表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

三流ドラマのような人生。

作者: 半月

ドラマのような人生。

それは、一度は憧れたことがあるかもしれない、そんな人生。

自分の人生、平凡で何もないと思う人はいるはず。

でも、ドラマのような人生って言っても、これは三流ドラマのような人生。

三流ドラマがなぜ面白くないか?

深くは考えたことはないけど、こんなこと、起こらねーよ・・・みたいな、共感できない点が多いから?

あるいは、あまりにも似たようなストーリーが多くて、先が読めてしまうから?

私は恐らく後者だと考える。


これは、そんな、たいしておもしろくもない人生を送ったことのある人たちの話。


・・・ずいぶん前、恋に恋するような女と、女はナンパしなきゃ落とせないと考えている男がいた。

女の名は、上ヶ崎 幸(じょうがさきゆき

男の名は、保田 鉄也(やすだてつや

幸のルックスは、幸の性格とは異なり、当時で言う不良少女のようだった。

純日本人であるにもかかわらず、もともと茶色い髪の毛、クセッ毛でパーマと間違われる髪型、強そうと勘違いされる高い背。

それにもめげずに「遊んでそー」という噂を潜り抜けたとき、彼女は、鉄也に会った。

鉄也も当然彼女は、遊んでいそうな女として映った。

ナンパすれば3日もせずに落とせるだろうと踏んでいたのだが、彼氏に振られ、一途に彼を想い続けていた幸が3日で落ちるはずもなく、二人は友達として3ヶ月以上そのまま発展を見せなかった。

最初の出会い。

お互いの印象は、軽そうな男と、軽そうな女。



やがて二人は結婚し、それなりに幸せな生活を送っていた。

だが、ある日、幸が家に帰ると、電気も水も止まって出てこなかった。

わけが分からずに鉄也に尋ねると、鉄也の机の引き出しから請求書の束が出てきた。

今まで払われていると思っていた水道代と電気代は、全く払われていなかった。

慌てて払われていなかった分のお金を払い、いつも道理の生活に・・・戻れるはずもなかった。

見たこともない、知りもしない男たちが家を見張り、車を見張り、毎日家のドアを叩いた。

借金取りから逃れる生活が、始まったばかりだったのだ。

郵便物はもっぱら請求書。

鉄也は、ブラックリストにまで乗り、一日しか知り合っていない人の車の保証人になり、その人に逃げられ、まんまと50万程の借金をかぶされた。

さらには飲酒運転で、事故を起こし、怪我人もいないような、軽い事故だったが、刑務所に2日ほど放り込まれた。

二日で済んだのは幸が涙ながらに必死になったからだろう・・・色々と。

やがて二人の間に一子が誕生すると、今まで生活していた場所からマンションへと引っ越した。

6階で、日当たりもわりといい部屋だった。

娘がだんだん二足歩行ができるようになると、よくエレベーターに指を挟ませ、泣き付いた。

鉄也の借金も昔ほどひどいものはなくなり、借金取りに追われる日々もなくなっていた。

娘はすくすく育ち、小学校二年生になったとき、家の掃除をしていた幸は、パタリ、と洗濯機から鉄也の手帳が落ち、そこに鉄也と仲よさげに肩を抱き合って笑っている、知らない女が映っていた。

しかも、その写真一枚だけではない。

一通り、全部の写真に仲良くその女と鉄也が移っていたのである。

しかも、鉄也のつくってくる借金は、幸が地道に返していた。

幸は離婚を決意すると、鉄也と口論になった。

そんな姿を娘の(さき)は見ていた。

咲には幼すぎて、なぜ二人が口論しているのか、なぜ幸が泣いているのかわからなかった。

だが、子供ながらに不穏な空気を察知していたのだろう。

ドアの隙間から覗きにいっては、幸に怒られ、泣いて眠る、そんな生活が続いた後、幸は家を飛び出し、しばらく母親の家に住むことになった。

咲にはわけが分からずに「パパは?」と尋ねたが、幸は、「パパは来ないよ。」といい、祖母は怒るばかり。

鉄也は以前、いきなり祖母の家から怒って出ていった事があった。

おおよそそんなものだろうと考えた咲は、それ以上聞くこともなかった。

咲が、離婚の意味を知るのは、後一年後の事である。離婚し、母子寮に入り、鉄也と再会したとき、咲は、離婚の理由を知らなかったが、鉄也に「結構しないでね。」と言っていた。

鉄也もそれにうなずいた。

今思うと、忘れて欲しくなかったのだろう。

幸の存在と、自分の存在を。

その時の空模様は、今でも覚えている。

明るいライトグレーの曇り空だった。

まるで心境を表すようだった。

鉄也と咲の間で続いていた交換日記は、鉄也の方から連絡が途切れ、荷物が送られてきた。

それは、咲の時計や、ぬいぐるみなどだった。

なぜ送られてきたのか、咲には理解できなかった。

ただ、幼い頭で、“無いと不便かと思って、送ってくれたのかな?”と思考をめぐらせていた。

一年後、咲が小四になったとき、鉄也からの保護手当てが打ち切られた。

咲は、鉄也のケータイにたまたま連絡を入れたが、電話に出たのは知らない男の人だった。

咲が小五になると、引っ越しをした。

小六に虐めにあった。

咲が中一になり、冬に幸がこたつの中で動けなくなった。

腰痛・・・ヘルニアの発症で一ヶ月近く入院した。

たぶん、相当無茶をしたのだろう。

中学校二年生になって、また引っ越しをした。

学校が変わり、中三、転校生だと虐められた。

幸は、仕事があわずに体調を崩した。

高校一年生になり、ようやく安定してきた生活かと思いきや、幸の彼氏が家に上がり込んできた。

咲にとっては、基本的にどうでもよかったので、放っていた。

幸の体調も回復していて、ヘルニアの再発を気をつける以外は元気に動き回っていた。

が、ある日彼氏のケータイにメールが来て、冗談半分で開くと、どう考えても彼女からとしか受けとりようのないメールが来ていた。

メールアドレスは、どれもむき出しで、名前はなかったが、どれも彼女としか思えないようなメールが多かった。

彼氏は一応土木建築業の社長で、借金を返すまで妻とは別れられないと言っていたが、このメールからすると、20代後半~50代までより取り見取り。

彼女と思われる女の数は推定20人。

中には自分の浴衣姿をメールに添付しているものまでそんざいしていた。

すべてのメールを証拠として写真に残すと、彼氏の荷物を全て外へ出した。

やがて荷物を持っていかないので車に詰め込み、着信拒否をした。

着信拒否した後、咲が迷惑な目にあっていた。

ひょっこり窓から顔出し、彼氏はしつこく「咲に迷惑かけた!謝って!って言われたんだけどさ、俺、咲に何かした?」と聞いてくるではないか。

「知らない。どうでもいいよ、自分達の問題でしょ。自分でなんとかしてよ。」

「なぁ、迷惑かけた?」

「知らない。」

「迷惑、かけた?」

「別に。」

「だよなぁ、なのに謝って!って言われても。」

「もういいから、おやすみ。」

そんな調子でグダグダと続き、追い出すことに成功すると、次から続いたのはまるでストーカーのような行為だ。

咲に取り入ろうとマンガを家に置き、幸がそれを捨て、咲にメールが届く。

咲は、どうでもいいと思っていたが、ついにイラッとして、“幸ちゃん、(彼は幸の事を幸ちゃんと呼んでいた。)着信拒否したい。”と来たので、“あっそう。だから?だいたい、日本語おかしい。着信拒否したい?どうぞ勝手にすれば!?”と送ったにも関わらず、まだメールが来るので、この際、きっぱりと“自分達の問題でしょ。そこに他者を介入しないでよ。私を通じて何かしようとしないで、面倒くさいし、私には関係ないから。”と送り、後のメールは無視した。

無視しても来るメールに、ついには着信拒否をした。

すると、今度はパソコンからと思われるメールが届き、それも着信拒否すると、今度は家の電話に電話が来たので、幸が着信拒否設定をなんとか調べあげて、着信拒否すると、まだ届られるマンガに、ついには警察へ行った。

警察へ行ってからしばらく安静な日々だったが、道路で警察に注意されたはずの元彼氏が「幸。」と呼んだのである。

注意の中には、呼ぶことも禁止。と言うのが会ったはずだと幸は警察へ乗り出した。

ここまでくると、立派なストーカー行為だった。

警察は、「明日から家の周辺を巡回しますね。」と答え、ようやくこの件は一段落した。

咲が高校二年生になったとき、幸はヘルニアが再発しかけた。

それ以外は、たぶん、ここで一段落したのだろう。

今は一応安静に暮らしている。

そして、これから先、もう何もないと信じたい。

ただ、平凡に生活が送れると、そう、信じたい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] タイトルに忠実に物語が展開されていた所が、おぉ・・・って思いました♪ [気になる点] タイトルに作品自体が引っ張られてしまって、少し魅力が足りなかった気がします;; [一言] お久しぶり…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ