午前二時回り
8万字程度書いてあった処女作を自己紹介がてら上げようと思います。ブックマークが一つでもつけば長々とやっていくつもりです〜。
私は新天地に向けて歩き始めていた。国を跨ぐとなるとつま先から鼻まで全てが違う。
ここロンドンでは日本とは異なる景色が広がっており、通りを歩く人、建物、全てが目新しいものへと変化している。
そう。私は初めての海外としてロンドンへ留学に来ていた。
ロンドンの大きな橋を渡りながら今までの人生を振り返る。私はいたって普通の行き方をしてきていた方だと思うけど案外そうでは無いのかもしれない。中学生の時に科学者だった父と母はいなくなった。事故だそうだ。それを聞いてたときは感情が湧かなかったのはある種の防衛反応なのか、それとも信じれていなかったのか。どちらにせよ事実は変わらなかった。
そこからというもの親戚の家を転々とし、高校生となった今、留学にきていた。
科学者だったからか財産はあり、何不自由ない生活を送れてはいるが、中学生の時から多額の財を持つとなると人を疑うようになってしまったものだ。
とはいえ親戚の人達は私に気遣ってくれたりしていたので恩を素直に貰えなかった節は後悔している。
だが私は今日、このロンドンで新たな人生を始める。そのためにわざわざロンドンを選んだ!というのは嘘になるかもしれない。
実の所、海外であればどこでも良いと思っていた。ただ小学生の頃の僅かな記憶では両親はロンドンによく出張に出かけていた。帰ってくるとお土産やら思い出話を寝る前に聞き、耳が独り立ちするまで隣にいてもらう。そんな幸せな時間を思い出したからこそ、このロンドンを選んだのかもしれない。
これからの生活など物思いにふけていながら歩いていると目の前に目的の地下鉄が見えてきた。天気の良さも相まって地下鉄は何やら騒々しい。不安と好奇心が駆られる感覚は正直嫌いじゃない。
中学生の時は友達もろくにできなかったものだから怖い話などをよく調べて独りで夜を怖がったりしたのも今ではいい思い出。その夜を一緒に過ごせる人がいなかったから残るのは寂しさだけ。
だめだ暗いところに進むにつれて気分が沈んでしまう。明るくいこう。明るく。
地下鉄は日本とあまり変わらなさそうだった。ただ人がすくない。平日の昼間だからかと言ってこんなにもすくないものだろうか。
まぁいいや、とりあえず目的地を目指すだけだ。
日本と同じく黄色線の後ろで待ち、電車を待つ。みんな気配を消してるのか?それとも電車は来ないのかな?なんて人がいないと考えてしまう。
それぐらい駅には私と電光掲示板しかないのだ。
電車が来ないことは無いと確信できたのは電光掲示板に時刻が書かれていて安堵する。流石に電光掲示板も嘘はつかないだろう。多分。
携帯で調べてみると後五分後に来るはず。そう思って天気を確認しながら待っていると電車が来ていた。
あれ?予想以上に早く来ている?ただ行先は一方通行なので乗ってしまえば目的地に辿り着くのは間違いない。もしかしたら時間がズレているのか電車がズレているのか。
どちらにせよ今来ているやつに乗ってしまい早めに着いて時間を費やすのも良い。
電車の扉が開いたと同時に人が降りてこないので乗り込む。中には人が乗っていてみんな下を向いている。
少し不気味だった。
私は少し離れた空いている角の席に腰をかけ、目を閉じる。新天地に来ているから不安に駆られているだけだ。そして何故か目を一瞬閉じただけなのに私は夢へと駆り出されていた。
少し目を閉じていたはずだった。
目を開けると目の前の光景は異なっていた。
古い地下道のような壁にもたれかかっている私を前に小さな灯火とくらい闇は奥まで続いていた。
少し冷たい風が私に現実だと、目を凝らせと言ってくる。初めの風景に以外と戸惑うことなく立ち上がりとにかく前を目指す。
誰もいなさそうな空間に呼びかけても何も返ってこないだろうし、帰ってきても恐怖を伴うだろうから声は出さなかった。暗闇には慣れがあった。
逆に眩しいのは嫌い。暗いのは私がいるとはっきりわかるが明るいと私が擦れてしまうような、寂しい気持ちになってしまうから。
そんなもう一人の私に導かれ歩き続けると何やら大きな石でできた扉が見えてきた。そこにはなにやら古代絵のようなものが掘られている。二人の人間?が何かの間にいる。そして右側では少女が立っている。
見ても分からないがなにやらとても古いことだけはわかる。
扉を開けようと両手に力をこめて押し込む。硬い。固い。固定されているのか確認するために周囲を見る。なにも固定されていない。とにかくずっと推し続けているときしむ音と扉が開いた。
やっと前に進めると思った矢先、前には円形の祭壇のようなものや通路、偶像がたくさんとあった。神聖な場所であることは間違いなさそうで踏み込んでは行けない場所のよう。ただ私以外、当分の間は足を地面につかせていないようだった。引き返そうにも帰り道すらない。いやこちらが帰り道なのかもしれない。
とりあえず左右に偶像がある通路を超えていく。まるで生きているのかのようだった。小さなランプの火は誰を待ち望んでいるのか分からない。来る人を誘うだけだ。例えそれが主人でなくとも。
そうして超えていくと特大サイズの銅像がそこにあった。鎌を構えていて刃先は上を向いている。そして真下には祭壇とワイングラス?のようなものがあった。それを囲うように椅子のようなものが円形に作られてある。どんな物語が昔ここにあったのだろう。
ふと上を向くとその銅像の上には大きな機械仕掛けの時計があった。あれだけここに相応しくないように感じる。私とあの時計、このふたつだけは相応しくない。そんなように感じる。
時計の他に螺旋階段のように上へと続いて降りうっすらと斜め上に扉の様なものが見える。他に扉は後ろにしかない。とりあえず螺旋階段を上り扉を目指す。
階段はホコリまみれで歩きづらかった。だが蜘蛛の巣などはなく整備されているのかされていないのかよく分からない。階段の横には壺などがありとても古いものだとわかる。文字が書いているがなんと書いてあるのか分からない。調べようにも携帯は全くつかず電源が壊れているようだった。携帯の修理代など考えている場合では無いけど頭に少しのこる。残念。
少しこの場所にも慣れ始めた頃、既に結構上ら辺まで来ていた。かなりの高さはある。歩く足音が反響し高さをより強調する。ようやく一番上まで来たかと思うと奥には扉があった。ようやく着いた。長かった。
トビラに向かって歩き始めると右側は銅像の後ろに来ているようだった。銅像でさえかなりの高さがあるのにそれを超えてしまっている。振り返るとかなりの高さを歩いているようだった。銅像の上ら辺を歩いた時だった。なにやら私を呼びかける声が聞こえた。
「やえい。やえい。やえい。やえい。」
やえいは私の名前だ。しかも声はふたつに分かれているようだった。男性と女性。まるで恋人のような響と重なりがある。
もう一度耳を澄ます。
「やえい。やえい。やえい。やえい。」
確かに私の名前を呼んでいる。呼んでいるのは両親のようだった。有り得ない話だ。
ただときに好奇心は不安を飲み込む。
奥深くまで引きづりこむ。
私は声に引きづられ銅像の上にあたる場所へ近づいた。ふと下をみると誰もいない。あるのは銅像と両剣だった。やはりあれは空耳に違いない。疲れている。
心が穏やかでないときはこんなことも有り得る。と自分をなだめて恐怖を和らげようとした。
トビラに進もうと振り返る瞬間、誰かに押され私は
堕ちていく。
私に羽があったなら助かる高さだろう。だが残酷にも羽はなく、黒い髪の毛が翼のように靡いている。
スローモーションに落ちていく感覚だった。
ひたすらおちていく。深淵に吸い込まれていく。
地面に着いたかとおもえばそれは刃先で勢いよくお腹を貫通する。
感覚すらなかった。
ただあるのはお腹への違和感。痛くもない。かゆくもない。ただお腹にあるはずの無いもの。そして周りを染める赤色。本来ならあるはずの無いじめっとした液体。じめっとした液体は私と同じように銅像を伝って下へおちていく。
ぴしょん。ぴしょん。と下で音を立てているのがわかる。目さえ薄れてきた。耳も聞こえなくなってきた。
最後に見えた景色はあの大きな機械仕掛け時計で。
時刻は『午前二時回り』を指していた。
そして私が深淵に浸かったあと。下ではグラスに液体が溜まり、飛び跳ねた液体がその前にある台座を潤し、隙間を進み、影を新たな色へと染め、二つの骸骨を生き返らせることとなった。
お読みいただきありがとうございました!