「彩紗は……あ、彩紗って呼んでいい?」


「いいよ☆ もうあたしたちは強敵と書いてともと読む感じだからね☆」


 どっかで聞いたぞそれ。


「ありがと。彩紗はなんで奈々美とこなとの味方してるの?」


「べっつにー、味方とかってわけじゃなくってさー☆ なんか、ある日変な能力に目覚めるじゃん? あたしがそんなこと吹いてたらクラスで白い目で見られるじゃん? 最初は使いこなせなくて下手な手品以下だったしさ☆ でもこなとちゃんは真面目に聞いてくれてさ☆」


「そうなんだー。あの無表情ちゃんにもいいとこあんだねー」


「でも後で聞いたら、こなとちゃんも能力持ってて、でも誰にも話せなかったところを、たまたま茶道部の先輩だった奈々美ちゃんに聞いてもらって、って感じなんだって☆」


 やっぱりこなとも能力持ちか。どんな能力なのか、気になるな。


「えっ、奈々美の方が先輩なんだ!」


 あ、食いつくところ、そこですか。


「そうだよー。こなとちゃんはあたしと同じ一年生、奈々美ちゃんは三年生だよ☆」


 三年生相手に『ちゃん』で呼ぶのはどうだろう。まあどうでもいいや。


「……そろそろ、三分だろ」


 俺が言うと、メルはぷくっとふくれる。


「もうちょっとお話しててもいいじゃーん」


「さっさと勝負つけて、それからでもいいだろが」


「カズのイケずぅ」


 こんなやり取りを見て、彩紗もにゃははと笑っている。

 なんで敵と打ち解けちゃってるんだよ俺ら。


「では、第二ラウンド、スタートにゃ☆」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ