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『学園のトップ3美女がバ先で全員俺の部下 ~君たち高嶺の花なんだから、平凡男子に甘えるのはやめましょう』  作者: 波瀾 紡


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【第55話:とうとう言っちゃった】

「あたしは雄飛ゆうひくんと一緒にいると楽しい」

「彼に褒めて欲しいとか、彼によく思われたいとか、彼ともっと仲良くなりたいとか、どんどん欲が膨らんでくる。」

「彼と一緒にいると楽しい反面、彼と離れてると胸が苦しくなることも多い。この感情の持って行き場がわからずにモヤモヤすることもある」


 鈴々は雅に向かって、一気に気持ちを吐露した。そして最後に付け加えた。


「ねえ、みやちゃん。この気持ちはやっぱり恋なのかな? 恋をしたことがないから、やっぱわかんないや」


 鈴々が真顔で首を傾げる。

 この可愛いハーフ美少女は、どうやら本気で自分の感情がわかっていないようだ。


 ──いやもうそれは、恋以外の何ものでもないでしょっ!!


 心の中で鋭くツッコむ雅。

 でも言葉はマイルドに。


「そう……かもですね」

「やっぱそうか……」


 ああ、やはり鈴々も彼を好きだった。完全に恋のライバルだ。

 だけど不思議と嫌な気分ではない。


 雄飛さんの良さをわかる女子が、ここにもいましたか──

 同じ推しだとわかった時の共感みたいな気持ちが先に湧いてくる。


 それにいつも明るくて屈託のない鈴々のキャラは憎めない。

 いつも自分に優しくしてくれる彼女を恨む気持ちはなれない。


 つまりは雅は、思ったほど嫉妬も苦い気持ちも、どす黒い感情も湧いてこないことに気づいてホッとした。


「じゃあこの気持ちを、雄飛君に伝えようかな。みやちゃんどう思う?」


 ──雅はドキリと心臓が跳ねた。


 さすがにそれは困る。

 鈴々が雄飛を好きなこと自体は嫌な気分ではない。けれど告白して万が一彼と付き合ってしまったら、自分は失恋が確定してしまう。それはやっぱり嫌だ。


 長年温めてきた彼への恋心を諦めるわけにはいかない。


「わたしのことも聞いてもらっていいですか?」

「なに?」

「実はわたしも雄飛さんのことが好きです」


 それはもう、反射的に口から言葉がするりと出た。

 深く考える間もなく、とうとう鈴々に心の内を明かしてしまった。


「え? みやちゃんは、中学の頃からずっと好きな人がいるんだよね。その人よりも雄飛くんを好きになっちゃったってこと?」


 ただでさえ大きな目をさらに大きくしている鈴々。


「いえ。中学からずっと好きだった人……それが雄飛さんなのです」

「え? えええ? えええええええっっっ!!?? マジっ!?」

「はい。こんなことで冗談は言いません。いたってマジです」

「うっそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおっ!!!!」


 両手でほっぺをはさんで、人生で一番驚きましたと言わんばかりの驚愕を顔に浮かべる鈴々であった。


「ど……どうしたらいいんだろ、あたしたち?」

「そうですね……どうしたらいいんでしょうか。わたしにも到底わかりません」


 彼に対する気持ちを明かして、それからどうしようとか。

 慎重派の雅にしては珍しく、深く考える間もなく言っちゃったのである。

 それほどまでに焦っていたということだろう。


「ああっ、あたしにも全然わかんないよっ……」


 鈴々も、本当にどうしたらいいかわからずに頭を抱える。

 しばらく二人で悩んでいたが、結局いい案は思い浮かばなかった。


 間もなく電車は最寄り駅に着いた。

 改札を出た二人は、家に向かって歩きながら話を続けた。


「ところでりんちゃんは、雄飛さんのどういうところを好きになったのですか?」

「え? それ言わなきゃダメ?」

「いえ、言いたくないなら別に言わなくてもいいですけど。どうなのかなってふと気になっただけです」

「いいや、言いたい。言わせて!」


 ──言いたいんかいっ!


 心の中で鋭くツッコむ雅。

 でも言葉はマイルドに。


「なるほど、言いたいんですね」

「うん。だってさ、彼のことを好きな雅相手に話したいもん。雄飛くんのすごくいいところ!」

「はい。わかります。言いたいことわかります。わたしも共感します。好きな人の素敵なところを、わかってくれる誰かに話したいですもんね」

「そうそう!!」


 さすがわかってる、とばかりに満面の笑みを浮かべるハーフ美少女。


「まずさ、とにかく何に対しても一生懸命なところだね。すごく真面目に夢の実現に取り組んでる人って、カッコいいなって気づいたよ」

「わかります」

「わかってくれる?」

「はい、もちろん」

「それからさ。人のために身体を張ってでも助けようとしてくれるところかな」


 バイトの最中、雄飛には何度も助けられた。

 鈴々はそんな思い出を頭に浮かべる。


「それ、かなりカッコいいですね」

「うんうん。みやちゃんもそう思う?」

「はい。実はわたしが彼を好きになったのは、わたしのために身体を張って助けてくれたことがきっかけなのです」

「へぇ、そうなんだ!」

「はい。あれは小学6年生の頃でした──」


 雅が昔、犬に襲われたところを雄飛が文字通り体当たりして助けてくれたこと。

 さらにそのせいで潰れてしまったケーキの代わりに、実家のケーキを振る舞ってくれたこと。


 それがきっかけで雅にとって雄飛はヒーローとなり、それからの日々が彼への気持ちを恋心に育てていったこと。


 そんな想い出話を鈴々にした。


「そんなことがあったんだ!」

「はい」

「あのお人好しは、筋金入りなんだねぇ」

「うふふ……そう言えばそうですね」

「あはは、雄飛君って、マジいいヤツだね」

「そうですね」


 同じ推し同士の仲良し友達みたいな会話を繰り返す二人。

 相手に対する嫉妬よりも、共感の方が完全に上回っている。


 こういう会話は楽しい。マジで楽しい。

 だけど……二人が同じ人を好きになってしまったことに対して、いったいどうしたらいいかということには結局結論は出ないまま。


 やがて二人が別れる地点まで帰ってきた。


「やはりしばらくは、わたしもりんちゃんも彼に告白なんてしないで、今までどおりにするのが一番じゃないでしょうか」

「だよね。あたしもそう思うよ」


 お互いに、告白してフラれた時のことを考えたら、安易には告白なんてできない。

 仮に自分の恋が成就したとしても、親友を失恋の悲しみに突き落とすことになるから嫌だ。


 学校でもバイト先のカフェでも。

 今は彼と過ごす時間があることが、この上なく楽しくて幸せなのだ。

 だったら無理して今の状態をぶち壊すこともない。

 今までどおりにしようと思うのは、少女二人にとって極めて自然な答えだ。


「じゃあ、とりあえずは今までどおりということで。いいかな、みやちゃん?」

「はい。わたしはそれで構いませんよ」

「じゃあ、そうしよう」


 二人はがっちりと握手を交わして別れた。


 ──今まで通りの楽しくて平和な日々を守るために、やっぱりそれが一番ですよね。


 鈴々と別れたあと、自分に言い聞かせるように独り言を繰り返す雅であった。

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