あの日、生まれたのは
―これは、ある一人の青年の醜くも美しい復讐劇である―
「早く起きろよー!」朝6時半、朝食を作りながら俺―神楽優哉は家族を呼ぶ。
「おはよー…」悠は眠い目をこすりながら起きてくる。「いい匂いがする!」朝から元気いっぱいの春樹はさっそうと席に着く。
「先に顔洗ってきなー」
「えー…」渋々洗面台へ向かう2人とすれ違いざまに一家の主がやってくる。
「おっ、美味そうだな」
「父さん、いい加減もう少し早く起きられないの?」
「いやー、すまん!どうも朝は苦手でな…」
まったく、情けない父親である。父―大輔は料亭を営んでいる。腕が良く、店も繁盛しているようだが、私生活はこのざまである。
「いつもすまんな、俺ももう少し早起きできるように頑張るわ!」
「何回目?それ」
「うっ…善処します…」
「まあいいや、ちゃちゃっと食べちゃって」
「うす!いただきやす!」
基本的に家事全般は俺の仕事。母さんは春樹が生まれてすぐに亡くなった。だから俺が家のことは担当している。
「おーい、早くしなよー、置いてくぞー!」
「ちょっと待ってー」
朝の支度を終えた後は下2人を小学校まで送る。悠は小学6年生、春樹は小学1年生だからそろそろ悠には春樹を連れて行ってもらいたいが、臆病な悠は2人は怖いと嫌がって必ず俺に連れて行ってほしいらしい。
2人を送り届けた後は俺も中学生なので学校に行く。2人を送り届けた後なのでいつも遅刻ギリギリだ。
「おはよう、危なかったな(笑)」
「うるせー」
大概、友達にからかわれる。こっちはお前とは違って忙しいんだよ。
学校を終えた後は悠と春樹を迎えに行き、その後家の手伝いをする。料亭に来るお客さんの注文を聞いたり、料理を運んだりする。料理は父さんの仕事だ。父さん曰く、お前はまだだと言って料理をさせてくれない。腕には自信あるんだけどな。
店を閉めた後晩御飯の支度をし、各々部屋に戻って寝る。
忙しいけど幸せな毎日だった。
あの日が来るまでは―
その日は休日で店も定休日だったので、俺は入院中の爺ちゃんにお見舞いに行った。
「爺ちゃん、元気?」
「おう、優哉か!久しぶりじゃの〜。わしは元気じゃぞ!そっちこそ、元気しておったか?」
「うん、父さんも悠も春樹もみんな元気だよ」
「ならよかった、ここのところ、風邪が流行っとるからの〜」
婆ちゃんが3年前に亡くなってからというもの、爺ちゃんに以前のような元気さが少しなくなっている。
「爺ちゃん、長生きしてよね」
「ほっほっ、まだまだ死ぬ気はせんぞ?」
そんな感じで見舞いをすませたので、帰りにスーパーにより、悠と春樹の好きなプリンを買って帰ろうとした。
「暗くなってきちゃった、早く帰らないと」
急ぎ足で帰っていると、空中に何かがいるのを見た。
「誰―」
その時、空が血のように赤くなり、俺の記憶はそこでとぎれた。
目が覚めると、病院のベットの上にいた。痛い、体が思うように動かない。どうなっているんだ…。父さんたちは無事なのか…。俺の頭の中は大量の情報が一気に押し寄せて混乱した。
「あっ!大丈夫ですか!?先生!目、覚めましたよ!」看護師さんかな、随分慌ててるな。
「目覚めたかい?君、自分のことは分かるかい?」
「はい、神楽優哉です…」
「良かった、君だけでも助かって良かったよ…」
ん?君〝だけ〟でも?
「あの…俺の家族は…どうなって…」
「…落ち着いて聞いてね…君の町に妖怪が襲撃に来たんだ…それで町の人のほとんどが…君が唯一の生き残りだよ…」
言葉が出ない。頭が理解を拒む。妖怪?なんだそれ、きいたことねぇぞ。夢だ、そうだこれは夢なんだ。自分にそう言い聞かせる。そうするしか自分を保てない。動かないはずの体が動く。医者の制止も振りほどいて大雨の中、自身の体を雨に打ちつける。
―無力
自分はひたすら無力なんだ、なんにもできない役立たずの人間なんだと、自分の無力感に押し潰される。
―家族を、お願いね?
母さんと最後に約束したこと、家族を守る。俺は母さんとの約束を必ず守り抜くと誓った
誓ったはずなのに―
母さんとの約束を守れず、自身の無力感に潰される俺は、ただ泣き叫ぶだけだった。その叫び声すら、雨の音にかき消されていく。その時、俺の手には炎が揺れていた。
「なに?…これ…」
驚いていると、炎が消える。気付けば後ろに誰かいた。
「こんなところで火なんか出してると風邪ひくぞ?」
スーツを身にまとった大柄の男性が声をかけてくる。
「誰―?」
その出会いが、醜き復讐者―神楽優哉を誕生させたのであった―
はじめまして!美崎です!
拙い部分もあるかもしれませんがどうぞよろしくお願いします!




