表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『学園のトップ3美女がバ先で全員俺の部下 ~君たち高嶺の花なんだから、平凡男子に甘えるのはやめましょう』  作者: 波瀾 紡


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

70/75

【★<√M>第69話:好きです好きです大好きです】

 京乃さんは感極まって、今にも泣き出しそうだ。うわ、どうしよう……


 ──守ってあげたい。抱きしめたい。


 そんな気持ちが胸の中に渦巻く。

 だけどさすがに、いきなり抱きしめたらまずいよな。


「ありがとう京乃さん。俺、こんなに好きって言ってもらうなんて生まれて初めてだ。嬉しいよ」


 京乃さんは泣き出しそうなのをぐっとこらえて、俺への想いをさらに語ってくれた。


「いえ。お礼を言うのはこちらの方です」

「お礼? ああ、子供の頃犬から守ったこと? もうだいぶ前だし、気にしなくていいよ」

「それももちろんありますけど、それだけじゃないです。カフェではいつもわたしを気にかけてくれていました。おかげで最初は自信がなかった仕事も、ちゃんとやれるようになりました。そして近くに雄飛さんがいることが、わたしの毎日を明るく照らしてくれました。だからほんとにありがとうなのです」


 ──ああ、なんて愛おしいことを言ってくれるのか。あまりに愛おしくて、抱きしめたい気持ちがさらに高まる。なんならキスしたい。だけど我慢だ。


 それでも京乃さんとの距離を少しでも近づけたくて、一歩前に踏み出した。彼女も同じ気持ちなのか、俺を見つめながら一歩近づく。


 二人の物理的距離が二歩分近づいた。

 お互いの気持ちが通じ合ってる気がして、心が躍る。


 俺はもう一歩、京乃さんに近づいた。同じように彼女も……


「きゃっ……」


 地面の凸凹に躓いて、京乃さんが前につんのめる。両手が宙をつかむように動くが、何もつかむ物はない。


 ──危ない、このままだと倒れてしまう!


 俺はとっさに両手を広げて、さらに一歩前に出た。

 黒髪の美少女が俺の胸に倒れ込んできた。可愛い顔が俺の胸にむぎゅっと押し付けられる。

 彼女が倒れないように、俺は両手を華奢な背中に回して抱きかかえた。

 おかげで彼女は倒れることなく、事なきを得た。


「大丈夫?」

「あ、はい……ありがとうございます」


 なぜか京乃さんは、じっと顔を俺の胸に押し付けたまま答えた。


 ……そこで気づいた。

 俺が背中に手を回して抱きしめてる。だから離れられないんだ。


「あ、ごめん! すぐに離れるよ……って、あれっ?」


 京乃さんから身体を離そうとしたが、なぜか離れられない。

 知らぬ間に京乃さんが腕を俺の背中に回して、がっちりとホールドされている。


「……え? あれっ? 京乃さん?」


 顔が近い。吐息がかかる。

 ドキドキする。嬉しい。マズイ。幸せ。

 色んな感情がごちゃ混ぜになってヤバい。


「雄飛さん」


 顔を近づけたまま、京乃さんが耳元で囁く。

 間近で見る彼女の顔は、感極まった切なそうな表情をしている。


「わたし、あなたが好きです。好きです。好きです。好きです。大好きです」

「あ、ありがとう。俺も好きだ」


 周りには誰も人がいない。だから思い切ったことを言える。

 いや俺はもう既に、周りのことなんて気にならなくなっている。

 この感情に歯止めが効かないのが自分でもわかる。ヤバい。ヤバいよ俺。


 さっきまであんなに躊躇してたのに、我慢できなくなって、京乃さんの背中に腕を回してぎゅっと力を込めた。とうとう彼女を抱きしめた。


「あっ……」


 すぐ耳の横で、可愛い彼女の吐息が漏れる。

 切なげで、それでいて幸せそうな声。

 そして……エロい。


「ごめん京乃さん。俺、もう我慢できない」


 彼女の瞳を見つめた。

 俺は「何を」とは言わなかった。

 だけど京乃さんはコクリと頷いた。

 今日はなんだか、俺たちはなんでも通じ合ってるような気がした。


 ──いいんだよな? 俺の勘違いじゃないよな。


 黒髪の美しい少女が、ゆっくりと目を閉じた。

 ああ、大丈夫だ。勘違いなんかじゃない。


 俺は顔をさらに近づける。

 ああ、長いまつ毛が綺麗だな。

 この人が俺の彼女だなんて、なんて幸せなんだ。


 そんな感慨に耽りながら、唇を彼女のピンクのソレに近づけた。


 ──ちゅ。


 初めてのことだし、上手くできたのかどうかはわからない。

 だけど確かに俺の唇は彼女の唇に触れて、そこからとても幸せな気持ちが俺の中に流れ込んできた。

 


 それからしばらく俺たちは、目を閉じて互いに抱き合って、じっとしていた。


「幸せだ」

「わたしもです」


 思わず俺の口から漏れた言葉に京乃さんも反応する。


 この幸せな時間がずっと続くといいのに。

 そんな思いが頭を支配していたが……


 ふと目を開けると、遠くに、数人の人影がこちらに向かって来るのが視界に入った。


「誰か来た」


 俺たちは慌てて身体を離した。


「さ、そろそろ帰りましょうか」

「そ、そうだね。これからあっという間に暗くなるだろうし」

「ですね。もう夕方ですもんね。夕方というと、それはもう夜の一歩手前ですもんね」

「だよね。夜の一歩手前だよね」


 もう何を言ってんのかわからない。

 あたふたしながら俺たちは、来た道を戻って行った。

 また大芝生広場まで来たあたりで、二人とも少し落ち着いてきた。


 さっきの訳のわからないやり取りを思い出して、すごくおかしくなってきた。

 吹き出しそうになって、横を歩く京乃さんを見た。


「くすくす」


 同じことを考えていたのか、彼女も笑いを堪え切れずに笑い出した。


「あははは」


 安心して俺も声を出して笑う。

 ああ、おかしい。


「うふふふ」


 二人して顔を見合わせて笑う。

 ここでも心が通じ合ってる感覚がする。嬉しい。楽しい。


 やがて俺たちは公園を出て、駅から電車に乗った。

 一駅目で、俺が先に電車を降りる。京乃さんはもう一駅向こうだ。


「じゃあまた明日。よろしく」

「はい、よろしくお願いします」


 名残惜しいけど、また明日はバイトで会える。

 手を振って、彼女が乗った電車を見送った。


 こうして俺の人生初のデートは閉幕を迎えた。

 今日のデートはホントに楽しかった。


 公園を歩いて、カフェに入って、二人でおしゃべりした。

 ただそれだけだと言ってしまえば、それだけのことだ。しかもたった半日の出来事。


 だけど、それでも、今まで生きてきた中で、最も幸せな時間だったと言っても過言じゃない。


 しかもまあ言うなれば、大人の階段を一歩昇った……的な?

 あ、いや。今の恥ずい発言は無しでお願いします。


 そして……また明日も京乃さんと会える嬉しさと、浜風さんと顔を合わせる気まずさと。

 複雑な気持ちに挟まれて、人生最良の日を終えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
なんならこの√でのフラれた鈴々もちょっとみてみたいというドS心
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ