微笑むのは 中
図書館を探したが一向に見当たらない。本館にもないし別館にもない。新たに見つけたものとしては別館の裏にシアターがあるぐらい。
ひたすら探しているとルジェが見えた。今日は寄っていない見たい。
「ルジェ?図書館ってどこにある?」
「...?えぇやえいね。占星の高楼、五階にあるわよ」
「大丈夫?なんか体調悪そう...」
「違うの。今夜のイベントの準備の考え事をしていたの』
「ごめんね。話かけちゃって」
「大丈夫よ。また何かあったら言ってね」
彼女はそう言うとまた考え事をしながら独り言を漏らし歩いていった。独り言には何故を「あれを。」という声が聞こえてきて気になるが根掘り葉掘りするのは良くない。
占星の高楼、高楼というよりかは寮であり塔のようなものだった。本館は色々な高楼が繋がっており深淵の高楼、占星の高楼など魔法の数だけ寮があるようだ。
占星の高楼は宇宙をテーマにしているだけあってか星空や宇宙の模型が飾られている。一階は入口。二階から四階までは寮。五階は図書館。六階は会議室に七階は時計台と書いてあった。
私はマップを見たあと五階まで階段で上がる。階段にも色々な宇宙の絵などが飾られており、中にはあのキャスコ(宇宙猫)の絵まであった。あの子可愛いもんね。
図書館につくと目を開かせるほど私を釘付けにした。天井には本物の星空のような輝きがあり、またそこから色んな星の模型が吊るされ、何層にもなった本棚が顔を覗かせていた。
色とりどりの本を照らす星空は眩しすぎず、暗すぎずで丁度良い照明となり、所々にあるランプと机は勉強するならここが宇宙一だと感じる。
私はやる気と好奇心に満ちて本を漁り、気になったものから手に取る。私はタイトルは本の顔だと考え、そして中身は性格や人生だと思っているからか、タイトルに惹かれるものをとってしまうのだ。
ざっと読んでみたが、読むだけでは魔法について知れそうにない。私は本の整理をしているおじいさんを見つけ、ノートとペンが欲しい旨を伝える。おじいさんは快く私にペンとノートを貸してくれた。
とても書き心地の良いペンは握りやすさ、重さが私にぴったりとしてくる。ノートの紙は少し茶色がかっていた。
どうやら魔法は数学のようで、国語のようでもある。公式を使いながら筆者の心情を読むようで難しい。それに適正な魔法が何かは幼い頃に判別する儀式があるらしい。私にもそれをしてくれないかメリッサに後で聞いてみよう。
この世界の歴史についても少しだけ見てみたが、やはり争いは起こっているらしい。人を喰い、土地を破壊するインベーダーに人間同士の争い。インベーダーの資料図鑑を見て見たが、とても生き物じゃない。悪夢にでてくる怪物そのものだ。私としえんを襲ったあの怪物もインベーダーだった。
本を読んでいると先程のおじいさんが声をかけてきた。
「もうそろそろ行かなくていいのかい?」
「...あっ!イベントが!」
おじいさんに感謝を告げ、急いで図書館に出る。階段を降りていると少し下にメリッサが見えた。
「メリッサ!」
「急ぎなさい。始まるわ」
私はメリッサと共にあの大広場へと夜の中向かっていた。
大広場にはかなりの人がいる。メガホンを使っていないのに大きな声が聞こえるアナウンス。これも魔法?
アナウンスによると集まっているのは一年生、要は新入生用のイベントらしい。オリエンテーションのようなものかな?
人々の頭の波の中に角が見えた。あれは紫煙に違いない。私は声をかけようとすると可能ではなかった。角生えてる人は以外と周りにいる。
紫煙探しは難航しそうだと思ったが案外そうでもなかった。喧嘩する声が聞こえてきたから。
「おすなや!!!」
「おはよ」
「やかましいわ!てか夜やし!」
私は周りから離れ後ろの方へと向かう。後ろの方がアナウンスの声は少し聞き取りづらくなったが見やすさは格段と違う。
どうやら広場の真ん中には中規模の城?要塞のようなものが立っており、メリッサもそこにいた。何が始まるんだろうか。
アナウンスは突如として開幕の合図を告げる。
「これより新入生の皆様にはふたつのグループに別れてもらいます。貴方の上に赤色、または青色の紙が来ますのでその色ごとに右と左に別れてください。赤は右手に。青は左手に」
紙が空から落ちてくる。私は赤だ。
「しえんは何色?」
「青やった。やえいは?」
私は赤色の紙を見せる。
「別々かー...」
「じゃあ私は右の方にいくね」
「またな。部屋で。」
どうやらしっかりと半分の数で右と左で別れているようだ。パッと見だけど。
「では今日を合わせ、三日間。皆様には知能だけである物を守り、取り合っていただきます。赤は全力で奪い取り、青は全力で護ってください。」
ざわめきが増している。
「魔法は禁止でございます。ルールは簡単。赤陣営はこの『キテイネス=ロイスの草稿』を取り、青陣営は三日間誰にも取られないように」
ざわめきは最高潮に達している。魔法を禁止にされたことか、それとも草稿がよほど凄いものなのか。
「もし魔法を使っているところをこのフクロウに見られた場合、退学でございます」
どうやら本気で知識で争って欲しいらしい。これも選別か。
「青陣営の皆様は守ることになります。もし守り切り、誰の手にも渡っていないのなら皆様には賞金を。終了時刻に誰か一人の手に渡り、守っていたならその人にはエージェント・ジェネシス入団テスト資格をその人にだけ」
いきなり静まる。どうやらみんなが狙っているのは賞金ではなく、何とかの入団テストのようだ。
「赤陣営の皆様は奪い取ることになります。もし終了時刻まで奪い取り、本館一階の生徒指導室にまで運んでもらいます。運んだ生徒は皆と賞金を得るか、エージェント・ジェネシスの入団テスト資格を自分だけ貰うか選べることができます」
争いは陣営事だけではない、身内にも敵はいるし、争いは起こる。何故休み期間、ましては学校が始まる前にこんなイベントを開催したのだろうか。
「それでは今日と残り二日間、最後の日の零時まで守り、奪い取ってください。健闘を祈ります。」
その声と同時に時計台の時計は鳴り出した。火蓋は切られ、賽は投げられた。
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