7、流星ダンス
首に、彼のネックレスをかけ、ぼくは街にいる。街は夜で、たくさんのわかものたちでにぎわっている。みんなわらっている。とてもたのしそうに。けれど、今夜のぼくはそれに嫉妬することはない。
戦うのだ。
ユウをたすけるために。
その行動理由が、ぼくの心をより強く高ぶらせる。
勝てるのか?
敵はどんなやつらなんだ。
石を使う、能力者たちかもしれない。
ユウは反乱軍にみずから身を投げた。
流星ダンスの彼が言うには、反乱軍はおそらく、ユウを人質にし、国王に近づくつもりらしい。国王に近づくまでが、まずむずかしいことだという。
ぼくにはよくわからない。
隣国も、国王も、反乱軍も。
ぼくにはなにもわからかい。
でも、ユウがひとりで戦おうとしていたという事実はたしかだ。
そして、ぼくはそれをしんじたい。
だから、ユウのために戦う。
ユウが、ぼくにもしんじられる、正義のがわの人間だと感じているから。
もしもこの世界にしんじられる正義が存在するなら、
ぼくはそれを頼りたかったのだ。
『ユウの居場所は把握している』
彼が言った。
声は、ぼくにしか聞こえない。
「どこにいるの?」
『自動車で移動している。その路上に入れ』
ぼくは人通りのすくない薄暗い路地に入る。
『手をひろげろ』
「こう? うわ!」
両手をひろげると突然、ひとりでに動きだす。ひとさし指と、親指だけ、のばした形を作る。ちょうどピストルみたいに。それの片方を、反転。そして、双方をすこし離した距離にあわせる。
四角い枠が出来上がる。
そこにビジョンがあらわれた。
ぼくはおどろいた。
(まさか、ぼくが魔法のような力に目覚めるなんて……。……まあ、すべて、流星ダンスの彼の能力なんだけど)
手の枠のなかの停止していたビジョンが、ぱらぱらと幾重もの写真を繰りかえして映しはじめる。
まさにパラパラ漫画だった。
だが、やがてパラパラ漫画は途切れないひとつのテレビのような映像をながしだす。
道路。
大通り。
一台の黒のワゴンにビジョンがちかづいていく。
ぴたり。
映像は、かんぜんに、そのワゴン車を捉えた。
内部は、見えない。
『この自動車だ』
「これにユウが乗ってるんだね?」
『そうだ』
「……まだ空港までは距離がある」
『しかし、車内から能力者の気配を感じる』
「それでも行かないと!」
『感謝する』
「感謝なんていらないよ。それに逆なんだ。流星ダンスがいるから、ぼくはいま、ユウをたすけるためにまえをむいていられるんだ!」
『そうか』
流星ダンスは、とおくを見つめるように言った。
『なら、ともにユウをたすけよう』
「うん!」
ぼくは、強くうなずいた。
ユウをたするために、ぼくは駆け出す。
走り出したその足は、軽い。
ぼくはいま、流星ダンスの能力のおかげで、魔法使いになれたような気分だった。
それはすごく、うれしいことだった。
あの存在と出会うまでは。