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『学園のトップ3美女がバ先で全員俺の部下 ~君たち高嶺の花なんだから、平凡男子に甘えるのはやめましょう』  作者: 波瀾 紡


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【第57話:衝撃の事実が判明した】

***


 翌日、金曜日のお昼休みのことだった。

 雅がトイレの個室に入っていると、突然ワイワイと賑やかな声が聞こえてきた。誰かがトイレに入ってきたらしい。


「それにしても美香みかがあの人を好きだなんて、意外だなぁ」

「そっかな」

「でも彼、優しそうでいいじゃん」


 この声は同じクラスの女子二人、田中美香さんとその友達の女子。


 田中さんって好きな男子がいるのですね。いったいどんな人なんでしょうか?

 ああ、ここにも恋する乙女がいたかと、親近感が湧く雅。


「で、美香は彼にこくるって言ってたよね。いつするつもり?」

「来週の月曜日」

「3日後か」

「うん。占いでね。その日が超ラッキーデーだって言うから」

「なるほど、それ大事!」


 すごいなと素直に雅は思う。

 自分ならそんなに気軽に告白なんてできない。

 いや。そんな勇気が出るなら、どれだけ楽だろう。


「頑張れ美香。成功を祈る!」

「うん、ありがと」

「秋月くん、オーケーしてくれるといいね」


 ──え? 相手の名前は秋月くん?


 この学校に他に秋月くんはいない。

 まさか田中さんが告白する相手が雄飛だとは。


 学外の人だという可能性はゼロではないが、話の流れからして相手はほぼ雄飛で間違いない。


 二人はきゃいきゃい言いながらトイレから出て行って、徐々に声が遠ざかる。

 雅は呆然としていたが、ハッと我に返った。


「そうだ。りんちゃんにも教えないと」


 雅は慌ててトイレから出て、教室に戻ると鈴々の手首を握った。


「りりり、りんちゃん。ちょ、ちょっといいですか?」

「ん? 焦ってどうしたの?」

「いいからちょっと来てください。お話したいことがあるんです」


 いつも冷静な雅が学校内でこんな姿を見せるのは初めてだ。

 鈴々は息を飲んで、こくりとうなずいた。


***


 雅と鈴々は校舎の裏庭に移動した。

 お昼休みの裏庭はまばらに生徒がいるが、小声であれば問題なく内緒話ができる。


「ねえみやちゃん。かな~り重大なお話のようだね」

「はい一大事です」

「いちだいじ……って、一体なにがあったん?」

「雄飛さんのことを好きな女子が、他にもいることが判明しました」

「ええっ? マジ? 誰?」


 あまりの驚きに、鈴々の口はぽかんと開いたままになっている。


「同じクラスの田中美香さんです」

「ああ、あの可愛い子か!」

「はい。田中さんと友達が、恋バナしているのを偶然聞く機会がありまして。そこではっきりと、相手は”秋月くんだ”って言うのを聞きました」

「うわ……大変だ大変だ」


 雅は一度深呼吸をしてから、話を続ける。


「しかもそれだけじゃなくて、とっても重大なことをお伝えしなくちゃなりません」

「……な、なに? ビビらせないでよ……」


 あまりに真剣な表情の雅に、鈴々はごくりと唾を飲み込んだ。


「田中さんは、来週の月曜日、雄飛さんに告白するそうです」

「……え? えええっ? ええええええええええええっっっ! 嘘でしょっっっ!?」


 驚愕の事実に、鈴々が素っ頓狂な声を上げた。

 さすがにこれだけの大声だと、離れたところに何人かいた他の生徒も驚いて二人を見た。


「りんちゃん、声が大きすぎます」

「あ、ごめん。……その話、マジなの?」

「はい、マジです」


 ──ということは。


「もし雄飛君がオーケーしちゃったら、田中ちゃんと雄飛君が恋人同士になっちゃうってことだよっ!!」

「そう……ですね」

「どどどどど、どーしよっ? ね、みやちゃん! あたしたち、いったいどーしたらいいのっ!?」

「わ……わたしにもわかりません」


 鈴々も雅も、あまりに予想外の展開にどうしたらいいのかまったくわからない。

 ただただ動揺するばかりである。


「でもさ、みやちゃん。よく考えたら、雄飛くんって知らない女の子から告られても、断わるような気がしない?」

「それは……確かにそうですね。そんな気がします」

「だよね。じゃあ、田中ちゃんが告白しても、とりあえずは大丈夫ってことだよね」

「そう……であればいいのですけど」

「うん、きっとそうだよ。きっと大丈夫。雄飛くんを信じよう。だから特に何もしなくても大丈夫ってことで」


 まるで自分に言い聞かせるかのように力説する鈴々。


「そうですね。わかりました」


 その時、昼休み終わりの予冷が鳴った。そろそろ教室に戻らないといけない。

 二人とも動揺する心をなんとか抑えて、教室に向かった。


***


 雅と鈴々が教室まで戻ると、珍しい光景が目に入った。

 教室前の廊下で、雄飛が同じクラスの他の男子と立ち話をしていた。


 変に彼をガン見するのも不自然だ。

 彼女たちはそう思って、何気なく雄飛の横を通り過ぎて教室に入ろうとした。


「なあ秋月。やっぱ彼女は作った方がいいぞぉ。やっぱ楽しい」

「そうか?」

「ああ、そうだ。それになにごとも経験が大事だ。俺はそう思う」


 どうやら相手男子に彼女ができたらしくて、『恋愛のススメ』的な話をしているようだ。


「そうは言っても、そんな簡単にできるはずないだろ」

「そうかも知れないけどさ。だからこそ一つ言っとくわ」

「なんだよ?」

「チャンスがあれば絶対に逃すな。選り好みするよりも、まずは彼女を作れ」

「はいはい。まあ……参考にさせてもらうわ」

「よし。いいな秋月。チャンスは逃すなよ」

「わかったって」


 そんな会話を耳にして、二人とも心中は穏やかではない。


 チャンスを逃すななんて、なんというはた迷惑なアドバイスをするのか。

 雄飛が田中美香の告白を承諾する可能性が高くなってしまうではないか。


 雅も鈴々も、青ざめた表情のまま、自分の席についた。


 しかし午後の授業は、二人ともまったく頭に入らなかった。

 今後の対策について話をしたくて、とにかく授業が早く終わることを祈る二人であった。

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