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流石の行方  作者: ペンギンサイン
第一話【なみだは勇気をかなえる希望のあかし】
5/9

5、学校の話はあまりしたくない

学校ではいつもボッチだった。



ボッチという言葉の意味について、ここで説明するつもりはない。



それは、学校の話を人前で口に出したくないのと相違ない。



青葉道学園は、街を通り越したそのさきにある。



つまり自宅マンションと、青葉道学園が、仙台の中心街をはさんでいるような形だ。

青葉通りという道が仙台の街中にはあるが、学園の場所はそれとはまったく関係がない。



青葉道学園に到着したぼくは、駐輪場に自転車を停めて校舎に入る。

教室につき、時間が来て、朝のホームルームがはじまる。

それがおわれば、こんどは授業の開始。

授業は様々つづき、昼食をはさみ、またつづく。

そして一日の時間割が終わると、掃除の時間だ。

今週の掃除は、廊下だった。

ぼくはホウキを持って廊下掃除をはじめたが、ほかの生徒たちのすがたはない。

ぼく以外の男子たちは、廊下のむこうでゴムボールでキャッチボール。女子たちの行方は知らない。

かなり憂鬱な時間だ。しかし、ぼくのところだけがそうなのではない。

けっしてぼくはだれかにイジメられているというわけでもない。

ただただ、掃除をサボる生徒たちがおおいだけの話なのである。

そのなかで、ぼくともうひとりだけ廊下掃除をはじめた人がいた。



うちのクラスの学級委員で、学園の生徒会長・立切リイコさんである。



立切リイコは、ホウキで床のほこりを掃きだしながら、突然、ぼくに話しかけた。



――ここでひとつ、補足すると、リイコさんはよく、いつもボッチのぼくを学園業務に利用する。まさにぼくは、彼女のお手伝いロボットだった。

……まあ、とはいいつつ、そんなに彼女と関係が深いわけではない――



「シュウヤくん」

「は、はい……」

なぜかリイコさんと話すと緊張する。

きっとリイコさんはぼくよりも地位の高い存在だからだろう。

「どうしてサボったりするのかしら……」

「そ、そうですね……」

リイコさんがふと、ホウキの手をとめ、ぼくの表情を怪訝そうにのぞきこんでくる。

「な。なんで、すか……」

「なにかあった?」

リイコさん、ぼくの顔色の変化に気づいたのだろうか。

たしかにぼくの顔色は、変わっていたことだろう。

いつもどおりの退屈な学校の時間。

しかしそれがおわり、自宅に帰宅すれば、今日はユウたちがいる。

それが、ぼくは、本当はうれしかった。

ユウのたすけにはなれないが、ぼくはふたりの存在が帰宅すればある、というだけで、すこし気持ちが楽だった。

その安心感は、まるで友達を持った気分だった。

「な、なにもないですよ……」

と言ったぼくの顔は、おそらくゆるんでいたことだろう。

「シュウヤくん」

「は、はい……」

リイコさんはすこし恥ずかしそうに、こう言った。

「いつもいろいろ、手伝ってもらっているから、なにかあったら、もしも、わたしなんかでよかったら、相談、しても、いいからね……?」


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